前のページへ
The Limit
of The Sky No.143 Page 4
次のページへ
税 務
消費税95%ルールの改正とソフト活用
税経管理第10部 部長 山内
前号142及び140でもご紹介致しましたが、平成23年度の改正により、
消費税の95%ルールを適用できる事業者の範囲が縮小されました。
95%ルールとは、事務負担の軽減を目的として、課税売上割合が95%以上
のときには仕入税額は全額控除しても良いという制度です。売上規模に関係
なく、すべての事業者に適用されてきました。
今回の改正で、
・その課税期間の課税売上高が5億円以下の事業者に限定されました。
・平成24年4月1日以降に開始する課税期間から適用されます。
−*−
改正が適用される課税期間からは、たとえ課税売上割合が99%であっても
課税売上が5億円を超えるときは、控除する仕入税額の計算に課税売上割合
を含めた処理が必要となります。また、法人税修正申告等により課税売上割
合に変動があったときにも、その分を含めての修正となりますので影響が大
きいと考えられます。
95%ルールが適用されない仕入税額の計算方式は、個別対応方式と一括比
例配分方式のいずれかを選択適用することになります。(詳しくは140を
ご覧ください。)
個別対応方式は、仕入税額を取引ごとに3種類に区分しなければならず事
務量が増えますが、納税額は低くなるケースが多いです。
一括比例配分方式は、事務量は少ないですが納税額は大きいことが多く、
一度選択しますと2年間は変更できないという制約があります。また、後述
の課税売上割合に準ずる割合の届出ができません。
両方式の試算を行い、有利・不利の検討が必要です。
−*−
個別対応方式と一括比例配分方式との事務量の差は、仕入税額を取引ごと
に「@課税売上にのみ要するものA非課税売上にのみ要するものB共通に要
するもの」の3つに区分・集計する必要があるかどうかの差です。
これを取引単位(仕訳入力単位)で区分を指定しなければなりませんが、
会計ソフトを利用し、自動仕訳を活用することでこの両方式の差はほとんど
なくなります。また、区分が入力された仕訳データは、申告作成時にどちら
の方式にも利用することができます。(区分が入力されていないと、一括比
例配分方式の選択のみとなります。)
会計ソフトにはこの3つの区分を入力できる「税区分」という機能があり
ます。また自動仕訳とは、様々なパターンの仕訳からよく使う仕訳を事前に
登録し、それを呼び出すだけで定型の仕訳を入力欄に貼り付けられる機能で
すが、この自動仕訳中に上記区分を含めた仕訳を登録してしまえば、仕訳入
力時での事務量増加は少なく抑えられます。
例えば、貸アパート共用廊下の電気料を非課税売上にのみ要するもの、事務
所の電気料は課税・非課税共通に要するものとして処理するケースでは、
@ 水道光熱費(税区分:非課税売上のみ要する課税仕入)/普通預金
A 水道光熱費(税区分:共通売上のみ要する課税仕入)/普通預金
と、2つの自動仕訳を設定登録し、仕訳入力時に呼び出す仕訳を選択するこ
とで税区分の入力は省略できます。
−*−
事業の実態には過去数年間変動がなくても単発的に土地の譲渡などがあり、
一時的に課税売上割合が下がることがあります。割合の変化が95%以上の範
囲内であれば影響はありませんでしたが、これからは採用する方式によって
大きな差が出ることがあります。
このような場合に個別対応方式では、届出により税務署長の承認を受けれ
ば、実際の課税売上割合に代えて課税売上割合に準ずる割合を使用しての消
費税計算が認められます。なお、一括比例対応方式にはこの割合変更は認め
られません。
課税売上割合に準ずる割合の適用承認申請書提出による承認は、その承認
を受けた課税期間から適用することができます。皆様の業態に沿った計算方
式等を把握し、単発的な取引が発生するたびの検討が必要です。
前のページへ The Limit of The Sky No.143 Page 4 次のページへ