平成29年 社会保険改正の概要
[健康保険・厚生年金保険]
1.短時間労働者の適用拡大
平成28年10月から社会保険の適用事業所に使用される人で、1週間又は1カ月間の所定労働時間が、同一の事業所に使用される通常の労働者の4分の3未満である短時間労働者に該当し、一定の要件を満たす人は、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の被保険者として取り扱うことになりました。
●「一定の要件を満たす」とは、
(1)1週間の所定労働時間が20時間以上であること。
1ケ月単位で定められている場合=1ケ月の所定労働時間×12ケ月÷52週
(2)賃金の月額が88,000円(年換算106万円)以上であること。
(3)雇用期間が1年以上見込まれること。
(4)学生でないこと。
(5)以下のいずれかに該当すること。
①従業員数が501人以上の会社で働いている。
② 〃 500人以下の会社で働いていて、社会保険に加入することについて、労使で合意がなされている。
平成29年4月から、従業員数が500人以下の会社で働く方も労使の合意(従業員の2分の1以上の同意)がなされれば、会社単位で社会保険に加入できるようになりました。 |
*社会保険に加入しないで済む方法
① 週の勤務時間を20時間以内にする。
② 給料の月額を8万8千円以下にする。
③ 従業員が500人以下で社会保険の加入について労使の合意のない会社に勤める。
2.被扶養者の範囲の変更
平成28年10月から、これまで被保険者と「同一の世帯」であることが要件となっていた被保険者の兄姉について、同居の要件が撤廃されました。
[厚生年金]
1.在職老齢年金の変更
平成29年度の在職老齢年金に関して、60歳台前半(60歳~64歳)の支給停止調整変更額と、60歳台後半(65歳~69歳)と70歳以降の支給停止調整額については、46万円に改定されました。
なお、60歳台前半の支給停止調整開始額(28万円)については変更ありません。
[雇用保険]
1.被保険者の適用拡大
平成29年1月1日より、65歳以上の労働者についても、「高年齢被保険者
として雇用保険の適用の対象となりました。
なお、それ以前の平成28年12月末までは「高年齢継続継続被保険者」となった場合を除き適用対象にはなりません。
ただし、今回の平成29年1月の改正において新たに対象となった方の保険は、
平成32年3月分まで会社負担・本人ともに免除されます。
今回の変更により、従業員のメリットとして「高年齢求職給付金」が、雇用保険の被保険者期間が6か月以上発生すれば、65歳以降の退職時に給付を受け取ることができるようになりました。
――会社は今回の改正によりどのような対応が必要となるかーー
自社において、「入社時に65歳以上であつたため、雇用保険に加入していな
かった人」を確認しておき、平成29年1月1日以降から3か月以内に雇用保険の取得手続きをとることとなります。
それぞれ届出の有無や日付によって手続きが異なっていますので注意して下
さい。
① 平成29年1月1日以降に、新たに65歳以上の方を雇用した場合
⇒雇用した日付で、雇用保険被保険者資格取得届の提出が必要
② 平成28年12月31日の時点で、「入社時の年齢が65歳を超えていた方」を
雇用している場合
⇒「平成29年1月1日付」で雇用保険被保険者取得届の提出(平成29年3月31日が期限)
③ 在籍中のまま65歳を迎え、平成29年1月1日以降も雇用されている場合
⇒届出は不要(入社時に届出をしているため)
** キャリアアップ助成金を活用しましょう **
パートやアルバイトなどの短時間労働者の企業内でのキャリアアップ等を促進するため、厚労省では、短時間労働者等のキャリアアップ に係る取組を実施した企業に対して、「キャリアアップ助成金」を給付しています。
キャリアアップ助成金を活用した支援の内容(平成29年4月から)
(1)賃金の引き上げを行う事業主への支援
① 賃金規定等改定コース
賃金規定等を改定し、労働者の賃金を2%以上増額した場合に助成。
助成額= 1事業所当たりの対象労働者数等に応じて4.75万円(大企業
3.325万円)~360万円(大企業240万円)
② 選択的適用拡大導入時処遇改善コース
積極的に適用拡大を行う500人以下の事業所において、社会保険の適用となる短時間労働者について、賃金を3%以上増額した場合に助成。
助成額= 賃上げ3%以上~:対象労働者1人当たり1.9万円(大企業1.425万円)~12万円(大企業9万円)
(2)労働時間延長を行う事業主への支援
① 短時間労働者労働時間延長コース
短時間労働者の週所定労働時間を5時間以上延長(*)し、社会保険を適用した場合に助成。
助成額= 労働者1日と当たり19万円(大企業は14.25万円)
*平成29年4月以降、上記(1)の①又は②の賃金の引き上げとあわせて
労働者の手取り収入が減少しない取組をした事業主に対しては、1時間以上5時間未満の延長でも助成。
助成額= 対象労働者1人当たり3.8万円(大企業2.85万円)~19.2万円(大企業14.4万円)
(3)その他
これ以外にも各保険で「保険料率の変更」、健康保険で「入院時生活療養標準額の見直し」「介護補償給付の支給額の変更」等、厚生年金保険で「平成29年の年金額の改定」、労災保険で「介護補償給付の支給額の変更」、雇用保険で「再就職手当の引き上げ」等、国民年金で「受給資格期間の短縮」等、後期高齢者医療制度、児童手当金等でも改正がありました。