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The Limit
of The Sky No.122 Page 3
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税 務
災害減免法と雑損控除
被災時の税金面救済制度
税経管理第2部 部長 並木康昌
温暖化の影響でしょうか、記録的な降水量の大雨が多いです。短時間の集中豪雨
は各地で大きな被害をもたらしました。昨年は大きな地震もあり災害を身近に感じ
ます。メディアで取り上げられなくなるとつい忘れてしまいがちですが、被災され
た方が元の生活を取り戻すまでに、かなりの労力と時間がかかることを思うと同情
を禁じえません。国や地方では復興の為の貸付制度を設けているようですが、税金
面でも風水害・震災・落雷などの自然災害に見まわれた時や火災・盗難などにより
損害をこうむった時に所得税が軽減される制度があります。
確定申告を行うことで税金面での救済を受けることができる「災害減免法による
税額控除」と「所得税法の雑損控除」です。申告時にどちらか有利な方を選択でき
ます。違いを整理してみましょう。
損失の発生原因 |
災害減免法では災害のみが対象となりますが、雑損控除は、災害のほか人為的な
災害も対象になります。例えば、盗難・空き巣・ひったくり・火災など、変わった
ところでは、偽造キャッシュカード不正引出、耐震強度偽装問題の対象マンション
の被害なども対象になります。最近急増している振込め詐欺は、被害者本人の意思
が介入しているので対象外になります。
対象となる資産の範囲 |
災害減免法では、住宅または家財のみが対象で、損害額が住宅や家財の価額の2
分の1以上という条件がついています。雑損控除は、「生活に通常必要な資産」に限
られ、1個・1組が30万円を超える貴金属・書画・骨董や別荘、事業用の固定資産
等は対象外です。
控除額 |
災害減免法は、税額を直接減少させる税額控除です。所得額により控除できる金
額が違います。雑損控除は、所得額を減少させる所得控除です。計算方法が2種類
あり有利なほうを選択できます。
災害減免法 | 所得税法−雑損控除 | |
損失の発生原因 | 災害による損失に限る | 災害、盗難、横領等による損失 |
対象となる資産 の範囲 |
住宅または家財 ただし、損害額が住宅または 家財の2分の1以上であること |
生活に通常必要な資産に限る |
控除額または 所得税の軽減額 |
税額控除 所得額500万円以下 所得税全額免除 所得額500万円超750万円以下 所得税を2分の1軽減 所得額750万円超1000万円以下 所得税を4分の1軽減 1000万円超 対象外 |
所得額控除 いずれか多いほうが控除額 @(損害額−保険金等補てん額) マイナス所得金額の10分の1 A(損害額−保険金等補てん額) のうち災害関連支出マイナス5万円 |
参考事項 | 原則として災害を受けた年の 所得金額が1000万円以下の 人に限る。 |
損失額が大きく、その年の所得金額 から控除しきれない場合は、 翌年以降3年間に繰越して各年の 所得金額から控除できる。 |
その他 |
所得税の軽減のほかに、予定納税の減額、源泉徴収の徴収猶予、納税の猶予、申
告期限の延長などを受けることができます。
災害に遭うと、細かいところに気が回らず、税金のことなど考えられないことと
思います。親類、知人、友人等の関係者で不幸にも被災された方がいらっしゃいま
したら、これらの制度について是非お伝えください。
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