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5 ・6        − ブッシュの平和 −

May・June  10対1のコールドゲームで、イラク戦争が終結しつつありま

す。米国の圧倒的な軍事力の前にフセイン政権は崩壊しました。テロの脅威を除

くというトーンから、イラクの人々に自由をといった論調に戦争の目的が変化し

ました。この流れで、大量破壊兵器は見つからないまま、戦後復興に関心は移っ

ています。


 制空権を取られ、経済封鎖の下、厳しい国連の武器査察を受けるイラクが、米

国の脅威とは常識では分かりません。武力攻撃で壊滅させられるほどのことを実

施していたとも思えません。イラクの武器はイラン革命の防波堤として、イラン

イラク戦争の折りにアメリカが与えたものが多く、その実態はとうに米国は把握

していたはずです。

 9.11のテロに始まり、アフガンのタリバン政権撃滅までは、アメリカの行

為は理解できるのですが、ここからバグダット攻撃、イラク政権転覆は飛躍が有

りすぎます。イラクの石油ねらいでは国際世論を味方に出来ません。


 この飛躍の謎を解く、高山帝京大教授の産経新聞コラムを見つけました。反実

仮想で「もし米国が侵攻せず、サダム政権が残ったら」と考えると、答えは見え

る。石油埋蔵量世界一位のサウジアラビアの未来が、今回のポイント。サウジの

ファハド国王は健康に問題があり、後継者のアブドラ皇太子はアラブ民族派で、

サダムとも仲が良く、親パレスチナ。国内情勢も、国民の不満が限界で、革命の

可能性も大。ファハド国王に事が起きれば、アブドラでも革命でもサウジとイラ

クは手を結び、石油埋蔵量世界一位と二位が反米で結束、シリア、イランがこれ

に乗りパレスチナも復活。こういったシナリオを避けるため、その時に反米の核

となるフセイン政権を排除する。

 いろいろと言われる、今回のイラク戦争の米国の狙いについて、一番説得力の

ある見解でした。


 テロ攻撃の危険がある場合には、攻撃される前に相手を潰すというブッシュ・

ドクトリン。マスコミの言うように、より一層の激しいテロを呼ぶのか、長期戦

の予想を覆した今回の戦争のように、予想に反してテロを根絶し、ブッシュの平

和で世界を覆うのか。

 千人を超えるイラク市民の戦争による犠牲者が、何のために死んだのか答える

責任がブッシュ大統領にはあります。


 無辜の一般市民が20万人以上亡くなった、日本への原爆投下に、未だに謝罪

しない国の大統領ではありますが。                2003.4.22


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