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仕入値の上昇期における、値上げの重要性

税経管理第12部 部長 羽石

ロシアのウクライナ侵攻をはじめとした世界情勢の急激な変化により、世界的な物価上昇が加速しています。日本も例外ではなく、生活する上で身近なものでは食材から日用品、光熱費からガソリン代など軒並み価格が上昇しています。

仕入値や原材料費の上昇は、何もしなければ当然経営を圧迫し、場合によっては会社の存続にも関わります。ここでは、仕入値の上昇期に利益を確保するために、特に重要な「値上げ」について説明します。


・利益を増やすためには
① 売上を増やす
② 経費を減らす

単純ですが、利益を増やすためには売上(収入)を増やすか経費(支出)を減らすかに尽きます。ただし、その時々の状況により打つべき対策は異なってきます。


1.経費を減らすのが有効な場合

直近のコロナ禍での売上減少時、特に飲食店などは時短要請や利用マインドの低下などもあり売上の上昇を見込むことは難しいです。このようなときは経費の削減、具体的には「固定費」と呼ばれる家賃の減額交渉や役員報酬の削減、「変動費」と呼ばれる仕入を中心に、売上の減少に応じて適正値に減らしていくことが重要です。


  【経費削減の一例】

2.値上げによる利益の確保

現在(令和4年6月1日現在)コロナ禍も収まりつつあり、インバウンドの受入れ枠拡大など政府の方針も経済対策に舵を切っています。業績への影響を見ても、コロナ禍などに起因するものと物価高によるものとでは内容が異なってきています。

このような状況の中、仮にコロナ禍前まで売上を戻せたとしても物価高等で経費が増えているため獲得できる利益は少なくなる、もしくは赤字となる可能性があります。こうなると先述の経費削減は現実的ではなく、売値(単価)を上げる、いわゆる「値上げ」をしていかなければ利益確保は難しくなります。


【値上げによる仕入値上昇への対応例】

まず、いくらの利益をとりたいのか、その利益を確保するためには単価をいくらに設定してどれだけの数量を売る必要があるのかを考えて値上げ幅を決定します。


値上げによってお客様が離れていったらどうしようなど、不安に思う気持ちはあると思います。しかしながら中小企業は大手とは違い、安売り・大量生産では太刀打ちできません。ましてや物価高の中、経費削減の自社努力で利益を出すには限界があります。

さまざまなものの物価が上昇している今だからこそ、取引先やお客様には値上げに対して理解される時期でもあります。


取引先から値上げを受け入れてもらえないなどということもあるかもしれません。物価高で従業員の生活費も上昇しており、会社だけでなく従業員を守るためにも、そのような取引先との付き合いをやめても自社の経営が成り立つくらいに製品・サービスの付加価値を高めておき、適正な価格で取引できる環境を整えておくことが重要です。

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