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税 務

              伸びる会社の節税戦略 54
      −総務部門の節税 オーナーの節税対策(23)−

                             所長 木村哲三

            
株式公開による節税3


相続税対策としての株式公開

 株式公開の相続税対策に対するメリットは、納税資金について言えます。納税

資金対策上、次の2つの点で、非公開会社より公開会社の方が有利です。



1,株式公開後の譲渡所得に掛かる税金が有利

 公開会社の株式の売却に伴う課税は、一定の条件下で源泉分離課税が来年の3

月までは選択できます。また、公開の日で所有期間が3年を超えるものは、公開後

1年内の譲渡では譲渡益が半分とされます。以下の項でその内容に詳しく触れます。



2,納税時の資金調達のメリット

 @株式の売却がスムーズにできる

   非公開会社の株式の売却は、通常、大変難しい。これに比べて、公開会社

   の株式はスムーズに売却できます。

 A 物納がスムーズにできる

   非公開会社の株式の物納は、通常、大変難しい。これに比べて、公開

   会社の株式は物納が認められています。

 B 延納時の担保提供がスムーズにできる

   非公開会社の株式の延納時の担保提供は、通常、大変難しい。これに

   比べて、公開会社の株式は担保提供が可能です。



個人が株式を譲渡したときの税務

 個人が非公開株式を譲渡したときは、原則として申告分離課税されます。申告

分離課税では、有価証券譲渡益を他の所得から分離し、所得税20%、住民税6%

の税率で確定申告を通じ課税されます。

 これに対し、源泉分離課税は、公開株式等の特定取引について、一定の利益が

あったと見なして源泉徴収を完結させる方式です。ここで、一定の利益とは、株式

は5.25%、転換社債は2.5%です。すなわち、株式の場合は他の所得と分離

して売買価額の1.05%(5.25%×20%)の税率により課税されるわけ

です。株式の譲渡益が大きくなればなるほど、源泉分離課税が有利なことは明らか

です。

 例えば、取得価額が額面500円の株式が、市場で1株1万円だったとします。

この株式を市場で1万株売却したと仮定します。このとき、売却額は1億円、譲渡

益は9500万円です(金利や売却経費はここでは考えない)。申告分離課税によ

る税額は、9500万円×26%で2470万円です。源泉分離課税を選択する

と、1億円×1.05%で税額は105万円となります。申告分離に比べて、源

泉分離課税を選択すると2365万円も税金が少なくなりました。

 但し、平成15年3月31日をもって源泉分離課税制度は廃止され、申告分離制

度一本になる予定です。



株式公開時の税務

 昭和の時代は、株式公開促進のため公開時の株式売却益は原則非課税でした。

創業者利潤の非課税は、資本主義の花でした。しかし、リクルート事件を契機に、

平成元年4月1日以降の譲渡からは、公開時の売却は申告分離方式で課税されるこ

とになりました。

 株式公開後1年以内に行う株式の譲渡課税については、申告分離課税によりま

す。一般公開会社の株式譲渡課税のように、源泉分離課税が選択できません。

ただし、公開日現在で所有期間が3年を超えるものは、特例として譲渡益の半

分だけが課税対象になります。

 公開後1年を超えた日の譲渡や、公開日以後に取得した株式の1年内の譲渡に

ついては、源泉分離課税も選択できます。創業者利得の大きい場合には、源泉分離

課税方式の選択が有利であり、そのためには株式の売却時点の選択がポイントにな

ります。株式の公開は納税資金対策上かなりのメリットがあるといえるでしょう。 

(次回は株式公開の手順です)




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