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税  務

土地の無償返還に関する届出

税経管理第5部 部長 山内

 法人・個人間での土地貸借の際に税務署に提出する、『土地の無償返還に関する届出書』について説明します。

<土地の無償返還に関する届出書とは>

 土地を借りたとき、賃料を無償で(権利金を支払わず)借りると借りた人(借主)は貸した人(貸主)から『借地権』をタダでもらい受けたものとして税金を納める必要があります。これを『借地権の認定課税』といいます。
 この『借地権の認定課税』を回避するためには、借主は権利金または相当の地代を貸主に支払わなければなりません。(相当の地代とは、その土地の更地価額のおおむね6%です。逆に相当の地代を支払うのであれば、この認定課税を回避する必要はありません。)

 しかし、社長がご自分の会社に個人所有の土地を貸すときに、権利金や高い賃料を支払うのはおかしいという意見があり、昭和55年にこの『土地の無償返還に関する届出書』という制度が作られました。この制度は、「将来、土地をタダで返すという意思表示として税務署にこの届出書を提出すれば、借地権の認定課税はしません」という制度です。

< 注 意 点 >

 この制度を利用するときには、次の点に注意が必要です。

1、一方または両方が法人の場合のみ適用可

 この制度は、借主・貸主いずれか一方または両方が法人の場合のみ提出可能です。個人同士では提出することはできません。
  ※ 個人同士の場合は、使用貸借通達で認定課税を回避できます。

2、届出書を作成して税務署に提出する

(1)「借地権の設定等」を選ぶ
 相続発生時の土地評価に影響が出ます。届出書内の「借地権の設定等」を選択します。

(2) 提出期限
 届出書の提出期限は、「定められた後 遅滞なく」と定められています(法人税法基本通達13-1-7)。明確には書かれていませんが、賃貸借契約を結んだ法人の確定申告期限までに提出というのが一般的です。

(3) 4通作成する
 届出書は4通作成する必要があります。借主・貸主各1通と、税務署には2通提出します。

3、契約書に無償返還を記載する

 賃貸借契約には契約書が必要です。また、この契約書は届出書に添付して提出する必要があります。この届出書を作成するときの注意点として、「土地の使用後は無償で返還する」と明記する必要があります。

―作成例-

第〇条 無償返還について
土地賃貸借契約を解除するときは、借主は貸主に対し何ら対価を求めず、本土地を無償で返還するものとする。

 また、借主:法人 貸主:個人 の組み合わせでは、実際の地代が相当の地代を 下回っていても何ら税金上の問題は生じませんが、

 借主:個人 貸主:法人の組み合わせでは、借主/給与課税 貸主/源泉所得税
 借主:法人 貸主:法人の組み合わせでは、借主/問題なし 貸主/寄附金課税

の問題が発生しますので、注意が必要です。 

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