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税 務
相続税対策
定期金給付契約による評価減の利用
税経管理第2部 部長 並木
定期金給付契約とは税務上の用語で、ある一定期間、定期的に継続して
お金を受け取ることができる契約のことです。いわゆる年金契約で、生
命保険の個人年金保険などがこれにあたります。父が保険料を負担して
いた定期金給付契約の定期金給付を、子が受けることとなった場合など
は、保険料を負担した人以外の人が定期金給付を受けることとなります。
こういった定期金給付は、その保険料を負担した人から贈与あるいは相
続によって取得したものとみなされ、課税対象になります(相続税法6
条)。
定期金給付契約の課税上の評価方法は、すでに給付金(年金)をもらっ
ていれば相続税法24条「定期金に関する権利の評価」で評価します。
この24条を使った評価は、年金の受取方法や受取期間により異なり
ますが、年金給付総額の20%で評価できる場合があるなど、相続税や贈与税
の課税評価額の圧縮に非常に大きな効果があります。この評価減を生前贈与
や相続税対策に使えれば、大きな節税メリットが得られます。
相続税法24条「定期金に関する権利の評価」(条文抜粋)
有期定期金については、その残存期間に応じ、その残存期間に受けるべき給付金額
の総額に、次に定める割合を乗じて計算した金額。ただし、1年間に受けるべき金
額の15倍を超えることができない。
残存期間が5年以下のもの 100分の70
残存期間が5年を超え10年以下のもの 100分の60
残存期間が10年を超え15年以下のもの 100分の50
残存期間が15年を超え25年以下のもの 100分の40
残存期間が25年を超え35年以下のもの 100分の30
残存期間が35年を超えるもの 100分の20
事 例@ 生前贈与のケース
契約者・死亡給付金受取人・後継年金受取人 :父
被保険者・年金受取人 :子
一時払保険料2000万円/年金支払期間40年/基本年金年額59.2万円
年金支払開始時=父から子に対する贈与発生
年金受取累計額 59.2万円(基本年金年額)×40年=2,368万円
贈与税評価額 2,368万円×20%(残存期間40年の評価割合)≒474万円
贈与税額 48万円(算式下記)
(474万円−110万円(基礎控除))×20%(税率)−25万円(控除額)
∴ 父→子2000万円資金贈与を48万円の税負担ですることができた。
(2000万円の現金贈与の場合、贈与税額は720万円です)
事 例A 相続のケース
契約者・被保険者・年金受取人 :被相続人
死亡給付金受取人・後継年金受取人 :相続人
一時払保険料2000万円/年金支払期間40年/基本年金年額59.2万円
年金開始3年後に相続が発生し、後継年金受取人(相続人)が年金を引継ぐ
年金受取累計額 59.2万円(基本年金年額)×37年(40年−3年)≒2,190万円
相続税評価額 2,190万円×20%(残存期間37年の評価割合)≒438万円
年金累計額と相続税評価額との差額 2.190万円−438万円=1,752万円
∴ 被相続人の相続税評価額を1,752万円圧縮することができた。
最大減額の事例を示しましたが、この24条の定期金給付契約の評価減は、生命
保険を使った相続税節税策の決定版ともいえます。しかし税制ができた当時の金利
水準は8%前後と高く、この数値で計算されている減額割合は今の低金利時代にそ
ぐわないという意見が、国税庁からの税制改正意見としてあると聞きます。相続対
策については相続開始がかなり先になることも考えられ、税法が改正されるリスク
は少なからずあると思います。また契約条件によっては24条の適用不可というこ
とも考えられますので、細心の注意が必要です。
24条を使った節税策にあっては、慎重な判断をお願いいたします。
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