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経  営

アフターコロナ

税務管理第11部 部長 平野

 新型コロナウイルスの猛威は世界中でいまだ収まらず、終息の兆しも見えません。リーマンショックが金融市場の停滞をきっかけに需要が冷え込み不況となったのに対して、新型コロナは、外出自粛や飲食店の休業要請など強制的に需要と供給にストップがかけられたことでより多くの地域や産業に影響を及ぼしています。またリーマンショックは経済の底を打ちV字回復を遂げましたが、新型コロナは、テレワークや密の回避など人々の働き方や生活様式が変化したことで回復に時間を要すると思われます。

 新型コロナウイルスによる生活様式等の大きな変化により、これまで当たり前のように行われていた経済活動に制約が加えられ、今までの常識は通用せず、新しい常識の中で行動することが求められています。大企業は当然ながら、中小企業も生き残るためにアフターコロナの世界に対応する準備をしなければならないと思います。

 新型コロナウイルスは、社会生活に大きな変化をもたらしました。周知のように、外出自粛により飲食業や観光業は大きな打撃を受けていますし、インバウンドが減り旅行業界は業績を大きく落としています。企業は時差出勤やテレワークを推進し、その有効性を確認した企業では緊急事態宣言解除後も継続する企業が少なくありません。会議はweb等ITを使ったコミュニケーションが中心となり、今後商談等にも活用されてくるでしょう。もうデジタル化は避けて通れない時代です。

 接触機会を減らす取り組みも進んでいます。顧客と対面する職場では、営業時間の短縮や入場制限を行い、フェイスガードや透明シート等の整備を進めています。レジでも人との接触を避けるためスマホなどのキャッシュレス決済が普及し、ロボット等による無人化、セルフ化も進むのではないでしょうか。飲み屋さんでは「ボッコちゃん」の世界が来るのかもしれません。

 このような変化の中、政府は6月の月例経済報告で、国内景気は「下げ止まりつつある」との認識を示しましたが、日本経済はなお不透明感が強く極めて厳し
い状況にあると思われます。直接の影響を受けている飲食業や観光業だけでなく
例えば自動車業界は、中国からの部品が届かないことに加え新型コロナウイルスの影響で需要が減少しています。製造業も、原料の調達が難しく、自動車や建築関係の需要が減るなど業績を落としています。物流は、デリバリーやECにより宅配便等多忙なところもありますが、テレワークが困難な業種でもあり、人手不足等の問題があります。

 新型コロナウイルスは雇用の形態にも影響を及ぼしていると考えます。コロナウイルスの影響による賃金カットなどで副業が一般化するなど働き方に変化が現れています。また、在宅勤務では上司が個々の仕事ぶりをチェックできません。このような状況では「どれだけ身を粉にして会社に貢献しているか」といったことは評価しにくいものです。結果がすべてとは思いませんが、成果による評価に変わっていくのではないか、「ただひたすら頑張れば報われる」という時代は終わり目標に向かって効率的な業務の進め方が求められる時代となるのではないでしょうか。日本古来の年功序列制度は終わりを迎えるでしょう。

 現在、新型コロナウイルスの終息はいつになるかわかりません。しかし終息後は「ニューノーマル」の時代が必ず訪れると考えられます。その時、企業はこれまでの経営方針や労働環境を一から是正し、柔軟な施策や制度の導入を迫られます。日本企業は、変化やイノベーションに関して寛容でないように思われますが、トップは前例にとらわれない意思決定が必要となるときが来ると思います。企業はコロナ終息後に備えて、最低三か月の資金繰りの準備と既存の経営資源を最大限活用する中長期ビジョンを策定し経営戦略をたてることが必要ではないでしょうか。

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