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7・8 −マイクロソフト分割―
July・August 米マイクロソフト社に対し、米独禁法違反でワシントン連邦地裁が
企業2分割命令を下しました。同社は直ちに連邦高裁に控訴したので、決着には
まだ時間が掛かりま
す。一消費者として、分割命令は歓迎すべきものです。
世界のPC(パソコン)の80%以上(1994年時点)で使われているO
S(基本ソフト)を供給する会社が、その上で動くアプリケーション(応用)ソ
フトを製作販売する弊害は随所に出ています。OSを握ることはその上で動くア
プリケーションのルールを左右できます。競合他社のアプリケーションが動かな
いようにOSの仕様を変更したり、OSの関連情報公開を遅らせ他社に先駆けて
アプリケーションを販売できます。マイクロソフト、ビル・ゲイツ氏は、公正さ
よりも支配を優先する体質のようで、ライバル企業から
の怨嗟の声が絶えません。
ネットスケープ社は独創的なブラウザーソフト(インターネット閲覧ソフト)
でネット世界を到来させました。同社を立ち上げたジム・クラーク氏の著書に、
模倣名人マイクロ ソフトのOS支配を利用した不公正なブラウザー販売戦略が詳
しいです。OSとブラウザ ーの抱き合わせ販売、ネットスケープをバンドルする
PCメーカーにはOSを供給しない等のやり方です。「俺は、ネットスケープが
販売しようとしているものは全てただでくれてやる。そして息の根を止めてや
る。」とのゲイツ氏の言葉にソフト世界支配への強い意
欲が出ています。
確かに、クラーク氏の言うようにマイクロソフトが新しくこの世に生み出し
た画期的製 品は少ないです。ウィンドウズはマック、エクセルはロータス123、
インターネットエクスプローラはネットスケープナビゲーションの模倣です。な
ぜそんな会社が時価総額世界1の企業に成長したのでしょうか。卓越した経営戦
略、特にその販売戦略です。土俵(OS)を押さえ、それを手段に自社のアプリ
ケーションを売り込みます。この行き着く先は、独占製品の価格上昇、ソフト関
連のイノベーティブな開発の途絶えでしょう。OSの価格を見ると、DOSの5
ドルからウィンドウズの125ドルまで実に25倍も値上がりして
います。
日本のすぐれたOS、トロンを1984 年に開発した東京大学の坂村健博士は
「OSは公共財だから当然無償で公開する」との姿勢を貫いています。開発時点
ではDOS以上のOSであったのに、スーパー301条を盾にマイクロソフトに
圧力をかけられた日本のPCメーカーが自社PCへのトロン搭載を断念したとの
話を聞きました。
マイクロソフト及びゲイツ氏は歴史に名を残すでしょうが、その姿勢からプ
ラスのものだけではなさそうです。また、ネット社会の到来でインターフェイス
としてのPCにも陰りが見え、マイクソフトの凋落が始まったとも言われていま
す。
「ビル、もう充分じゃないか。人類の進歩のために、OS部門と応用ソフト
部門を切り
離してフェアーに競争しようぜ。」
米最高裁の最終判決が注目されます。
f 2000.6.15