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税  務

一括償却と30万円未満の特例

税経管理第6部 部長 細美 忠彰

取得価額が10万円以上で1年以上使用可能な車両や機械などの資産を購入したときは、原則としてその全額を購入した事業年度の費用にすることはできません。いったん資産計上をして減価償却を行い、その資産の耐用年数に応じて、各事業年度の費用にしていくことになります。


ただし取得価額が20万円未満の固定資産なら、どのような種類の資産であっても一括して3年間で均等に償却できる制度があります。これを一括償却といいます。通常の耐用年数よりも短期間で償却できることが多く、また耐用年数を調べる労力を省くことができます。

償却額=該当する資産の合計額×事業年度の月数/36


また平成18年4月1日から令和4年3月31日までに中小企業者等が30万円未満の少額償却資産を取得して事業の用に供したときは、一定の要件のもとにその取得価額の全額を損金の額に算入することができます。正式な名称ではありませんが、30万円未満の特例と呼ばれています。

この2つの制度について説明させて頂きます。


1.適用対象法人

30万円未満の特例の適用の対象となる法人は、青色申告法人である中小企業者又は農業協同組合等で、常時使用する従業員の数が千人以下(令和2年4月1日以後に取得などする場合は500人以下)等の要件があるので注意が必要です。

一括償却については、そのような適用要件はありません。


2.限度額

30万円未満の特例の限度額は総額で年300万円までです。年300万円を超える場合には、300万円に達するまでの合計額が限度となります。

一括償却には限度額はありません。30万円未満の特例該当資産が年300万円を超える場合には、超える部分を通常の減価償却にするよりも、その中から20万円未満のものを一括償却にすることで償却限度額が増える場合があります。


3.償却資産税

30万円未満の特例を適用した資産は、その全額が損金となりますが、種類によっては償却資産税の申告の対象となります。そのため帳簿上は資産として計上されていなくても、償却資産税の対象資産として申告が必要になる場合があります。

一括償却を適用した資産は、償却資産税の対象にはなりません。そのため償却資産税のかかる法人は一括償却を適用することで償却資産税の額をおさえることができる場合があります。


4.除売却した場合

30万円未満の特例を適用した資産は、その全額が損金となり資産計上されていませんので、会計上除売却の処理は必要ありませんが、償却資産税の対象資産の場合は、償却資産税の申告時に減少資産としての処理を行う必要があります。

一括償却資産については、除売却した場合でも一括償却を続けます。例えば2年目に除却した場合でも除却損の計上はできず、3年で償却をすることになります。


5.通常の処理

30万円未満、又は20万円未満の資産であっても、これらの制度を適用せずに通常の法定耐用年数により償却を行うこともできます。


6.適用する場合の注意点

30万円未満の特例や一括償却を行う場合には、確定申告書にその内容を記載した書類を添付することや、その計算に関する書類を保存するなどの必要がありますのでご注意ください。


30万円未満の特例の対象となる法人で、300万円の限度額を超えない場合には、一括償却よりも30万円未満の特例の方がその事業年度の償却限度額は多くなります。しかし償却資産税の額が増えてしまう場合があります。

利益の額や償却資産税等も考慮しながらケースバイケースで最善の方法を選択するのが良いと思います。


ご不明な点がございましたら、各担当にお気軽にご相談ください。

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