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税 務

       清算所得課税の廃止に伴う注意点

         −平成22年度税制改正−

                  税経管理第6部 部長 松村


 平成22年10月1日以降の解散から、法人税の清算所得課税が廃止

され、清算期間中にも通常の法人税が課されることとなりました。


この影響は、大きいと予想されます。


 なぜならば、今までの清算課税は、通常の所得計算とは異なり、財

産法的な方式となっており、残余財産の価額から解散時の資本金等の

額と利益積立金額の合計額を控除した金額を「清算所得」として課税

対象としていて、税金面の負担を軽減することができたからです。


 すなわち、これまでは、通常の法人税のように、その期間の所得に

対して課税するのではなく、残余財産が残っていれば、それに対して

課税しようというものだったのです。


 税制改正により、清算所得課税が廃止されることになり、会社を清

算する場合も、通常の所得課税となるわけです。すなわち、解散前後

で課税が異なることはなく、清算期間においても、益金から損金を控

除して、課税所得を計算することになります。



 清算にあたって、資産を売却して利益が生じた場合や、債務整理等

により生じた債務免除益などが益金に算入されることになり、法人税

の課税対象となることになります。


 このような状態になると、残余財産の分配が困難となり、清算手続

に支障をきたす可能性があるため、改正前の取扱いとバランスが取れ

るように、実質債務超過である場合には、税務上の繰越欠損金に加え

て、「期限切れ欠損金の損金算入制度」が整備されており、これまでと

大きく課税関係が変わらないように所要の措置が講じられています。


 よって、実質債務超過である場合には、これまでと同様、法人税が

課税されることは通常ありません。


 ただし、本来赤字であるにもかかわらす、過去に銀行の融資対策等

で益出しを行い、欠損金が過小計上されている状態で解散してしまっ

た場合は、問題が生じる可能性があります。



 すなわち、上記の場合、その分税務上の繰越欠損金及び期限切れ欠

損金が生じていないので、債務免除益等の益金との相殺金額が減少す

ることとなり、解散後に多額な債務免除を受けた場合など、多額の税

金が生じる可能性があります。


 したがって、解散前には、過去に益出しを行ったこと等による架空

資産を正しく損失処理することが不可欠となります。


 平成22年10月1日以降に、会社の解散及び清算をする場合は、清算

課税制度が、通常の所得課税(損益法計算方式)に移行したことに留

意していただいて、特に役員が会社に対して多額の貸付がある場合に

は、「解散前」に、資産性のないものを正しく損失処理をして欠損金

を計上することが、債務免除益等の益金との相殺の上で非常に重要と

なりますので、十分にご注意下さい。



 この新清算課税制度に関するご相談は、各担当者にお尋ねください。



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