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労務

      -人を雇うときのルール(労働条件)-


                      税経管理第1部 部長 宇野澤


 使用者と労働者との間の労働条件については、労働契約や就業規則・法令など

によって決定されます。

 就業規則と労働契約および労働協約、ならびに労働協約と労働契約との関係に

ついては、労働基準法および労働組合法に規定があります。

 これらの効力の優先順位は優位なものから、@法令(労働基準法)→A労働協

約→B就業規則→C労働契約となります。

 イ 労働契約…労働者と会社との間で個別に交わされるもの

 ロ 就業規則…労働条件や服務規律などの事項について会社が定める規則

 ハ 労働協約…労働組合が、会社との団体交渉によって合意した内容を書面に


           したもの

 先ず、労働契約、就業規則、労働協約は国の定めた強行規定である労働基準法

に反することはできません。

 次に就業規則および労働契約よりも労働協約が優先されます。

 そして、労働契約よりも就業規則が優先するということになります。


[1]労働契約とは

 労働契約締結時に労働者に対して、口頭又は書面で明示することになっていま

す。しかし、労働基準法第15条では次の事項(絶対的明示事項)は必ず書面で

明示しなければなりません

 1.労働契約の期間(期間を定める場合は原則3年迄)

 2.就業の場所、従事すべき業務

 3.始業・就業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休

 暇並びに労働者を2組以上に分かれて就業させる場合の就業時転換

 4.賃金(退職手当、臨時に支払われる賃金等を除く)の決定、計算および支

 払方法、賃金の締切および支払の時期並びに昇給

 5.退職に関する事項

  *具体的な解雇事由⇒懲戒処分についても、就業規則等に、懲戒処分に該当す

 る事由、処分の種類、処分の手続きを定めなければなりません。

  その他、退職金・賞与や休職などに関しては、その規定がある場合に明示する

 義務があります。

  *労働契約で取り決める内容は、労働基準法の基準に達していないときは無効

 となり、その部分は労働基準法の基準が適用されます。 


契約の締結に当たっての規制

・国籍、信条、社会的身分による差別の禁止

・男女同一賃金の原則

・損害賠償予定や違約金の禁止

・強制貯蓄や協定によらない社内預金の禁止

・3年を超える契約期間の禁止(平成15年法改正により最長1年となっていた契

約期間を3年に引き上げました。ただし、経過措置により、当分の間、1年以上

の労働契約を結んでも、1年を経過した日以降であれば、やむを得ない場合以外の

理由でも、申し出て退職することができます。)

・前借金相殺の禁止

契約の終了;退職と解雇

退職 =契約期間満了による退職

   =自己都合退職

   =定年退職(会社が定年を定める場合には、最低60歳にすることが義務付

        けられています。

   =休職期間満了による退職

   =死亡退職

解雇

・「解雇権乱用の法理」…解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当

 として是認できないときは、権利の乱用として無効となります。

・「解雇予告」解雇をする場合、少なくとも30日前に予告するか、または30日以

 上の平均賃金(解雇予告手当)を支払うことが義務付けられています。

 この予告日数は、平均賃金1日分を支払った日数だけ短縮することができます。

解雇制限…次の解雇は禁止されています。

 ・業務上の傷病により休業する期間及びその後の30日間の解雇

 ・女性労働者が産前産後の休業をする期間及びその後30日間の解雇

 ・不当労働行為となる解雇

 ・国籍、信条を理由とする解雇

 ・監督機関に対する申告を理由とする解雇

 ・婚姻、妊娠、出産、産休、育児介護休業を理由とする解雇

 懲戒解雇…就業規則等に懲戒処分に該当する事由、処分の種類、処分の手続き

を定めなければなりません。


[2]就業規則とは

 常時10人以上の社員(パートを含む)を雇っている場合、会社は就業規則を

作成し、労働基準監督署に届け出なければなりません。

その際社員代表の意見書を添付する必要があります。

 就業規則を改定したときも同様に社員代表の意見を添付の上、労働基準監督署

に届け出なければなりません。

 就業規則の内容は法令や労働協約に反してはなりません。

 就業規則には記載する事項は、次の3つに分かれます。

(1)絶対的記載事項(必ず記載しなければならない事項)

 ・始業および就業の時刻、休日、休暇、休憩時間、社員を2組以上に分けて交

 替に就業させる場合には就業時転換に関する事項

 ・給与の決定、計算及び支払方法、給与の締切りおよび支払の時期、昇給に

 関する事項

 ・退職に関する事項 

(2)相対的記載事項(すべての社員に適用する定めがある場合に記載しなければ

  ならない事項)

 ・退職金や賞与の計算、支給に関する事項

 ・表彰や制裁などの人事に関する事項

 ・職場の安全衛生や労災保険、私傷病扶助などの安全に関する事項

 ・職業訓練などの教育に関する事項

 ・福利厚生に関する事項

(3)任意的記載事項(任意に記載すればよい事項)

 ・採用の手続きや使用に関する事項

 ・出張等の旅費に関する事項

 ・業務上の遵守事項

 ・配置、移動、昇進、休職解雇など社員の人事に関する事項など       


[3]36協定と労働基準法

 1週40時間、又は1日8時間(法定労働時間)を超えて勤務させることは、

労働基準法により禁止されています。

この場合、労働基準法違反として、6ケ月以下の懲役又は30万円以下の罰金が

科せられます。

 ただし、時間外労働・休日労働に関する協定、いわゆる「36協定」を労使で

締結して労働基準監督署に届け出ることによって、法定労働時間を超えて残業さ

せることができます。

・36協定は、1人でも(法定労働時間を超えて勤務させる)社員がいれば届け

出ないといけません。

・36協定の有効期限は1年間となっています。必ず毎年作成、締結して、労働

基準監督署に届け出て下さい。

 労働基準監督署に調査に入られると、必ずと言って良いほど、この36協定の

有無がチェックされます。それだけ基本的で重要な書類と位置付けられています。

36協定の限度時間

 36協定では、法定労働時間を超えて勤務させることができる時間を協定す

るのですがその上限の時間が次のように定められています。


期間   一般の労働者  1年単位の変形労働制の対象者

1週間    15時間      14時間

2週間    27時間      25時間

4週間    43時間      40時間

1ケ月    45時間      42時間

2ケ月    81時間      75時間

3ケ月    120時間      110時間

1年     360時間      320時間


・例えば、1ケ月45時間で36協定を届け出ている場合

 会社の所定労働時間が1日7時間で週5日勤務とすると、(所定労働時間を超

える)残業時間としては、45時間+アルファ(20時間程度)まで可能とい

うことです。


特別条項付きの36協定

 なお、一般の場合、1ケ月の限度時間が45時間と定められていますが、機械

が故障したり、大規模なクレームがあったり、決算業務や季節品の製造など、一

時的に36協定で協定した時間を超えることが想定される会社は、「特別条項付

きの36協定」を届け出ることができます。

[記載例]

 一定期間についての延長時間は、1ケ月45時間、1年間360時間を限度と

する。ただし、通常の業務量を大幅に超える受注が集中し、特に納期が逼迫し

たときは、労使の協議を経て、1ケ月80時間、1年720時間まで延長する

ことができます。

 この場合、延長時間をさらに延長する回数は、6回までとなります。




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