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税 務

    
平成15年分財産贈与をするにあたって

             税務管理第8部 課長 神原 美代子
 
 平成15年の年末に向かって、大事な親族への贈与をお考えの方も

いらっしゃる事と思います。今年はご承知の通り相続税法等の大幅な

改正がありました。財産贈与もいろいろな方法が選択できることとな

りました。贈与税率も引き下げられ贈与もしやすくなりました。そこ

で、そんな方々の為に改めてチェックポイントを拾い出してみたいと

思います。


T 暦年課税と相続時精算課税


(1)暦年課税

 その年の1月1日から12月31日までの1年間に個人から贈与さ

れた財産(親族以外からの贈与も含む)の価額を合計した金額から基

礎控除額の110万円を控除し、税率を掛けて贈与税額を算出します。

暦年型は従来の贈与税であり、生前贈与された財産は一定の場合(相

続開始前3年以内の贈与加算)を除き、継続反復贈与や現金贈与に適

しています。また、贈与者や受贈者を特定していないため、次世代以

降の孫等に贈与ができます。贈与金額を低めにして連年贈与を行い基

礎控除を多年・複数に使い分けると、相当低い税負担で、財産の移動

ができます。


 基礎控除110万円以内の贈与の場合申告義務は、発生しませんの

で、申告納税は必要ありません。後々の贈与証明のためにも、基礎控

除額を超える程度の贈与申告をし、書面に残しておくのも一つの方法

かと思います。


(2)相続時精算課税制度

 平成15年1月より相続時精算課税制度が導入されました。この制

度では一定の条件に合えば生前贈与財産から2,500万円の控除ができ

ます。この金額を超える場合は、税率20%の贈与税を納税します。相

続発生時には、相続財産に生前贈与財産を贈与時の価額で合算し、相

続税額を計算します。納税はすでに納付した20%分の贈与税額を控

除し、精算する新税制です


 相続時精算課税は65才以上の親から20才以上の推定相続人の子

への贈与に適用されます。父と長男、母と長男というように贈与者が

異なる毎にできるため、贈与税の課税価格が複数になる場合がありま

す。相続時精算課税制度を一度選択すると、その後同じ贈与者からの

贈与については相続時精算課税方式が継続し、暦年課税方式の適用が

受けられません。
 

 相続時精算課税制度を選択する場合、贈与税の申告期限内に「相続

時精算課税選択届出書」を贈与税の申告書に添付して提出する必要が

あります。なお、この制度は、財産の生前贈与ともいえる制度であり、

税負担軽減のみならず次世代への早期承継、公正的確な配分等のメリ

ットがあります。親族間の十分な話し合いにより決定し進めていく事

が望ましいです。


 注意すべき点は、制度上の規定により贈与時の価額で相続時精算が

行われる為、生前贈与財産の選択が重要課題となります。この制度を

利用しようとする場合は担当者に御相談下さい。


U 住宅取得資金の贈与の特例

(1)暦年課税の住宅取得資金等贈与の贈与税額計算の特例


 この特例は平成17年12月31日までの経過措置で残されました。

550万円までの住宅取得資金の贈与は課税されず、1500万円ま

での部分について、5分5乗方式で税額を計算する従来の方式の特例

で3年間選択できます。


 相続時精算課税を適用した場合、この適用はうけられません。また

平成15年1月1日以後の贈与についてこの特例の適用を受けた場合、

贈与の年以後5年間はその贈与者からの贈与について相続時精算課税

制度の選択はできません。


(2)住宅取得資金贈与の相続時精算課税選択の特例

 平成17年12月31日までは、住宅取得等資金贈与の相続時精算

課税選択の特例制度があります。贈与者が65才未満であっても適用さ

れ、受贈者は20才以上の贈与者の推定相続人である子であればよく、

特別控除2500万円に特別枠の1000万円を加算して控除するこ

とができます。


 贈与を受けた翌年の3月15日までにその資金の全部を居住用の住

宅の新築、増改築等の費用に充て、なおかつ、その住宅に居住又は居

住が確実であることが主な要件です。



           暦年課税と相続時精算課税の比較

区分 暦年課税 相続時精算課税
贈与者・受贈者 親族間の他第三者からの贈与も含
65才以上の親から20才以上の子へ
の贈与
選択 不要 必要(父母ごと、兄弟姉妹ごとに選択)
一度選択すれば相続時迄継続適用
課税時期 贈与時(その時点の時価で課税) 同左
控除 基礎控除(毎年)110万円 特別控除(限度額まで複数回使用可)
2500万円 住宅資金の場合3500万円
税率 10%〜50%(6段階) 一律20%
相続時精算 なし 相続時の納税義務者になる場合のみあ



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