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税  務


          
災害減免法と雑損控除

            被災時の税金面救済制度


                      税経管理第2部 部長 並木康昌


 温暖化の影響でしょうか、記録的な降水量の大雨が多いです。短時間の集中豪雨

は各地で大きな被害をもたらしました。昨年は大きな地震もあり災害を身近に感じ

ます。メディアで取り上げられなくなるとつい忘れてしまいがちですが、被災され

た方が元の生活を取り戻すまでに、かなりの労力と時間がかかることを思うと同情

を禁じえません。国や地方では復興の為の貸付制度を設けているようですが、税金

面でも風水害・震災・落雷などの自然災害に見まわれた時や火災・盗難などにより

損害をこうむった時に所得税が軽減される制度があります。

 確定申告を行うことで税金面での救済を受けることができる「災害減免法による

税額控除」と「所得税法の雑損控除」です。申告時にどちらか有利な方を選択でき

ます。違いを整理してみましょう。

損失の発生原因

 災害減免法では災害のみが対象となりますが、雑損控除は、災害のほか人為的な

災害も対象になります。例えば、盗難・空き巣・ひったくり・火災など、変わった

ところでは、偽造キャッシュカード不正引出、耐震強度偽装問題の対象マンション

の被害なども対象になります。最近急増している振込め詐欺は、被害者本人の意思

が介入しているので対象外になります。

対象となる資産の範囲

 災害減免法では、住宅または家財のみが対象で、損害額が住宅や家財の価額の2

分の1以上という条件がついています。雑損控除は、「生活に通常必要な資産」に限

られ、1個・1組が30万円を超える貴金属・書画・骨董や別荘、事業用の固定資産

等は対象外です。

控除額

 災害減免法は、税額を直接減少させる税額控除です。所得額により控除できる金

額が違います。雑損控除は、所得額を減少させる所得控除です。計算方法が2種類

あり有利なほうを選択できます。

災害減免法 所得税法−雑損控除
損失の発生原因 災害による損失に限る 災害、盗難、横領等による損失
対象となる資産
の範囲
住宅または家財
ただし、損害額が住宅または
家財の2分の1以上であること
生活に通常必要な資産に限る
控除額または
所得税の軽減額
税額控除

所得額500万円以下
所得税全額免除

所得額500万円超750万円以下
所得税を2分の1軽減

所得額750万円超1000万円以下
所得税を4分の1軽減

1000万円超 対象外
所得額控除

いずれか多いほうが控除額

@(損害額−保険金等補てん額)
マイナス所得金額の10分の1

A(損害額−保険金等補てん額)
のうち災害関連支出マイナス5万円
参考事項 原則として災害を受けた年の
所得金額が1000万円以下
人に限る。
損失額が大きく、その年の所得金額
から控除しきれない場合は、
翌年以降3年間に繰越して各年の
所得金額から控除できる。

その他

 所得税の軽減のほかに、予定納税の減額、源泉徴収の徴収猶予、納税の猶予、申

告期限の延長などを受けることができます。


 災害に遭うと、細かいところに気が回らず、税金のことなど考えられないことと

思います。親類、知人、友人等の関係者で不幸にも被災された方がいらっしゃいま

したら、これらの制度について是非お伝えください。



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