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税 務
従業員持株会
税経管理第5部 部長 伊藤
この「従業員持株会」という制度は、主にオーナー株主の相続税対策、資本政策
を目的として以前から存在していました。
中小企業の事業承継のために、新たに創設された「非上場株式等についての相続
税の納税猶予の特例」では、その特例を受けられる上限が、発行済株式等の3分の
2までとされているため、残りの3分の1の株式等についての対策として、「従業員
持株会」が注目されています。
1 概要
従業員持株会とは、従業員に自社の株式を間接的に保有してもらう制度。
(1) 目的とメリット
@ オーナーの相続税対策 → 相続財産を圧縮できる
A 資本政策 → 安定株主の確保
B 短期間での設立が可能
C 従業員の財産形成 → 配当金や奨励金
D 従業員の経営参加意識の向上
(2) デメリット
@ 設立、運営のコスト負担
A 相続財産の圧縮 = 財産価値が減少
B 株主権の付与
C 流通性、収益性が低い
2 組織形態
(1) 日本では、民法上の組合(民法667条)の形態が90%超を占めている。法
人格はなく、会員は配当所得として課税される。
(2) 非上場企業の持株会の多くは、日本証券業協会の「持株制度に関するガイドラ
イン」に準拠していない持株会。次の事項を持株会規約に規定することで自由な
設計が可能。
@ 入会者の資格
A 株式の取引価格
B 配当金の分配方法
C 退会時の処理方法 等
3 株式の取引価格
(1) オーナー(既存株主) → 従業員持株会
配当還元価額以上であれば問題なし。
※一般的に原則的評価よりも低い価額。詳細は担当者にお問い合わせ下さい。
(2) 従業員持株会内
規約で比較的自由に定められ、固定することも可能。
(3) 従業員持株会 → オーナー (買い戻し)
原則的評価による価額(元々の評価額)
※M&Aに備える場合等は注意。
4 設立と運営
(1) 設立の手続き(主なもの)
@ 従業員持株会規約・運営細則の作成
A 設立発起人、理事及び監事の選任(取締役は不可)
B 理事長印の作成・預金口座の開設
C 会社と持株会との覚書締結
D 従業員説明会の実施
(2) 運営
@ 入退会の管理
A 配当金についての各種書類の作成
B 理事会・会員総会の実施
5 注意点
持株会の不存在や名義株の疑義が生じるのを防ぐため、書類の作成だけでなく、
理事及び監事が実際に運営を行い、会員たる従業員も認識した上で参加してもらう
ことが重要です。
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