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3・4 −孫氏の兵法(ソフトバンクの経営戦略)−

 March・April ソフトバンクの株価が20万円に迫り、時価18兆円、

株式時価総額でトヨタを抜き日本で第3位になりました。石原知事が


大手銀行をターゲットに、事業税の外形標準課税導入を表明しました。

 今年になってから、インパクトを感じた事柄です。



 ソフトバンクを本業のソフト卸業として見ると、利益率、成長率、

将来性からも平凡で魅力はありません。また連結利益も2000年3

月期は90億円の赤字予想です。持株会社となったソフトバンクを、

投資ファンドとして見ないと、この会社の本質を捉えられません。

 彼のイノベーションは、新たな商品でも技術でも、サービスでもあ

ません。経営手法そのものがイノベーティブなのです。



 孫氏は自社の使命を情報産業のインフラと捉え、その関連業種に投

資してきました。展示会のコムデックスや、出版のジフ・デービスの

買収まではこの路線です。E*トレードの設立あたりから方針が変わ

ったように見受けます。最近は「インターネット財閥」を目指してい

ると言っています。自社で主催するコムデックス等のIT展示会を通

して、将来性のあるネット企業をいち早く発見し投資する。時流をネ

ットと読み、全てをネットに集中する。1企業ではなく、群としての

組織体を目指しています。日債銀買収、世銀系の国際金融公社との合

弁会社(SBEM)の設立もこの路線から出てきます。両方とも、新

興ネット企業への資金供給が目的で、最終的には投資先の公開を狙っ

ています。



 孫氏以上にネット関連企業の玉石を見分ける能力のある投資家は少

ないです。ソフトバンクの投資したネット企業では、ヤフーがもっと

も成功しましたが、今後も続々と新規公開してきます。彼の肝入りで

始まった、ナスダック・ジャパン市場もこの6月に立ち上がります。

関連企業の公開にますます拍車がかかるでしょう。そのキャピタルゲ

インはすごい額です。市場は今後のソフトバンクのキャピタルゲイン

を予測して、19万円台の株価と評価したのです。将来は40万円と

いうアナリストレポートもあるようです。



 孫氏関連の本を何冊か読んで、その経歴、哲学、経営戦略をみると、

そのスケールの大きさに感心します。また、正道を歩み、信義則を大

事にする面は好感が持てます。孫氏の、交渉相手に得をさせて味方に

し、その後自分も得をするという考えなら成功も永続するでしょう。

もし彼がいなかったら、日本のIT関連事業はアメリカに大幅に遅

れたことと思います。



 今日本で一番エキサイティングな日々を孫氏は送っているものと思

います。ほんとに毎日面白いでしょうね。 
    f 2000.2.21 

 


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