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経 営
                     変化への対応

           「チーズはどこへ消えた?」


                      税経管理第2部 部長 木樽康昌 


 先日、ある方から「チーズはどこへ消えた?」(原題、Who Moved My

Cheese?  スペンサージョンソン著)という本をお借りしました。全ページが100

ページを切る本なのですが、状況の急激な変化にいかに対応すべきかを説く示唆に

富んだ内容が、シンプルにまとまっていて良い本でした。2001年のベストセラー本

で、IBM、アップル・コンピュータ、メルセデス・ベンツ等、トップ企業が次々

と社員教育に採用したということです。

 この本は3つの部分からなっています。

 まず最初は「ある集まり」の場面です。かつてクラスメートだった人たちがクラ

ス会で、それぞれ自分の生活におきた「変化」をどう受けとめているかを話してい

ます。ある物語を知って変化に対する見方が変わり成功を収めた一人がその物語を
語り始めます。

 2番目は「チーズはどこへ消えた?」の中心部で寓話として物語です。迷路の中

に住む2匹のねずみのスニッフとスカリー、2人の小人のヘムとホーが登場し、こ

の迷路の中で「チーズ」を探します。(ここでいう「チーズ」とは私たちが人生で求

めるもの、仕事・家族・財産・健康・精神的な安定などを象徴し、「迷路」は、会社・

地域社会・家庭などの象徴です)ネズミのスニッフとスカリーは、単純な頭脳しか

もたないが、優れた本能をもち、単純で非効率的な方法で試行錯誤を繰り返し、チ

ーズを探しています。一方、小人のヘムとホーは、複雑な頭脳をもち、過去の経験

から得た教訓と思考による方法でチーズを探します。あるとき2匹と2人は自分た

ちの特別なチーズをそれぞれの方法で発見し、幸せの日々を過ごします。日々満ち

足りた環境の中、小人たちはうまくいったことを喜び自分たちは安泰だと思い慢心

します。が、ネズミたちの日課はチーズが見つかっていない時と変わりませんでし

た。しばらくするとそのチーズが忽然と姿を消します。ここから2匹と2人のこの

変化に対する対応が分かれます。


スニッフとスカリー(2匹のネズミ)

 *毎日、迷路の周りと見つけたチーズを点検し、だんだん少なくなってきてい

 るのに気がついており、今のチーズがなくなることを本能的に感じていた

 *詳しく分析はしなかったがすぐにチーズを探しに迷路に走り出した

 *状況が変わったのだから自分たちも変わることにした

 *新しいチーズを見つけることしか考えなかった


ヘムとホー(2人の小人)

 *満ち足りた環境にすっかり満足し、チーズは自分たちのものだと思った

 *毎日の小さな変化に注意を払わなかったのでチーズがなくなったのは青天の

  霹靂だった---いつまでもチーズがあるものと思い込んでいた

 *「チーズはどこへ消えた?」「こんなことがあっていいわけがない!」

 *事態が信じられなく、ひどい目にあわせられたと思い、憂鬱になった

 *チーズがなくなった真相を分析し、この事態に対する権利を主張することを

  考え、チーズが戻ってくることを期待する


 すぐに新しい方向に走り出した2匹のネズミは、まもなく新しいチーズを見つけ

ることに成功します。小人のヘムは、現状に固執し変化を求めず、もう一度迷路に

入るという冒険を最後まで拒否します。一方ホーは、最初は現実を直視しないので

すが、不安と失望から現実を再度見直し、新しい環境に変化することの恐怖を克服

して、もう一度最初から迷路に入ることを決断します。新しい方向へ踏み出したこ

とにより恐怖感から開放され、なかなか良い結果が得られないまでも、やがて得ら

れるであろうチーズを詳細に心の中にイメージします。そして変化によって事態が

悪化するイメージを事態が好転する良いイメージに変換することに成功し、チャレ

ンジすることを純粋に楽しめるようになります。やがてホーは、自分の思い描いた

チーズに巡り合い、よい結末を迎えます。ホーは自分が学んだことの要点をチーズ

の壁に書きます。


   変化はおきる---チーズは常にもっていかれ、消える

   変化を予期せよ---チーズが消えることに備えよ

   変化を探知せよ---つねにチーズのにおいをかいでいれば古くなったのに気づ

           く

   変化にすばやく順応せよ---古いチーズを早くあきらめればそれだけ早く新し

               いチーズを楽しむことができる

   変わろう---チーズと一緒に前進しよう

   変化を楽しもう---冒険を十分に味わい、新しいチーズの味を楽しもう

   進んですばやく変わり再びそれを楽しもう---チーズは常に持っていかれる


 3番目は「ディスカッション」の場面で、クラスメートたちがこの物語をどう

感じたか、自分の仕事や生活にどう活かすのか話し合う場面です。登場する4つの

個性は、「単純さ」「複雑さ」を象徴しており、登場人物の名前は、「スニッフ」=に

おいをかぐ、〜をかぎつける、「スカリー」=急いで行く、すばやく動く、「ヘム」

=閉じ込める、取り囲む、「ホー」=口ごもる、笑う、という意味を持っています。

 最後にまとめとして、

 登場人物がその時々にチーズに書いた格言

 *チーズを手に入れれば幸せになれる

 *自分のチーズが大事であればあるほどそれにしがみつきたくなる

 *変わらなければ破滅することになる

 *もし恐怖がなかったら何をするだろう?

 *常にチーズのにおいをかいで見ること、そうすれば古くなったのに気がつく

 *新しい方向に進めば新しいチーズが見つかる

 *恐怖を乗り越えれば楽な気持ちになる

 *まだ新しいチーズが見つかっていなくともそのチーズを楽しんでいる自分を

  想像すればそれが実現する

 *古いチーズに見切りをつければそれだけ新しいチーズが見つかる

 *チーズがないままでいるより迷路に出て探したほうが安全だ

 *従来どおりの考え方をしていては新しいチーズは見つからない

 *新しいチーズをみつけることができそれを楽しむことができるとわかれば

  人は進路を変える

 *早い時期に小さな変化に気づけばやがて訪れる大きな変化にうまく順応できる

 *チーズと一緒に前進しそれを楽しもう!


 現代は、情報や物の流れのスピードが速く、物事がめまぐるしく変化しています。

コンピュータを取り巻く環境の変化、インターネットや電子メールの発達、物流や

移動手段の進歩がスピード化の大きな要因です。このスピード感のある膨大な量の

情報が、めまぐるしい諸々の変化を起こしているのだと思います。そういう時代に

おいて、特に経営をされている方々にとって、めまぐるしい変化にどのように対応

していくか?というのは大きなテーマになっていることと思います。変化は吉にも

凶にもなります。まずは変化に対応する姿勢的な部分、その心の在りようを確立し、

勇気ある決断をされること、そして変化にとんだ時代を乗りきって成功を収められ

ることを祈念いたします。



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