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実質無利子となる利子補給金の税務上の取扱い

税経管理第7部 部長 松村

新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者に対して、資金繰りの支援等を目的とした借入利子を助成する制度『新型コロナウイルス感染症特別利子補給制度』(以下、特別利子補給制度)があります。

この制度について税務上留意すべき点は、助成金(以下、利子補給金)の収益計上時期です。そこで、今回は、制度の概要とともに、税務上の取扱いをご紹介します。


<特別利子補給制度>

特別利子補給制度とは、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた事業者が、日本政策金融公庫や商工組合中央金庫など、政府系金融機関から新型コロナウイルス感染症に関する特別貸付により借入を行った場合に、その借入利子のうち最長3年間分が実質無利子となるように利子相当分を補給する制度です。


<対象事業者>

この場合の対象となる事業者とは、事業規模等に応じた売上高要件を満たすなど、一定の要件に該当する者です。

例えば、中小企業者の場合、売上高が最近1ヶ月に加え、その後の2ヶ月も含めた3ヶ月間のうちのいずれか1ヶ月で比較(前年または前々年と同期比較)して、20%以上減少している場合、制度の対象となります。


<申請から精算までの主な流れ>

利子補給金の申請から精算までの主な流れは、以下のとおりです。


① 申請→② 審査・交付決定→③ 交付→④ 精算


③交付時に、対象期間分の利子補給金が一括で入金されます。都度の補給ではないため、対象期間が終了した段階で、利子補給金額と実際の支払利子額に差が生じていた場合は、④精算の手続が発生します。


<原則的な収益計上時期>

税務上において、国や地方公共団体からの助成金の収益の収益計上時期は、原則として、「助成金等の交付が決定された日」となります。

法人はその助成金等の交付が決定された日の属する事業年度、個人はその助成金等の交付が決定された日の属する年分に、それぞれ収益計上することとなります。


<利子補給金の収益計上時期>

利子補給金の収益計上時期は、上記の原則とは異なり、前述の②審査・交付決定の交付決定時に、一括で収益計上するわけではありません。“実質無利子化する”というこの制度の性質上、収入が確定するのは補給対象となる支払利子の発生時点であり、その発生時点で同額の利子補給金を収益として計上します。

利子補給金の入金時は、前受金で仕訳して、利息支払いと同時に利息と同額を前受金から雑収入に振り替える仕訳を行います。

このような処理を通じて、税務上においても、“実質無利子化”として取扱うこととなります。


<民間金融機関による実質無利子制度>

特別利子補給制度に類似した制度として、民間金融機関による実質無利子・無担保融資制度があります。これは、都道府県等による一定の制度融資について、保証料や利子を補助する制度です。大方のケースで、保証協会等に対して国等から補助分が直接支払われます。事業者が支払うことがないこの補助分は仕訳不要です。

ただし、都道府県等によっては、一旦、事業者が支払った後に助成金が出る場合があり、上記とは取扱いが異なりますので、ご留意ください。

【参考】「国税庁HP「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」

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