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The Limit
of The Sky No.115 Page 4
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サ ロ ン
ピアノ再出発
税経管理第2部 加瀬 裕美
少し遠ざかっていたピアノを始めました。
趣味として自由に弾いてはいたのですが、自己流でもあり、一向に
上達もしないままでした。もう一度、先生について厳しく習ってみた
いと思っていた矢先、知人からよい先生を紹介してもらう機会に恵ま
れ、思い切ってまた始めてみることにしました。先生は、東京芸大を
卒業され、何年か先輩にはあのフジコ・ヘミングがいるという、私か
らしたらそれこそ神様のような方です。ピアノが上達するかしないか
の七割は指導者の責任だからと、もたついている私の演奏を一生懸命
に聴いてくれ、申し訳ないくらいていねいに教えてくれます。
大人になってからの習い事は、子供の時と違って嫌々ではなく、本
当に望んで習っているので、いろいろなことに気がつきます。レッス
ンでいつも言われる言葉は、「あなたの演奏は落ち着きがないわね、い
つも急いでる」です。急いでしまうのは仕事柄(?)なのでしょうか・・・。
しかし、あの落ち着いたゆとりのある演奏をする先生でも、日常のテ
ンポではないゆったりとした間を持つために、茶の湯に通っていらっ
しゃるとか。曰く、「私だってせかせかした性格だから、いつもお茶の
先生に、またお台所仕事になっていますよ、と叱られるのよ」と。
毎日が慌しく過ぎていく中で、気持ちにゆとりをもつこと、ゆった
りとした間を感じることが如何に大切かがわかります。
手をピシャリと叩かれ、「今の演奏はまるで夢遊病者のようで地に足
が着いていない、もっと余裕をもって演奏しなさい」と叱られながら、
冷汗たっぷりの厳しいレッスンなのですが、なぜか終った後はとても
すがすがしく、「音楽っていいな」と心から思えるのです。
今はとても素直に、子供の頃ピアノに親しむきっかけを作ってくれ
た親に感謝するとともに、ピアノと音楽を一生続けようという思いが
あふれています。