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 経費は一に船価、ついで人件費と燃料費塩氷費です。これらを如何に効

率を損なわずに抑えるか。

 沖合漁業の中心となる漁法は旋網(まきあみ)漁法です。旋網船団は、

本船(網船)、探索船、運搬船から成り、これを1ヵ統と数えます。船価は

15年ほど前より5割以上上がっています。装備の高度化による価格アップ

と、漁業不振による新造船減少による造船所の減少、少数の漁船製造による

コストアップのためです。今後は技術があって建造費の安い国を調査し、独

自仕様の本船以外の運搬船等を建造する手法も検討が必要です。修繕費の額

も大きいので定期検査を考えた新船造りが必要です。

 日本の漁業従事者の減少を見ても明らかなように、豊かな日本では作業

時間帯の厳しい漁業労働者の確保は、年々困難になるものと思われます。外

国人労働者の雇用が必要です。インドネシア等水産国からの船員が入ってき

ていますが、今後はより大勢の確保が必要でしょう。

 燃料や捕獲魚冷蔵のための塩氷費は、共同購入及び燃料タンクによる燃

料貯蔵や運搬船の冷蔵化、自前の製氷工場の建設もシミュレートすべきでし

ょう。

 この業種に規模の経済が当てはまるかどうか。規模の拡大に伴い、造船

費、燃料製氷費は低減すると予想されます。人件費も大幅な増加はないでし

ょう。水揚げは、探索する船の増加とネットワークにより増大するものと予

想されます。これらの点からは、1ヵ統よりも2ヵ統、3ヵ統の経営が有利

です。

 規模拡大による死角は漁獲高が著しく低くなり、固定費割れした場合に

損失が倍加することです。漁業は狩漁ですから、明日の漁獲高が常に未知数

です。計算が経たないところがあります。鰯が15年やそこらで20分の1

に減ってしまうという予測は誰ができたでしょうか。ここに規模拡大の最大

のリスクがあります。

 旋網漁法には一艘旋方式と二艘旋方式が有り、前者は主に沖合で後者はそ

れよりも沿岸で操業します。1方式の拡大ではなく、2方式取り入れた拡大

はどうでしょう。メリットは第一に、別の漁場と言うことで水揚げのリスク

分散が計れます。沖合と沿岸なので、ねらう魚群が違います。ノウハウや情

報の共有というメリットは同一の漁場で操業するわけではないので直接あり

ませんが、沖の魚が棚場に行った等の情報は送ることができるでしょう。経

費面では、二艘旋網の船価は一艘旋網船の3分の1で済み、燃料等も沿岸な

ので少なく総経費を抑えられます。人的な面でも、老齢化したら二艘旋に移

ると言った手法も取れます。問題は二つの船団をコントロールするには、別々

のノウハウを持つ二名の船頭が必要なこと。水揚げの違いにより各船団で待

遇が違い、それが乗組員の不満に結びつかないかといったことでしょう。検

討する意味はありそうです。

 いずれにしろ、新船を造り続けても利益を出せる経営が必要です。



 おいしい近海魚をずっと食べられるように、日本の漁業者及び造船所を

はじめとする漁業関係者にエールを送ります。        2001.6.28



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