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 番組では、自然の条件に合わせ自転車、カヌー、犬ぞり、駱駝等で移動し、そ

の地の人々と話し、遊び、食べ、飲み、感じる氏の姿が、過酷な、時には優しい自

然と共に映し出されます。氏のグレートジャーニーの試みはたいへん詩的ですが、

スポンサー探し等の現実の準備はさぞ煩わしかったろうと思います。氏の旅の映像

は、氏の目線がいつも相手と同じ高さにあるからでしょうか、地球と人間について

新しい見方を提供してくれます。ラマダンの後、道行く人々に分け隔てなく食事に

誘うイスラム教徒の映像を見、「断食後に通る人を食事に誘うために家の外で食事

している。ラマダンによって、富んだ者も貧困の苦しみを理解できる」と言うイス

ラム教徒と関野氏の会話から、今まで思っていたイスラムのイメージはちょっと違

うんじゃないかなと感じたりもしました。

 大学時代に、探検部に入ろうか検討していたときに関野氏の存在を知りました。

結局ヨット部に入部したのでお会いする機会はなかったのですが、それ以来、関野

氏の試みにはずっと興味を持っていました。一橋大学法学部から、他大学の医学部

に変わったときも、未開の地で一番役立つのは、医学であることを切実に感じたか

らであろうと思いました。自分のポエムのために、着々とやるべきことをこなす氏

の姿勢は爽快です。

(グレートジャーニーURL:
http://www.nttdata.co.jp/link/g_journey/index_j.html



 彼ら二人の共通点として、ゴーギャンや植村直己氏とは違って、ディーラー時

代の蓄積や医師という職業から、しっかりした経済基盤の上で転身や冒険をしてい

る点です。また、かの地に行きっぱなしではなく、日本を拠点に目的地へ何度も往

復していることです。上手に休息し、経済的なセイフティーガードもあるわけです。

大人のチャレンジです。今後こういった試みが増える予感がします。

 「武士道とは死ぬことと見つけたり」といった激烈な思想を語ると同時に、「人

の一生まことに僅かなことなり、好いたことをして暮らすべき成り」と説いた山本

定朝の葉隠の言葉が心に響く、彼らの40代の選択です。      2002.4.18



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