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5 ・6      −日本の今後のシナリオ−

May・June イラクでの日本人人質、3名と2名が無事解放され、日本中が

ほっとしました。日本の若者の、戦火で苦しむイラクの人たちに役立とうとの命

がけのボランティア行為は尊いです。世界に日本人の人道主義のメッセージを送

りました。彼らの行為による日本のイメージアップ効果は、今回かかった費用を

超えています。日本国内での彼らへのバッシングは、恥ずかしい行為です。


 解放された市民団体メンバーの元自衛隊員渡辺氏のホームページ

http://www.jca.apc.org/gi-heisi/page017.htmlに、拉致前の現地からの報告で、

「自衛隊がサマワに駐屯している理由は、占領軍物資の動脈的輸送路でもある国

道8号線の安全確保と修復のためです。それが彼らの主な任務であり、市内の『復

興支援』などは、そのための副次的な仕事でしかないことが、既に住民の目にも

明らかになっています」との記述がありました。アメリカの戦略に組み込まれて

いる日本が見えます。

 同時に解放されたジャーナリストの安田氏は、テレビのインタビューに答えて

「日本人の過去の歴史と銃を持ってなかったことが私を救った」と語っていまし

た。日本の被爆体験へのイラク人の見方、民間企業とイラク人との過去の良好な

関係が幸いしたようです。

彼らの話からは、イラクでの戦闘が、米国とフセイン政権残党やテロリストで

はなく、一般のイラク住民と米国との戦いに変化してきたように見えます。米国

は、イラクへの主権委譲が6月には不可能とみると、今まで軽んじていた国連に

丸投げしました。その陰で、連合暫定当局から業務を引き継ぐ米イラク大使館は、

職員3千人を超す世界最大の在外公館となります。米国が国連を盾に、イラクの

実質支配を考えていることが伺えます。こういったやり方では、今後も米国排除

のための抗戦が続くのは必須です。民族自決が歴史の流れです。



 日本を散り巻く状況は、台中関係のリスク、北朝鮮の脅威、と安全保障の問題

は避けて通れません。日本の安全保障の基本に日米安保条約があります。

 前駐レバノン特命全権大使天木氏が、『さらば外務省』(講談社)で、日本外交

の基本方針の浅薄さ、ナイーブさを批判しています。日本が実際に軍事攻撃され

た場合、米国だよりの防衛についての外務省の考えは、外務官僚栗山氏の冊子に

要約されている。「米国は日本と共通の価値観を有する信頼できる唯一の国であ

る。そのような国に対して、助けてくれないなどと疑念を抱くこと自体、誤りで

あり、米国に対して失礼である」、これが米国盲従の外務省の原点であると。



 戦後約60年は、憲法9条と米国追随外交で日本は繁栄を勝ち取り、平和にや

ってこられました。冒険主義のブッシュ政権に従い、憲法9条を中途半端に破っ

てしまった今後はどうなのでしょう。

 前提が変わっても、国益のための国策を自ら思考しない、国際戦略を持たない

国に、よい運命は訪れず、そういった国は他国の尊敬も得られないと思います。

強運の小泉首相は、米国の自浄作用に期待しているのでしょうか。 2004.4.21


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