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税 務


       
大恐慌時代を生き抜くための税務対策


                   税経管理第4部 部長 夏目毅雄


 今日の企業を取り巻く環境は、難しい経営判断を決断しなければならない

状況に直面しています。その中のひとつに「不良債権」の問題があります。

10月に東京商工リサーチから発表された「全国企業倒産状況」では前年同

月比で倒産件数が34%増加しています。

 企業は不良債権とならないようあらゆる対策や最新の情報収集に努めます。

しかし、やむを得ず不良債権化した場合には、損失として処理するのですが、

ここで税務上注意しなければならないことがあります。そこで今回は貸倒処

理するうえでの税務上のポイントを説明します。


《不良債権の整理》

 法人の金銭債権について、次のような事実が生じた場合には、貸倒損失と

して損金に算入されます。


 1.法律上の貸倒れ(法基通9-6-1)

  (1)会社更生法、金融機関等の更生手続の特例等に関する法律、会社

    法、民事再生法の規定により切り捨てられる金額

  (2)法令の規定による整理手続によらない債権者集会の協議決定及び

    行政機関や金融機関などの斡旋による協議で、合理的な基準によっ

    て切り捨てられる金額

  (3)債務者の債務超過の状態が相当期間継続し、その金銭債権の弁済

    を受けることができない場合に、その債務者に対して、書面で明ら

    かにした債務免除額

  ★ここでのポイント★

   ・損金経理の有無にかかわらず損金として認められる。

   ・「相当期間継続」とは、3年〜5年続くことをいう。

   ・「書面」は公正証書を要求していないので、内容証明郵便でよい。


 2.事実上の貸倒れ(法基通9-6-2)

   債務者の資産状況、支払能力等からその全額が回収できないことが明

  らかになった場合は、その明らかになった事業年度において貸倒れとし

  て損金経理することができます。ただし、担保物があるときは、その担

  保物を処分した後でなければ損金経理はできません。

   なお、保証債務は履行した後でなければ貸倒れの対象となりません。

  ★ここでのポイント★

   ・金銭債権の「全額」が回収不能であること。

   ・会社の経理上、経費として計上すること。


 3.形式上の貸倒れ(法基通9-6-3)

   次に掲げる事実が発生した場合には、その債務者に対する売掛債権(貸

  付金などを除く)について、その売掛債権から備忘価額を控除した残額

  を貸倒れとして損金経理をすることができます。

  (1)継続的な取引を行っていた債務者の資産状況、支払能力等が悪化

    したため、その債務者との取引を停止した場合において、その取引

    停止の時と最後の弁済の時などのうち最も遅い時から1年以上経過したとき

   (2)同一地域の債務者に対する売掛債権の総額が取立費用より少なく

    支払いを督促しても弁済がない場合

  ★ここでのポイント★

   ・売掛債権に限定される。貸付金は含まれない。

   ・備忘価額を控除して、貸倒れとして損金経理することが必要。

・継続的な取引を行っていた債務者に対して適用がある。


 4.貸倒引当金の検討

  貸倒損失の要件に該当しない場合でも、引当金の検討をしましょう。


 以上のように税務上貸倒れとして処理する場合には、さまざまな条件があ

ります。遅すぎても、早すぎても認められません。適切な時期に適切な処理

をする必要があります。

 いずれにしても債権の回収には十分注意していきましょう。


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