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税  務


      平成27年度税制改正のポイント(法人税・消費税編)


                         税経管理第9部 部長 佐藤


 平成27年1月14日に、平成27年度の税制改正の大綱が閣議決定されました。

 法人税及び消費税関連の改正内容をまとめます。

1 法人税関連 

 昨今の法人税改革は、大きな流れとしては、「課税ベースを拡大しつつ税率を引き

下げる」ことによ って、法人課税を成長志向型の構造に変えるものです。要点とし

ては次のようになります。

 ・「稼ぐ力」のある企業の税負担を軽減する(税率の引下げ)

 ・新たな投資や技術開発を奨励し、成長につなげる(投資・研究開発促進)

 ・得られた利益を賃上げや配当によって還元する(雇用促進・所得拡大税制)

 ・課税ベースを拡大することで財源(税収)は確保する(外形標準課税など)

 法人税関連の税制改正の具体的な項目としては、次の通りです(一部省略)。

※概ね増税となるものは【増】、納税者有利となるものは【減】と表示します。

(1)法人税の実効税率の引き下げ【減】

(2)欠損金繰越控除制度の縮減【増】

(3)所得拡大税制の拡充【減】

(4)研究開発税制の強化・重点化【減】

(5)外形標準課税の拡大【増】

(6)地方拠点強化税制の創設【減】


以下概要を説明します。

(1)法人税の実効税率の引き下げ【減】

  平成27年4月1日以後に開始する事業年度から、法人税(国税)の税率を23.9%

 に引き下げます。中小法人等の軽減税率は年800万円以内の所得に対する税率は

 特例で15%になっています(原則は19% )が、これも2年間延長されます。

      現行 平成27年度
国の法人税率  中小企業  年800万円以下 特例15% 特例15%
年800万円超 25.5% 23.9%(▲1.6%)
大企業 制限なし 25.5% 23.9%(▲1.6%)
国・地方の法人実効税率(大企業ベース) 34.62% 32.11%(▲2.51%)


(2)欠損金繰越控除制度の縮減【増】

  平成27年4月1日以後に開始する事業年度から、いわゆる青色欠損金の控除に

 ついて、さらに制限がかかります。大企業の控除限度額は、現行では課税所得の

 80%までとなっています。これが平成27年度には65%、平成29年度には50%ま

 で引き下げられます。儲けのある大企業にとっては課税強化の方向です。

  ただし中小企業は対象外で、今まで通り過去の欠損(赤字)を100%使うことが

 できます。また、赤字が発生しやすいベンチャー企業や経営再建を行う企業につ

 いても7年間100%控除できる仕組みが新たに導入されます。

  また、中小企業を含めて繰越期間が現行の9年から10年に延長される見込です。

改正概要 現行 平成27年度 平成28年度 平成29年度
大企業 控除限度 80% 65% 50%
繰越期間 9年 10年※
中小企業  控除限度 100%
繰越期間 9年 10年※

     ※平成29年度以後生じる欠損金について10年間繰越可能


(3)所得拡大促進税制の拡充【減】

  平成25年度改正で創設された所得拡大促進税制(10%の税額控除)の要件がさ

 らに緩和されます。この制度の適用には幾つかの要件をクリアしなければなりま

 せんが、中小法人については給与等支給額の増加要件が平成24年度比で3%増(現

 行では平成28.29年度は5%増)に引き下げられます。

  賃上げ実施の企業に対しては、税制面から大きなサポートが続きます。


(4)研究開発税制の強化・重点化【減】

  研究開発については従来から様々な税制優遇措置があります。今回はさらに、

 企業外部の技術・知識を活用した研究開発(オープンイノベーション)を促進す

 るため、「オープンイノベーション型」と「総額型」を合わせて法人税の30%まで

 の税額控除が可能になります。


(5)外形標準課税の拡大【増】

  税収確保のため法人税の課税ベースが「浅く・広く」拡大されます。しかし、

 資本金1億円以下の中小企業等については、導入は阻止されました。

  外形標準課税とは、事業所の床面積や従業員数、資本金や付加価値など、外観

 から客観的に判断できる基準を課税ベースとして税額を算定する課税ベースのこ

 とです。法人事業税の「付加価値割」「資本割」の課税を強化することで、一定規

 模以上の企業に対してはたとえ赤字であっても一定の税が課されます。


(6)地方拠点強化税制の創設【減】

  経済の大都市への一極集中を抑制して、地方の活性化を促進するため、「地方拠

 点強化」が創設されます。

  東京23区から地方へ本社機能を移転したり(移転型)、もともと地方にある本

 社機能を強化した(拡充型)場合に、「オフィス減税」(建物の15%特別償却また

 は3%税額控除)や「雇用促進税制」(増加雇用者一人当たり50万円の税額控除)

 が受けられます。

  適用要件などの細部は今後次第に明らかになってくると思いますが、大きな減

 税措置として注目しておきたいものです。


(7)その他

 ・特定資産の買換え特例(いわゆる9号買換え)の適用期限が2年3か月延長さ

  れます。ただし、買換資産から機械装置が除外されます。

 ・中小企業の貸倒引当金の特例について、簡便法の基準年度が「平成27年4月1日

  から平成29年3月31日までの間に開始した各事業年度」に更新されます。

2 消費税関連 

(1) 消費税率10%への引上げ時期の変更

  消費税10%への引上げ施行日は、平成29年4月1日となりました。今回は景気

 判断条項を付すことなく確実に実施されるようです。

  これに伴って請負工事等に係る適用税率の経過措置の指定日が平成28年10月1

 日(増税の半年前)とする等の改正が行われます。


(2) その他

 ・消費税の軽減税率制度については、「検討中」となっています。もし導入されれ

  ば企業の経理事務負担や関連業務の爆発的な増加が予想されます。国税庁のホ

  ームページにも「軽減税率の導入は経済的合理性に著しく反しており、将来的に二

  桁税率となっても、可能な限り単一税率を維持すべきである」との見解が掲載され

  ています。今後どうなるか、要注意です。

 ・電子書籍や音楽配信など、国境を越えた役務の提供に対する消費税の課税強化が行

  われます。


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