0から1の発想術
大前研一著「0から1の発想術」(小学館)には発想する技術が詰まっています。いままでは、発想とは「ひらめき」的で、「術=技・技術・技法」とは違うというイメージをもっていました。冒頭部分に、発想力はトレーニングによって培われ、ケーススタディによって、アイデアを思いつきで口にするのではなく、基礎データを自分自身で時間をかけて集め、類似例を分析して現状を把握した上で、事実を積み上げて論理を構成すること。そしてさらに、その論理から自分の想像力を駆使して発想を飛躍させることである。とあります。まさしく論理的な発想法で「術」として書かれています。以下11の発想法基礎編をご紹介します。
1.SDF/戦略的自由度 -消費者のニーズを正しく捉えるために-
ユーザーの目的を満足させる方法をできるだけたくさん抽出し、その中から競争
相手が追随できない戦略的に優位になる方策を講じるということ。
①ユーザーの目的を考える
②目的を達成するいくつかの軸(方法)を設定する。
③軸に沿ってどんなことができるのかを検討する。
事例.シャープ衰退理由、コーヒーメーカーの例-ユーザーの真の目的は何か?
2.アービトラージ -情報格差こそビジネスチャンスになる-
異なる市場の価格差を利用して利益を得ること。
①情報格差でサヤを抜く。
②固定観念にとらわれず、外から物を見る。
事例.アジア通貨危機、ユニクロ-廉価販売でも収益が上がる仕組み
3.ニューコンビネーション -「組み合わせ」で新たな価値を提案する-
大半の発明は古くからあるものの新しいコンビネーション(結合)である。
①既存の2つのものを足してみる。
②足したことで、価格と価値がいかに変化するか?
事例.バス+船=水陸両用バス、個人の知識+個人の知識+・・・=ウィキペディア、携帯電話+クレジット=おサイフケータイ、携帯電話+ネットオークション=モバオク
4.固定費に対する貢献 -「稼働率向上」と「付加価値」の両立を-
固定費を削って利益を確保するのではなく、稼働率を上げて利益を確保する。
①固定費を遊ばせていては、利益は生まない。稼働時間を分析して混んでいない
時には値段を下げてでも稼働率を上げよ。
②稼働率を上げるには、ナローキャスティング(特定客への情報発信)、ポイントキャスティング(データ分析による絞込み広告)の方法で顧客を取り込む。
事例.成功したクリーニング店-空いている時間の活用、平日の観覧車にどう人を集めるか?
5.デジタル大陸時代の発想 -高速化した変化のスピードについていく方法-
デジタル大陸とは、バラバラの島だった単体のハードウェアがスマホやタブレット端末によりネットワーク上でつながり大きな塊=大陸になること。
①個々のデジタル機器がインターネットなどによりつながり「デジタルアイランド」が「デジタル大陸」になりつつあるということを認識する。
②その上で「5年後の生活・ライフスタイル」を想像し、そこからサービスや商品
に落とし込む。
事例.デジカメ商品短命の理由、5年後の生活の予測-全体像から考える
6.早送りの発想 -「兆し」をキャッチする重要性-
形になっていない「兆し=ヒント」をキャッチし自分のものとする。
①すべての「新しい概念」は、すでに存在していると考える。
②小さな「兆し」をとらえて高速の早送りを行い、来るべき未来を想像する。
事例.グーグルの企業買収先が意味する将来展望のヒント
7.空いているものを有効利用する発想 -Uber、Airbnbもこの発想から生まれた-
空いているものを探し活用の方法を考える。
①既存の思考にとらわれず、360度の視野で「空いているもの」を探す。
②「働いていない」「使われていない」「空いている」ものを有効活用する。その
ためにはネットを使ってユーザーとサービスを結びつける。
事例.Uber(空いている車の利用)、Airbnb(空いている部屋の利用)
8.中間地点の発想 -業界のスタンダードを捨てる-
同質のものの中間に何があるのかを問う。
①AとBという2つの方法がある場合、その中間地点でポジショニングすることで、差別化を測る。
②折衷案ではなく、大きな枠の中にスイートスポットを見つける。
事例.東京駅と新横浜駅の間ある新幹線品川駅の意味、ヒット商品=フィルム20枚撮りから24枚撮りへ
9.RTOCS/他人の立場に立つ発想 -もしあなたが○○だったらが思考を変える
思考の「思い込み」や「くせ」を排除し、その人の立場で考える発想法。
①他人の立場になって徹底的に考えることで、思考回路が劇的に変わる。
②RTOCSは4~5人でアイデアを出し合ってブレーンストーミングをしたほうが発想が広がる。
③行き詰まった場合には、上のレベルで考える。
事例.日本スキー場開発社長だったら、スキー、スノーボード人口が減少する中どんな手を打つのか?
10.すべてが意味することは何? -発想の飛躍が息の長いビジネスを生む-
個別の事象から全体を見る視線で「要するに何なのか?」を考え、発想の飛躍に
より結論を導き出す。
①A、B、Cと各論が出てきたときに、それらの意味することは何なのか?という質問をぶつける。
②この質問によって、A、B、C・・・各々の事象のすべてを意味している「X」を見つけ出す。
③A、B、C・・・という事実を足し合わせて結論を得るのではなく「X」へと発想を飛躍させ、そこから答えを導き出す。
事例.森全体を見る視線、少子化時代のビジネスチャンス-事象抽出→要するに何なのか?→全体が意味するもの→発想の飛躍による結論
11.構想 -あなたには何が見えるか?-
見えないものを見る力。自分の頭の中に描いた絵。イメージ。
①構想は、コンセプトやビジョンよりも1つ大きな概念である。
②構想は、「見えないものを」個人の頭の中で絵にすることである。事例.ディズニーランド(ワニのいる湿地からの構想)、臨海副都心(お台場の空き地からの構想)
ここに書かれている発想法は、身近な発想においても流れをつかむ為には大変
有効であると感じます。事例も豊富にあり経営を担う方にご一読をお勧めします。