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税 務
消費税率引上げと経済政策パッケージ概要
税経管理第2部 部長 並木
消費税率の引き上げが決まりました。10月1日の閣議で、平成26年4月1日か
らの消費税率の引上げ(5%→8%)を確認、消費税率引上げにあたっての対応とし
て投資減税措置等を定めた「経済政策パッケージ」が決定されました。
この消費税率の引上げは、「社会保障と税の一体改革」の一環として行われるもの
で、消費税改正の法律は、平成24年8月10日に成立、平成24年8月22日に公布
されていました。内容については、
@平成26年4月1日消費税率を8%に引上げ(国税分6.3%、地方消費税分1.7%)
A平成27年10月1日消費税率を10%に引上げ(国税分7.8%、地方消費税分2.2%)
B消費税使途の明確化(年金・医療・介護・少子化)
C課税の適正化(事業者免税点の見直し、中間申告制度の見直し)
この法律の附則として、消費税率引上げの条件として経済状況を好転させること
が付され、消費税率引上げにあたっては経済状況の判断を行うこととされていまし
た。これを受けての閣議決定だったわけです。閣議後記者会見をした安倍総理は、
現在の経済状況は回復の兆しが見えるとし、大胆な経済対策を果断に実行し景気回
復のチャンスを確実なものにすることにより、経済再生と財政健全化は両立しうる
として結論付けています。
消費税率引上げにあたっての対応として、消費税増税に伴う経済対策と成長力強
化のための総合的対策として「経済政策パッケージ」が閣議決定されました。設備
投資減税を中心とした1兆円規模の減税措置を含む総額5兆円規模の新たな経済政
策の策定が予定されています。詳細は12月上旬にまとめられ、平成25年の補正予
算案と平成26年度予算案に反映される予定です。
「経済政策パッケージ」は以下の7つに分類されています。
(1)成長力底上げのための政策
日本再興戦略(平成25年6月14日閣議決定)の達成目標の実現にむけて
戦略地域単位、企業単位、全国単位の三層構造で構造改革加速化
投資減税措置等により民間投資・産業新陳代謝促進
雇用、医療、介護、農業等の分野に関し更なる構造改革の検討
(2)「政・労・使」の連携による経済の好循環の実現
好循環=企業収益拡大→賃金上昇・雇用拡大→消費拡大・設備投資増加
所得拡大促進税制の拡充、復興特別法人税の1年前倒しでの廃止検討
(3)新たな経済対策の策定
駆け込み需要とその反動減の緩和、下振れリスク対応、その後の経済成長
競争力強化策-中小企業に重点を置いた設備投資支援策等
高齢者・女性・若者向け施策
復興・防災・安全対策の加速
(4)簡素な給付措置
低所得者対策として市町村民税非課税者への現金支給
(5)住宅取得等に係る給付措置
住宅ローン減税の拡充措置等
被災者の住宅再建に係る給付措置
車体課税(自動車取得税、自動車重量税)の見直し
(6)転嫁対策
法律に基づく実効性のある対策の推進
消費税の円滑かつ適正な転嫁等に関する対策推進本部設置
(7)復興の加速等
平成25年度補正予算及び平成26年度当初予算への予算措置
復興特別法人税の廃止に伴う復興財源の補てん
被災者の住宅再建に係る給付措置
以上、概略を見てきましたが、(6)転嫁対策に関しては具体的な方針が示されて
おり、実務に直結する問題であると思われるので少し掘り下げてみます。
転嫁対策に関する法律「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転
嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」が平成25年6月12日に公布され
ました。目的は、消費税の円滑かつ適正な転嫁を確保することとしており、4つの柱
があります。
@消費税の転嫁を阻害する行為の是正
(平成26年4月1日以降の取引から適用)
消費税率引上げに際し、大手業者が中小納入業者や下請業者に対し消費税転嫁拒否
や値下要求をすることを防止し、違反する行為があった場合、公正取引員会が、指
導、助言、勧告、公表できるものとしています。禁止行為としては、
減額要求、買いたたき、商品購入の強制・役務の利用強制、不当な利益提供の
強制、本体価格での交渉の拒否、通報に対しての報復行為
A消費税の転嫁を阻害する表示の是正
(平成26年4月1日以降の取引から適用)
消費税増税時の値下げの防止=デフレ抑制の観点から、
取引の相手方に消費税を転嫁していない旨の表示、負担すべき消費税を対価の額か
ら減ずる旨の表示で消費税との関連を明示しているもの、消費税に関連して経済的
利益を供与することを表示する等が禁止行為としてあげられています。具体的には、
消費税還元セール、増税分還元、消費税は頂きません等の表示
消費税分ポイント還元、消費税分クーポン券配布等
B価格表示に関する特別措置
(平成25年10月1日以降平成29年3月31日まで)
現在は消費税の価額の表示に関しては、総額表示が義務付けられていますが、表示
する価格が税込価格であると誤認されないための措置を講じているときに限り、例
外的に税込価格を表示しなくともよいとしています。具体的には、
値札、チラシ、ポスター、商品カタログ、ウェッブ等で
○○円(税抜)、〇〇円(税抜価格)、〇〇円(本体価格)、○○円+税
個々の値札等には税抜価格のみを表示し、目立ちやすい場所に明瞭に「当店の
価格はすべて税抜き価格となっています」のような掲示がある
消費者の利便性に配慮する観点から、できるだけ速やかに税込価格を表示するよう
に努めなければならないと規定されています。
C消費税の転嫁及び表示の方法の決定に係る共同行為に関する特別措置
(平成26年4月1日以降平成29年3月31日まで)
転嫁カルテルの独占禁止法適用除外
事業者団体等は公正取引委員会に事前に届け出ることで「消費税の転嫁の方法の決定」
についての共同行為が独占禁止法に違反することなく行うことができます。
表示カルテルの独占禁止法適用除外
事業者団体等は公正取引委員会に事前に届け出ることで「消費税の表示の方法の決定」
についての共同行為が独占禁止法に違反することなく行うことができます。
より詳しい情報や実務に関するお問い合わせは担当者へご一報ください。
-参考資料-
(首相官邸HP-会見詳細)
http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/statement/2013/1001kaiken.html
(財務省HP-消費税率及び地方消費税率の引上げとそれに伴う対応について)
http://www.mof.go.jp/comprehensive_reform/251001.pdf
(自民党HP-民間投資活性化等のための税制改正大綱)
https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/122440.html
(首相官邸HP-消費税の円滑かつ適正な転嫁等に関する対策推進本部)
http://www.kantei.go.jp/jp/singi/shouhizei/
(消費税の円滑かつ適正な転嫁のために-パンフレット)
http://www.jftc.go.jp/houdou/panfu.files/syouhizeipamphlet.pdf
(消費税の円滑かつ適正な転嫁のために-リーフレット)
http://www.jftc.go.jp/houdou/panfu.files/130910leaflet.pdf
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