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税 務
『移転価格税制』
税経管理第6部 部長 鈴木 正美
移転価格税制とは聞き慣れない言葉ですが、簡潔に紹介したいと思います。
〔概要〕
近年の企業活動の国際化により、外国に子会社や関係会社等(国外関連者)
を有する事例があります。
この場合に、それらの国外関連者との取引にあたり取引価格を操作(低額
販売や高額買入)し、利益を日本国内から海外に流出させることが出来てし
まいます。関連会社間の恣意的な所得移転を排除し、一定の基準に準拠した
取引価格(独立企業間価格)の設定により、国際間の適正な課税を図るため
に設けられた制度です。
所得を移転の問題点は、諸外国における税制は各種優遇措置や税率等が異
なり、この税制の違いを利用し国際的な節税や脱税が図れるということです。
なお、故意に所得移転を図らない時でも、取引価格が通常と異なる場合に
は、この制度の対象となりますので注意が必要です。
〔内容〕
1適用対象者
適用の対象となるのは、法人税の納税義務を負うすべての法人です(普
通法人、協同組合、公益法人の収益事業、人格なき社団の収益事業、日本
に支店を有する外国法人)、なお個人に対しては、この税制の適用はありま
せん。
2国外関連者
法人と次の関係にある外国法人。
@発行済株式等の50%以上を直接または間接に保有し又は保有される
関係
A同一の者により、それぞれの発行済み株式等の50%以上を直接又は間
接に保有される関係
B人事、取引、資金等の関係を通じ実質的に支配又は被支配にある関係
3適用対象取引
法人が国外関連者との間で資産の販売、資産の購入、役務の提供、そ
の他一定の取引(国外関連取引)が対象となります。
4みなし国外関連取引
法人が、非関連者を通じて行う国外関連者との一定の取引は、その法
人の国外関連取引とみなし、この規定が適用されます。
5独立企業間価格
次に掲げるいずれかの方法により算定した金額を言います。
@ 独立価格比準法
特殊な関係にない売り手と買い手が、国外関連取引に関わる棚卸資
産と同種の棚卸資産について、その関連取引と取引段階、取引数量そ
の他の状況が同様であった取引の対価に相当する金額をもって独立企
業間価格とする方法です。
A 再販売価格基準法
国外関連取引に関わる棚卸資産の買い手が、特殊関係のない者に対
してその棚卸資産を販売した対価の額(再販売価格)から通常の利潤
の額(再販売価格×通常の利益率)を控除した金額を独立企業間価格
とする方法です。通常の利益率とは売上総利益の利益率をいい個別取
引の利益率ではなく、一定期間内の売上総利益率をさすと考えられま
す。
B 原価基準法
国外関連取引に関わる棚卸資産の売り手の購入、製造、その他の行
為による取得原価の額に通常の利潤の額(原価×通常の利益率)を加
算した金額をもって独立企業間価格とする方法です。
C その他の方法(利益分割法等)
上記の方法が用いることが出来ない場合に、上記に準拠する方法
これらの方法の適用については、優先順位は定められていません。
6事前確認制度
移転価格税制の適用となる企業は、採用しようとする独立企業間価格の
算定方法に関し、税務当局に申し出ます。税務当局はこれを検討し、合理
性に関して検証し、これに確認を与える方式が導入されています。この申
し出に当たっては、所定の添付資料が定められています。
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