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税 務

       新会社法における種類株式とその活用


                  税経管理第8部 部長 小島 政文


1 概要

  2006年5月に施行された新会社法の中で「種類株式」という株式の

 取扱が定められました。

 
(1) 種類株式とは

  会社は、剰余金の配当や残余財産の分配、株主総会での議決権、譲渡制

 限の有無、役員の先任権などについて、その内容の異なる株式を定款に定

 めて登記することにより、様々な株式を発行することが出来るようになり

 ました。これらの内容の異なる株式の総称を種類株式といいます。


2 種類株式の活用

(1) 新しい会社法の下では色々な種類株式を発行することができます。

 (図−1参照)全部で9つの項目について、その内容に違いをつけること

 ができますし、それぞれをミックスすることができますから、色々な組み

 合わせが考えられます。会社の目的や現在状況、将来のあるべき方向を見

 据えたその組み合わせは無限大です。種類株式をうまく活用することによ

 り、会社独自の事業承継にも利用できると思います。


(2) 今回は図―1の3番目の項目についてご説明致します。

 @「議決権制限株式」とありますが、その株式を持っている株主の議決権

 について、制限がついているのです。こういう項目については議決権が行

 使できないとか、あるいはこういう項目についてのみ議決権が行使できる

 とか、項目別に制限することもできますし、ある一定の事由が生じたとき

 に議決権が無くなります、ということでもよいのです。

 A一時、敵対的買収防衛策ということが話題になりましたが、例えば、あ

 らかじめ株式シェアが20%以上になったら議決権が無くなりますよとい

 う条件がついた株式を発行しておくのです。これもまさに議決権制限株式

 です。また、この株式については全く議決権がありませんと、あっさり決

 めてしまう、それも議決権制限株式となるわけです。全く議決権のない株

 式のことを、別名、無議決権株などと言います。

 B株式譲渡制限会社(その発行するすべての株式について譲渡制限規定を

 設けている会社)は、議決権制限株式を発行済株式総数の二分の一を超え

 て発行できることになりました。例えば、発行済株式総数が1000株です

 と、そのうち1株だけが普通株式(まともに議決権がある株式)残りの999

 株については、無議決権株式(全く議決権がない株式)、ということが可

 能であるということです。

  ということは、その普通株式1株だけを持っていれば、議決権について

 は100%行使できることとなり、あとの株主は、単に配当をもらうだけと

 いう話になります。

(3)このような種類株式をいかにうまく活用するかが今後の会社運営のキー

 ポイントになると思われます。

※新会社法における種類株式(会社法108@)       図−1

内容の異なる事項 呼称等 備  考
剰余金の配当 配当優先株・配当劣後株等 柔軟な配当が可能となる。
残余財産の分配 優先株・劣後株等 柔軟な残余財産の分配が可能。
議決権を行使できる事項に制限や行使の条件がある 議決権制限株式  (無議決権株式) 無議決権株を発行済株式総数の1/2超発行できる。公開会社は、発行済株式総数の1/2以下。
譲渡について会社の承認を要する 譲渡制限株式 商法時代は、発行済株式の全部の株式を譲渡制限株式とするしか方法はなかったが、会社法になってその一部を譲渡制限株式とすることも認められた。
株主総会・取締役会の決議に対する拒否権がある 拒否権付株式   黄金株等 株主総会の決議、もしくは取締役会の決議にプラスすることのいわゆる拒否権付株式を持っている株主だけの総会(種類株主総会)の承認が必要となる。
取締役・監査役の選任権がある 役員選任権付株式等 公開会社・委員会設置会社は、この内容を定めた種類株式は発行できない。
株主から会社に対してこの株式の取得を請求できる 取得請求権付株式 株主が当該株式会社に対して当該株式の取得を請求することが出来る。
一定の事由の発生を条件にこの株式を取得することができる 取得条項付株式 株式会社が一定の事由が生じたことを条件として当該株式を株主から取得することができる。
株主総会の決議によりこの株式の全部を取得できる 全部取得条項付種類株式 株式会社が株主総会の決議によってその全部の株式を取得できる。



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