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税  務

              広大地の評価


                         税経管理第3部 部長 林


 平成27年1月1日から相続税の基礎控除が、現行の6割水準へと引き下げられる

ことになっています。この制度変更によって、国は相続税の申告対象者がおよそ現

在の倍になると試算しています。もともと相続税のかかる人も、確実に相続税が増

えます。


 一般的に相続財産の過半を占める不動産、特に土地の評価を減らす事で納税額を

減らすことが出来ます。相続財産の中で広大な土地を所有している場合に広大地の

判定の可否次第で財産評価額が大幅に変わりますので検討する事が必要です。


 それでは、広大地の定義から確認します。広大地評価の規定は、【財産基本通達24

−4】に以下のように記載されています。


 @その地域におけるA標準的な宅地の地積に比してB著しく地積が広大な宅地で

都市計画法第4条第12項に規定する開発行為(以下本項において「開発行為」とい

う。)を行うとした場合にC公共公益的施設用地の負担が必要と認められるもの(22

−2《大規模工場用地》に定めるD大規模工場用地に該当するもの及びE中高層の集

合住宅等の敷地用地に適しているもの
(その宅地について、経済的に最も合理的で

あると認められる開発行為が中高層集合住宅等を建築することを目的とするもので

あると認められるものをいう。)を除く。以下「広大地」という。)の価格は、原則

として、次に掲げる区分に従い、それぞれ次により計算した金額によって評価する。


 簡単にいうと「戸建て分譲に適した土地で、区画割りしたときに道路を新設しな

ければならないような形状の広い土地」ということになります。



 まず、マンション用地でもなく、工場用地でもなく、戸建分譲に適した土地とい

うことが前提です。さらにその土地を分割する際に、道路を新たに造らなければき

れいな形には分割できないような形状であることが条件となります。





 それでは、広大地の定義が記載された財産基本通達24−4の中でも、特に注意を

要する部分(@〜E)を具体的に見て行きます。


 @その地域とは

  評価対象地周辺の「河川や山などの自然的状況」「土地の利用状況の連続性や地

 域の一体性を分断する道路、鉄道及び公園などの状況」「行政区域」「都市計画法

 による土地利用上の利便性や利用形態に影響を及ぼすもの。

 A標準的な宅地の地積とは

  その地域の標準的な面積の判断は、その標準的な使用方法が、将来にわたって

 継続するかどうかも考慮する必要があります。

  例 1,000u〜2,000u程度の中小の工場敷地が多い地域で、戸建て分譲住宅の

 売り出しが盛んな地域の中にある1,500uの駐車場の場合。

  具体的な判定方法 周辺は中小工場の敷地が多いため、中小工場の敷地として

 利用するのが「標準的」と考えがちです。

  しかし、相続時点では戸建分譲が盛んで、大きな土地が供給されれば宅地開発

 されて戸建分譲される可能性は高いと考えられます。この地域の土地は住宅地域

 へ移行しつつある地域と判断され、「最有効使用」は「住宅地」と判断されます。

  そして、標準的宅地面積は売りに出されてきた戸建分譲住宅の敷地面積が基準

 になります。

 B著しく地積が広大とは

  広大地に該当するか否かの条件の一つに面積基準があり、各自治体が定める開

 発許可を要する面積基準以上のものという条件があります。


 面積基準

 1. 市街化区域、非線引き都市計画区域(2に該当するものを除く。)

 ・・・・・・都市計画法施行令第19条第1項及び第2項に定める面積(※)

      ※1 市街化区域

         三大都市圏・・・・・・・・・・・500u

         それ以外の地域・・・・・・・・1,000u

       2 非線引き都市計画区域・・・・・3,000u

 2. 用途地域が定められている非線引き都市計画区域

 ・・・・・市街化区域に準じた面積

 ただし、近隣の状況から、地域の標準的な規模が上記面積以上である場合につい

ては、当該地域の標準的な土地の面積を超える面積のものとする。

(注) 「非線引き都市計画区域」とは、市街化区域と市街化調整区域の区域区分

    が行われていない都市計画区域をいう。

 開発許可面積基準の数値はあくまでも、「原則」であって、絶対条件ではなく、形

式基準なので注意します。 

 C公共公益的施設用地(つぶれ地)の負担が必要と認められるものとは

  公共公益的施設用地(つぶれ地)とは、あくまでも開発区域内に新設される道路

 のことであって、ゴミ置き場やセットバック、開発行為時に提供義務のある道路拡

 張幅部分は公共公益的施設用地(つぶれ地)には該当しないとしています。

  以下の2点も事前に調査すると必要があります。

   ・対象地周辺に旗竿状の土地での分譲事例がない

   ・開発道路を新設して開発された分譲事例がある

 次につぶれ地が生じる場合の目安となる画地条件をみていきます。

 つぶれ地が生じる場合の目安となる画地条件は以下の4つです。

・角地でない、2方路地でない、三方路地でない、四方路地でない

・間口より奥行きの方が長い、間口が極端に狭い

・奥行きが25〜30メートルある

・区画割り想定をしたときに、開発道路のみ面する画地が3以上ある 

 D大規模工場用地に該当するものとは(広大地からこれは除く)

  大規模工場用地は「大工場地区に存する5万u以上の土地」と、地区区分と面

 積によって明確に定義されていますから、広大地の判定にあたって迷う事はあり

 ません。

 「大規模工場用地」はその大半が都市計画上の「工業専用地域」という用途地域

 に属しています。そもそも工業専用地域には戸建住宅は建てられない規定になって

 いますから、「戸建分譲用地」が前提となる広大地の要件には当てはまらないことに

 なります。したがって「大規模工場用地」に該当しない土地でも用途地域が「工業

 専用地域」に属していれば、戸建分譲できない土地であるため広大地には該当しないという判断になります。

 E中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものとは(広大地からこれは除く)

 「中高層」には、原則として「地上階数3以上」のものが該当します。また「集

合住宅等」には、分譲マンションのほか、賃貸マンション等も含まれます。

 なお、評価する土地がマンション適地かどうかの判断基準としては、次のような

基準が参考になります。

 1 近隣地域又は周辺の類似地域に現にマンションが建てられているし、また現

  在も建築工事中のものが多数ある場合、つまりマンション敷地としての利用に

  地域が移行しつつある状態で、しかもその移行の程度が相当すすんでいる場合

 2 現実のマンション建築状況はどうであれ、用途地域・建ぺい率・容積率や当

 該地方公共団体の開発規制等が厳しくなく、交通、教育、医療等の公的施設や

 商業地への接近性から判断しても、換言すれば、社会的・経済的・行政的見地

 から判断して、まさにマンション適地と認められる場合


 以上@〜Eの要件をすべて満たして初めて、広大地として土地の評価を下げる事

が可能となります。広大な土地を持っている場合しか使えませんが検討してみる価

値はあります。以上、広大地の定義中ポイントとなる部分を記載しましたが、最後

に広大地判定の効率的な手順を記載します。


所在地、面積、地目の確認→地図で場所確認→対象地周辺の利用状況を地図、航空

写真等で確認→評価対象地の最寄駅の位置、距離の確認→地図で接道状況を確認→

公図で接道状況を確認→用途地域、容積率等行政上制限を確認→近隣の地価公示地、

都道府県地価調査の調査地の地積と利用状況の確認→標準的使用、標準的宅地面

積の仮判断→現地確認(現況地目、接道状況、周辺地域等確認)→「その地域」の

判断、標準的使用の判定→役所調査にて開発登記簿の閲覧、写しの取得→標準的使

用及び標準的な宅地面積の最終判断→広大地フローチャートへの当てはめ→広大地

に該当する場合は区画割り想定図を作成→広大地に該当する場合は広大地に該当す

ると判断した根拠の文章作成



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