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税 務
現物給与と所得税の源泉徴収
税経管理第10課 課長 伊藤 敬一
1 現物給与とは
役員や従業員に支給する役員報酬・給料・賞与は通常金銭にて支給されま
す。これとは別に、金銭以外の物や権利その他経済的な利益をもって支給さ
れることもあります。この金銭以外の物や権利その他経済的利益をまとめて
「現物給与」といいます。
2 現物給与の取扱
(1) 源泉徴収
所得税法上、各種の所得の収入金額には、金銭以外の物や権利その他経済
的利益も含まれることとされていますから、「現物給与」はそれを受けたと
きの額を給与等の収入金額に加えて所得税の源泉徴収の対象とされます。
したがって、「現物給与」を支給した場合、会社側は費用として経理処理し
たとしても、それを受けた従業員等の給与等にその額を加算して所得税の源
泉徴収をする必要があります。
(2) 課税上の取扱
現物給与といわれるものの中には、下記のようなものもあるため、これら
の現物給与については法令や取扱通達において、その特殊性に応じた課税上
の取扱いが定められています。なお、現物給与の取扱いについては、日本で
就労する外国人社員に支給されるものも原則として同様の取扱いとなります。
@ 職務の性質上欠くことのできないもので主として使用者側の業務遂行
上の必要から支給されるもの
A 換金性に欠けるもの又は困難なもの
B その評価が困難なもの
C 受給者側に物品などの選択の余地がないもの
D 政策上特別の配慮を要するもの
3 現物給与の具体例
(1) 通勤手当
交通機関の利用による運賃等は1ヶ月あたり100,000円まで非課税となり
ます。自動車等の交通用具の利用の場合はその通勤距離によって非課税限度
額が定められています。
(2) 商品等の値引販売
原則として、源泉所得税の課税対象となりますが、次の要件を全て満たし、
著しく多額でなければ課税されません。
@ 値引販売の価格が仕入価格以上で、かつ、通常販売価格のおおむね70
%以上であること。
A 役員、従業員の全部について値引率が一律、または全体として合理的
なバランスが保たれていること。
B 値引販売の数量が一般消費者として自己の家事への通常消費する程度
であること。
(3) 食事代
原則として、源泉所得税の課税対象となりますが、次の要件を全て満たせ
ば課税されません。
@ 食事代の半額以上を従業員から徴収すること。
A 会社の負担額が月額3,500円以下であること。
なお、残業等をした人(その人の通常の勤務時間外における勤務に限る)
に、食事そのものを支給する場合の食事代については、源泉所得税の課税対
象となりません。ただし、残業食事代として、現金等で支給する場合は、源
泉所得税の課税対象となります。
(4) 社宅の家賃
その貸付が役員に対するものか、従業員に対するものかで取扱が違ってき
ます。また、その社宅が自己所有であるか、他者所有(借り上げ社宅)であ
るかによっても取扱が違います。原則として、一定の方法により計算した金
額(賃料)と実際に徴収した金額の差額が「現物給与」として源泉所得税の
課税対象となります。
ただし、その貸付が従業員に対するものである場合には、一定の方法によ
り計算した金額(賃料)の50%相当額以上を実際に徴収していれば経済的
利益は無かったものとして、源泉所得税の課税対象になりません。
代表的なものを挙げてみましたが、この他にも色々なケースがあります。
それに応じて、法令や取扱通達により課税上の取扱が定められています。詳
細は各担当者にご相談下さい。
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