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「働き方改革」の概要

税経管理第5部 部長 山内

 「働き方改革」は、働く方々が個々の事情に応じた多様で柔軟な働き方を、自分で選択できるようにするための改革です。これは重要政策のひとつに位置づけられ、多様な働き方を可能にする社会を目指しています。
 日本の人口は2008年をピークに減少に転じており、将来労働力不足となります。この労働力不足を解消させるために働き手を増やし、出生率を上昇させて労働生産性を向上させる必要があります。これを実施させようとする政策が「働き方改革」です。この内容について、厚生労働省から配布されているパンフレット内容を引用して概要をお知らせします。ポイントが2つあります。

ポイント1 労働時間法制の見直し

 働き過ぎを防ぎながら、「ワーク・ライフ・バランス」と「多様で柔軟な働き方」の実現を目的としています。
 施行期日は2019年4月1日ですが、中小企業の場合、残業時間の特例適用が2020年4月1日、割増賃金率引き上げは2023年4月1日となります。

【見直しの内容】

(1)残業時間の上限を規制します。
残業時間の上限を、原則として月45時間・年360時間とし、臨時で特別な事情がある場合でも年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)、複数月平均80時間(休日労働を含む)が上限となります。
ただし、この規制には適用を猶予する事業・業務があります。
・施工後5年間猶予:自動車運転の業務・建設事業・医師・鹿児島県沖縄県の砂糖製造業
・適用除外:新技術や新商品等の研究開発業務(一定の措置を要します)

(2)「勤務間インターバル」制度の導入を促します。
勤務時間インターバルとは:
1日の勤務終了後、翌日の出社までの間に、一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保する仕組みです。

(3)1人1年あたり5日間の年次有給休暇の取得を、企業に義務付けます。
労働者が自ら申し出て取得していた年次有給休暇を、使用者が労働者の希望を聴き、希望を踏まえて時季を指定し、年5日以上の年次有給休暇を取得してもらうこととします。

(4)月60時間超の残業は、割増賃金率を引き上げます。
現在、月60時間超の残業にかかる割増賃金率(大企業50%、中小企業25%)を、大企業・中小企業ともに50%に引き上げます。

(5)労働時間状況の客観的把握を、企業に義務付けます。
健康管理の観点から、裁量労働制が適用される人や管理監督者も含め、すべての人の労働時間の状況が客観的な方法その他適切な方法で把握されるよう法律で義務付けられます。

(6)「フレックスタイム制」制度を拡充します。
現在1ヶ月単位で行っていました清算期間を3ヶ月に拡大し、月単位清算だと発生していた割増賃金や欠勤扱い等を無くし、生活上のニーズに合わせた労働時間で働くことが出来るようになります。

(7)「高度プロフェッショナル制度」を新設します。
「高度プロフェッショナル制度」とは:
高度の専門的知識等を有し、職務の範囲が明確で一定の年収要件を満たす労働者を対象として、労使委員会の決議及び労働者本人の同意を前提として、年間104日以上の休日確保措置や健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置等を講ずることにより、労働基準法に定められた労働時間、休憩、休日及び深夜の割増賃金に関する規定を適用しない制度です。

その他、「産業医・産業保健機能」の強化等が行われます。

ポイント2 雇用形態に関わらない公正な待遇の確保

 同一企業内における正社員と非正規社員の間の不合理な待遇の差をなくし、どのような雇用形態を選択しても待遇に納得して働き続けられるようにすることで、多様で柔軟な働き方を「選択できる」ようにします。

【見直しの内容】

(1)不合理な待遇差の禁止
同一企業内において、正社員と非正規社員の間で、基本給や賞与などあらゆる待遇について不合理な待遇差を設けることが禁止されます。
裁判の際に判断基準となる「均衡待遇規定」「均等待遇規定」を法律に整備します。
① パートタイム労働者・有期雇用労働者
・均衡待遇規定の個々の待遇ごとに事情を考慮して判断されるべき旨を明確化します。
・均等待遇規定に新たに有期雇用労働者を対象とします。
・ガイドライン(指針)を策定します。
② 派遣労働者
・下記のいずれかを確保することを義務化します。
1.派遣先の労働者との均等・均衡待遇
2.一定の要件を満たす労使協定による待遇
・派遣先事業主に、派遣元事業主が上記1.2.を順守できるよう派遣料金の額の配慮義務を創設します。
・ガイドライン(指針)を策定します。

(2)労働者に対する、待遇に関する説明義務の強化
非正規社員は、正社員との待遇差の内容や理由について、事業主に対して説明を求めることができるようになります。

(3)行政による事業主への助言・指導等や裁判外紛争解決手続きの規定の整備
行政による助言・指導等や行政ADRの規定を整備します。
都道府県労働局において、無料・非公開の紛争解決手続きを行います。

以上、概要のみですがご紹介させていただきました。

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