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税  務

           いま話題の「ふるさと納税」

                        税経管理第4部 部長 夏目


 最近、テレビや雑誌等でよく見かける「ふるさと納税」という言葉。皆さんは聞

いたことがありますか。これは自治体に「寄附」をする制度のことです。

 平成20年中に寄附をした人は3万人程度でしたが、平成24年中は10万人を

超えました。なぜ3倍以上も寄附者が増加したのか、そこには「楽しい」カラクリ

が存在します。今回はこの制度について簡単にご説明します。


1.ふるさと納税の「概要」

 地方自治体(都道府県・市区町村)に対して寄附(ふるさと納税)をすると、寄

附金のうち2千円を超える部分について、一定の上限まで、原則として所得税・個

人住民税から全額が控除されます。

 ただし、寄附をした翌年に、確定申告を行う必要があります。


2.控除額の計算

 ふるさと納税による控除額の計算は、下記の通りとなります。

@ 所得税(*)

(寄附金−2千円)を所得控除(所得控除額×所得税率(0〜40.84%)が軽減)

A 個人住民税(基本控除額)(*)

(寄附金−2千円)×10%を税額控除

B 個人住民税(特例控除額)

(寄附金−2千円)×(100%−10%(基本分)−所得税率(0〜40.84%))

 【控除の流れ】 ⇒ @、Aにより控除できなかった寄附金額を、Bにより全額

           控除(所得割額の1割を限度)

* 対象となる寄附金額は、所得税は総所得金額の40%が限度であり、個人住民税

 (基本控除額)は総所得金額の30%が限度となります。


【具体的な控除イメージ】・・・年収700万円給与所得者が、3万円寄附した場合

適用下限額  所得税軽減   個人住民税(税額控除) 個人住民税(税額控除)

  2,000円   5,600円     2,800円(基本分)   19,600円(特例分)

       ←―――  所得税と合わせた控除額 28,000円  ―――→

3.錦織圭選手が食べたいといった「ノドグロ」が貰える

 ふるさと納税をすると、寄附した自治体から、寄附のお礼として特産品等が送ら

れてくるのです。この地方の特産品等をもらいたいために、ふるさと納税を活用し

ている人が結構増えているようです。これが「楽しい」カラクリです。

 昨年全米オープンテニスで準優勝した錦織圭選手が、帰国後の会見で、「ノドグロ

が食べたい」と発言していましたが、この「ノドグロ」を特産品として送ってくれ

る自治体もあります。また、高還元率の自治体もありますので、いろいろと調べて

みてください。

 決済方法についても、クレジットカード決済できる自治体もありますので、ポイ

ントをためている人にも使いやすくなっていると思います。

 何をいただこうかと調べる過程も、楽しいのかもしれませんね。


4.寄附先は「生まれ故郷」に限定されるの?

 生まれ故郷に限定することなく、どこの自治体でも寄附できます。

 また、複数の自治体へも寄附できます。


5.謝礼(特産品等)を送られた場合の課税関係に注意

 寄附した自治体から特産品等を受けた場合、個人の課税関係は「一時所得」に該

当しますので注意してください。

 一時所得では50万円の控除がありますので、他に何もない場合は問題ありませ

ん。保険の満期等があった場合には注意が必要です。


6.税制改正

 平成27年度税制改正により、住民税から控除できる特例控除額を住民税所得割

の2割(現行1割)に引上げます。また、確定申告をしない給与所得者に代わり、

寄附先の自治体が控除手続きを行う「ふるさと納税ワンストップ特例」(5つの自治

体までなら申告不要)を創設します。

 ただ税制改正大綱には、過熱気味の謝礼について「寄附控除の趣旨を踏まえた良

識ある対応を要請する」として、自治体に対して節度ある対応を要求しています。


 そもそもこの制度は特産品をもらうためにできた制度ではありません。ふるさと

を想う気持ちを納税という行為を通じて役立てて貰おうという趣旨です。寄附する

前に、もう一度じっくり考えてからでも遅くはありません。

 ご不明な点や控除額等を知りたい場合は、担当者にご連絡ください。




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