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経  営
         
             鉄・非鉄リサイクル事業の戦略

                          税経管理第7部 部長 小島


1.鉄・非鉄スクラップリサイクル事業の現状

 鉄スクラップは有史以来リサイクルの優等生として再利用されてきました。近年はこ

れに「環境に優しい貴重な資源」という評価が加わり、鉄鋼業がCO2の巨大排出産業

として認識される中で、環境負荷の低い製鉄原料として脚光をあびています。

 国内スクラップは唯一の国内資源であり、工場や建築現場等から発生する金属スクラ

ップを再生メーカーに選別・納入する事業は、資源のない日本において非常に社会的意

義が大きい事業であると言えます。

 しかし、2008年、価格面ではサブプラムローン問題に端を発した投機資金の急速な収

縮で、電気銅建値も33万円に急落、わすか2-3ヶ月でスクラップ価格も3分の1から

5分の1に暴落しました。以降、扱い数量減・相場下落による売上減、利益減にさいな

まれています。鉄から非鉄金属に至るまですべての金属スクラップが同様のダウンサイ

ジング環境に入っており、これまでには考えられなかったリサイクル業界の自然淘汰時

代に突入したといって過言ではありません。


2.鉄・非鉄スクラップリサイクル事業戦略

 (1)鉄・非鉄スクラップ事業をメインとして安定した仕入れと供給を確保しつつ(2)関連

事業に参入することによって企業の財務体質のさらなる改善向上を図り(3)且つ同業他

社との差別化を図ることによって安定的な業績を維持していくことが重要となります。

以下、(1)〜(3)の項目について、所長及び全部課長にて検討した結果をご紹介させていた

だきます。


(1) 安定した仕入れと供給の確保

@ 解体の頻発エリア等に台貫及び一時貯蔵場所を確保する。

・事業所所在地によりスクラップの収集量が左右されてしまう可能性があるためスク

ラップ発生の可能性が高い地域に出張所等を設ける。

A オフィス家具からOA機器まで会社の不要品回収や粗大ゴミ回収のサポートを実

 施する。

B 一般個人からの持ち込みによる集荷にも力をいれる。

C 建設業者との連携。

D 期間を定めて、買取キャンペーンを実施。

・一般家庭には処分できないままの家電等があると思われる。敷居の高さを取り

除く。


(2) 関連事業に参入、財務体質の改善

@ 商売の垣根を取り払う。

・スクラップ処理に限らず事業遂行に必要な許認可の取得が前提となる。

・まずシナジー効果の高い解体業に参入し事業範囲を広げる。

A 産廃処理、総合解体、造園土木、引っ越し清掃関連業務等からの展開を図って

 ゆく。

・鉄スクラップ処理の平均的な利益率は27.7%(TKC経営指標/24年12月)と

なっているが、より利益率の良い解体業等の連携が財務体質の向上につながると

期待される。

B 解体と産廃処理(鉄スクラップ回収を含む)のセット事業。

C 作業生産性の向上による人員の適正配置及び経費の削減に目を向ける。

・作業生産効率アップ(集配業務の効率化、作業動線の見直し等)と修繕費、燃

料費、消耗品等につき細かな管理を実施し、経費削減を図ってゆく。

・人員の適正配置によって現状人員の増加なしに営業人員を確保して、積極的な

情報収集等をはかり売上につなげてゆく。


(3) 同業他社との差別化

@ ワンストップ窓口。

・顧客からの要望に対しては全て引き受け、あそこに行けば何でも面倒見てくれ

るという信頼を得る(自社での対応が難しい物でも窓口は一本化し、外部に有償

にて処理依頼をかける等とにかく窓口は一本とする)

A 顧客からの注文受付24時間体制構築。

B クリーンなエネルギーを利用してリサイクルを達成する。

・企業のイメージアップ、電力の自前による光熱費の削減。

C ISO14001取得

・社内的に環境意識を意識付けるだけでなく、対外的にも環境に対して取組を行

っている企業であるということを証明することになる。

D ネットでのホームページを充実させる。

・圧倒的な情報公開の実施、企業理念の伝達等々。

                                以上。

上記項目につき、自社業務との比較等を通して参考にしていただければ幸いです。



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