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労  務


    -労働関係法律改正(平成22年4月1日以降施行分)-


                        税経管理第1部 部長 宇野澤


[1]労働基準法の改正

  長時間労働を抑制し、労働者の健康確保や、仕事と生活の調和を図ることを

 目的とする「労働基準法の一部を改正する法律」が平成20年12月12日に公布

 され、平成22年4月1日から施行されています。

(1)時間外労働の割増賃金率が引き上げられました。

    (中小企業については、当分の間、適用が猶予されます。) 

  @ 1か月60時間を超える時間外労働を行う場合→50%以上に引き上げ。

    法定割増賃金率が、現行の25%から50%引き上げられます。

    *割増賃金率の引き上げは、時間外労働が対象です。

    休日労働(35%)深夜労働(25%)割増賃金率は、変更ありません。

    *中小企業の割増賃金率については、施行から3年(5年)経過後に改めて

     検討することとされています。

  A 割増賃金の支払に代えた有給休暇の仕組みが導入されます。

    事業場で労使協定を締結すれば、1か月に60時間を超える時間外労働を行

   った労働者に対して、改正法による引上げ分(25%から50%に引き上げた差

   の25%分)の割増賃金の支払に変えて、有給休暇を付与することができます。


(2)割増賃金引上げなどの努力義務が労使に課されます。

  @ 限度時間(1か月45時間)を超える時間外労働を行う場合→

                             25%を超える率

   「時間外労働の限度基準」により、1か月に45時間を超えて時間外労働を行

   う場合には、あらかじめ労使で特別条項付の時間外労働協定を締結する必要

   があります。

    新たに、@ 特別条項付の時間外労働協定では、月45時間を超える時間外

    労働に対する割増賃金率も定めること。

  A @の率は法定割増賃金(25%)を超える率とするように努めること。

  B 月45時間を超える時間外労働をできる限り短くするように努めること。


(3)年次有給休暇を時間単位で取得できるようになります。

   事業場で労使協定を締結すれば、1年に5日分を限度として、時間単位で年

  次有給休暇を取得できるようになります。


[2]労働契約法の改正

    有期労働契約の反復更新の下で生じる雇止めに対する不安を解消し、安心

   して働き続けることができるようにするため、有期労働契約の適正な利用の

   ためのルールが整備されました。

    *有期労働契約…1年契約、6か月契約など契約期間の定めのある労働契約。

(1)契約期間中の解雇等に関する3つのルール(第17条)

   有期労働契約により雇用されるパートタイム労働者を解雇する場合、やむ

  を得ない事由がある場合でなければ、契約期間の途中で解雇することはでき

  ません。

   また、パートタイム労働者の契約期間については、必要以上に短い期間を

  定めることにより、労働契約を反復して更新することのないよう配慮が必要

  です。

  @ 無期労働契約への転換…有期労働契約が繰り返し更新されて通算5年を超

   えたときは、労働者の申し込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労

   働契約)に転換されます。(H25年4月1日から施行)

  A「雇止め法理」の法定化…一定の場合には、使用者による雇止めが認められ

   ない。最高裁で確立した判例上のルールがそのままの内容で法律に規定され

   ました。(H24年8月10日から施行)

  B 不合理な労働条件の禁止…有期契約労働者と無期契約労働者との間で、期

   間の定めがあることによって、不合理に労働条件を相違させることは禁止さ

   れています。(H25年4月1日から施行)


(2)有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準

  @ 雇止めの予告…有期労働契約(3回以上更新し、又は雇い入れのから1年を

   超えて継続して勤務している労働者に係るものに限る)を更新しない場合に

   は、少なくとも契約の期間の満了する日の30日前までに、その予告をしなけ

   ればなりません。

  A 雇止めの理由の明示…雇止めの予告後にパートタイム労働者が雇止めの理

   由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりま

   せん。雇止めの場合にパートタイム労働者から請求される場合も同様です。

  B 契約期間についての配慮…有期労働契約を1回以上更新し、かつ、1年を超

   えて継続して雇用しているパートタイム労働者との契約を更新しようとする

   場合は、契約の実態及びそのパートタイム労働者の希望に応じて、契約期間

   をできる限り長くするよう努めなければなりません。


[3]雇用保険法等の改正

(1)雇用保険の適用範囲の拡大

  @ 非正規労働者に対する適用範囲の拡大(H22年4月1日施行)

     雇用保険の適用基準である「6か月以上雇用見込み」(業務取扱要領に規

    定)を「31日以上雇用見込み」(雇用保険法に規定)に緩和されます。

  A 雇用保険に未加入とされた者に対する遡及適用期間の改善

    イ.事業主が被保険者資格取得の届出を行わなかったため未加入とされて

     いた者のうち、事業主から雇用保険料を控除されていたことが給与明細

     等の書類により確認された者については、2年(現行)を超えて遡及適用

    ロ.施行日以後は、事業塗から雇用保険料を天引きされていたことが給与明

     細等の書類により確認された方については、2年を超えて雇用保険の遡及

     適用が可能となります。

      *施行日とは…交付日(H22年3月31日)から9ケ月以内の政令で定め

             る日をいう。

    ハ.この場合において、事業所全体として保険料を納付していないことが確

     認されたケースについては、保険料の徴収時効である2年経過後も保険料

     を納付可能とし、その納付を勧奨する。


[4]労働者派遣法の改正(平成24年10月1日より施行)

   労働者派遣法の正式名称が「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び労働者

  の保護等に関する法律」に改正され、派遣労働者の保護のための法律であるこ

  とが明記されました。


(1)事業規模の強化

 @ 日雇派遣(日々又は30日以内の期間を定めて雇用する労働者派遣)の原則禁

  止(適正な雇用管理に支障を及ぼすおそれがないと認められる業務の場合、雇

  用機会の確保が特に困難な場合等は例外)

 A グループ企業内派遣の8割規制、離職した労働者を離職後1年以内に派遣労

  働者として受け入れることを禁止。


(2)派遣労働者の無期雇用化や待遇の改善

 @ 派遣元事業主に、一定の有期雇用の派遣労働者につき、無期雇用への転換推

  進措置を努力化。

 A 派遣労働者の賃金等の決定にあたり、同種の業務に従事する派遣先の労働者

  との均衡を考慮 等 

               参考文献  厚生労働省ホームページ



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