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経  営


     バルト三国、ベラルーシ企業視察 

       小さなクオリティ国家から学ぶもの(1)



                              所長 木村哲三


 9月20日から1週間、バルト三国とベラルーシの企業及び組織を視察しました。向

研会主催の視察です。お客様に役立つ経営のヒントをお届けします。


 エストニア、ラトビア、リトアニアがバルト三国、首都は、タリン、リガ、ヴェリ

ュニス、地図上ではフィンランドのすぐ南にこの順で並んでいます。バルト三国の南

のベラルーシの首都はミンスク。雰囲気はフィンランドに近づくほど北欧風、ベラル

ーシは今も社会主義でレーニン像も健在な旧ソビエト風です。


IT先進国エストニア


 エストニア政府にはCIOがいる

 エストニアは、国会議員の選挙もすべてネット投票のIT利用先進国です。国にC

IO(最高情報責任者)のポストがあります。エストニアで一番のソフト会社を興し、

それを売却した後、国に乞われてエストニアのCIOになったタービ・コッカ(TAANI

KOTKA)さんのお話を聞きました。今回の視察で一番印象に残ったスピーチです。エ

ストニアの歴史と現在のロシアに対する危機感、ITに国家一丸となって賭ける姿が

理解できました。以下彼のスピーチを中心に。


 エストニアのIDカードは一人1枚で全ての情報

 国民は1枚のIDカードで投票から、健康診断、納税、キャッシュカードまですべ

て賄います。今はカードの代わりにスマートホンのシムカードをIDカードにもでき

ます。現金を持ち歩くことは不要です。

 eガバメントは広い国土に人の少ない環境にぴったりです。冬の雪でも投票できま

す。

 企業も1つの銀行口座を必ず通します。企業の儲けは政府がパーフェクト把握で年

末に一括自動計算で税金が賦課されます。シンプルな税制なので、税理士なしで納税

します。税務に時間をかけず、国の大事や会社の成長に時間をかけられますね。木村

会計でも税務は法規に従いお客様に最も有利に対応は当たり前、この作業をできるだ

け圧縮して、できた時間をお客様の経営問題の解決や成長のサポートに回したいと思

いました。

 医療についても一枚のカードにすべての履歴が入っているので、どの医療機関にか

かってもメディカルヒストリーの共有がなされています。カード予約で予約時間にす

ぐ見てもらえるそうです。薬剤も97%がe処方箋です。

 お隣のラトビアもIDカード一枚でエストニアのように効率的な社会を創りたい

と試みていましたが、権利関係の調整が大変なのか中途半端で後一歩というところで

した。何でも徹底しないとだめですね。


 エストニアには、将来のビジョンとして1千万人エストニア市民計画があるそうで

す。それは、エストニアのIDカードを世界中の希望者に渡し、エストニアのIT政

府を共有する。その人たちは、自由にエストニアに企業を設立できるという計画です。

そういった人が900万人に達すると、現人口130万人ですので、1千万人を突破しま

す。これは国を守る一つの楯でもあります。


 透明な政府と個人情報

 国民なら自分のIDカードで、大統領の所有土地までネットですぐ検索でき、大統

領の交友関係図もすぐに見ることができます。政府の透明性は高いです。

 一般の個人のデータも原則オープンで、オープンな情報を見に来た人の情報が見ら

れた人に明示され、誰が見たか、何のためかがわかる仕組みになっています。不正利

用は罰せられます。


 ロシアに対する危機感

 第二次大戦でドイツに、そのあとソビエト連邦に国を支配されたエストニアは、ロ

シアを現実の脅威として恐れています。

 その対策として、万が一ロシアに国土を侵されたら、電子政府を他国に移してIT

国家eエストニアでエストニアを守ることがすでに考えられていました。子供にもI

T教育のほかに、過去の脅威から未来の対策を絶対教えるとのことでした。聞いてい

て危機感が迫真です。

 エストニアには、第二次大戦後、ロシアの支配から脱し、国を作るときには、ロン

ドンとニューヨークに密かに預けていた金と自国の森の現在価値で、自国通貨クロー

ネを発行した歴史があります。


 IT化のコスト

 エストニアのIT投資は、出来上がってみると安くつき、フィンランドの四分の一、

イギリスの四百分の一で済みました。その秘訣は、市や県単位ではだめで、国全体で

やることだそうです。国のコストは大幅に下がり、年予算の4%でできるとのこと。

 同じ内容なのにそれぞれ市町村ごとに違うシステムを作り無駄な税金投入してい

る日本は、まずこの点を見習って欲しいものです。

 IT化による合理化で仕事を失った人はどうするかという質問には、前を進むから

仕方ないとの回答でした。                    (続く)



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