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税  務

相続で困らないための基礎知識

税経管理第3部 部長 夏目 毅雄

様々なメディアなどで「大相続時代」という文字を目にします。これは相続税の基礎控除額が平成27年に引き下げられた影響です。税理士会主催の税務相談を担当させていただいていますが、「相続税がわからず不安で」と相談にお越しになる方もいました。そこで現状の相続税について基本的なことをお伝えします。


・相続税の非課税限度額(1と2の合計額)
1.基礎控除額 ⇒ 3000万円
2.相続人1人につき ⇒ 600万円

<具体例>
お亡くなりになった方:夫
相続人:妻、子供2人
非課税限度額4800万円=3000万円+600万円×3人

上記の例では、遺産総額(現預金、不動産など)が4800万円以下であれば相続税は課税されません。

・相続人の範囲
配偶者は常に相続人となります。
最初に、第1順位は子供となります。すでに死亡しているときはその人の直系卑属(子供や孫)が相続人となります。
第1順位がいない場合、第2順位は直系尊属(父母祖父母)になります。
第1,第2順位の相続人がいない場合、第3順位は兄弟姉妹が相続人となります。すでに死亡しているときは兄弟姉妹の子供までが相続人となります。

・法定相続分
1.配偶者と子供が相続人の場合

配偶者 1/2 子供(2人以上の時は全員で)1/2
2.配偶者と直系尊属が相続人の場合
配偶者 2/3 直系尊属(2人以上の時は全員で)1/3
3.配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合
配偶者 3/4 兄弟姉妹(2人以上の時は全員で)1/4

*なお、相続人の間で遺産分割の合意ができた場合には、この法定相続分による必要はありません。

・配偶者は優遇されています(配偶者の税額軽減制度)
配偶者の取得した財産のうち、次の金額のどちらか多い金額までは配偶者に相続税がかかりません。
1. 1億6千万円
2. 配偶者の法定相続分
この制度を適用するには、相続税申告書を提出する必要があります。

・生命保険金の非課税限度額
生命保険金も相続税の課税対象となります。
ただ、下記の非課税限度額を控除することができます。
500万円 × 法定相続人の数 = 非課税限度額

・「遺言書」の大切さ
夫の両親や祖父母はすでに他界している子供のいないご夫婦で、夫が亡くなって妻が残された場合、法定相続分は上記の通り妻が3/4、兄弟姉妹が1/4となります。
ただ、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要であるため、兄弟姉妹で所在不明者などがいた場合は遺産分割ができなくて大変なことになってしまいます。
そこで夫が元気なうちに「遺言書」を書いてもらうことが重要です。兄弟姉妹には「遺留分」がないため、遺言で妻にすべての遺産を渡すことができます。
遺言書を作成する場合は「公正証書遺言」をおすすめします。

・相続で困らないために
親が要介護状態、または認知症になってしまうと財産の把握が大変です。やはり元気なうちに「相続についてどう考えているか」という話をしておくことが、その後の相続で困らないための対策となります。今回は基本的な内容をお伝えしましたが、これを機会に家族で相続の話をしてみてはいかがでしょうか。



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