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税 務


   平成23年度税制改正のまとめと平成24年度税制改正


                   税経管理第1部 主任 佐藤


 平成23年度税制改正法案は、東日本大震災と「ねじれ国会」の影響によ
り一部のみが成立し、残りの法案は平成24年度税制改正、「社会保障と税の
一体改革(抜本改革)」において改めて検討されることとなりました。
 ここではすでに成立した法案と、今後成立見込みの法案について整理して
いきたいと思います。

1 平成23年度税制改正:すでに成立した法案

【所得税】    (※納税者有利のものは○、不利のものは×)

  項目 概要 適用期日等
1 年金所得者の申
告手続きの簡素
公的年金等の合計額が400万円
以下で他の所得が20万円以下の
場合、確定申告不要とする
H23年分以後
の所得税から
適用
2 電子申告の所得
税額の特別控除
電子申告で23年分は4,000円、
24年分は3,000円の税額控除
(H19〜24年分でいずれか1回のみ)
H24年まで延

【消費税】

  項目   概要 適用期日等
1 事業者免税点制
度の見直し
× 基準期間(2年前)の課税売上
高が1,000万円以下でも、*特定
期間の課税売上高が1,000万円
を超えると免税制度の適用なし
H25.1.1以後
2 仕入税額控除制
度の「95%ルー
ル」見直し
× 課税売上割合が95%以上の場合
に課税仕入れ等の税額を全額控
除できる制度は、その課税期間
の課税売上高が5億円を超える
事業者には適用しない
H24.4.1以後
に開始する課
税期間

*特定期間…前年または前事業年度の開始後6月の期間など一定の期間

【法人税】

項目 概要 適用期日等
1 法人税の税率の
改正
法人税の税率が引き下げら
れる
(下記参照)
H24.4.1以後開始
する事業年度(中
小企業者の特例・
復興税は3年間)
2 雇用促進税制の
創設
一定の雇用者1名増加につ
き、20万円の特別税額控除
ができる
H23.4.1~26.3.31
に開始する事業年
3 減価償却の見直
× 定率法の償却率を「250%定
率法」から「200%定率法」
に引き下げる
H24.4.1以後取得
の減価償却資産
4 欠損金の繰越控
除の見直し


×
青色欠損金等の繰越期間を
9年(現行7年)に延長する
大法人(資本金1億円超)
は、欠損金の控除額を所得
金額の80%までとする
・H20.4.1以後に
終了する事業年度
・H24.4.1以後開
始する事業年度
5 貸倒引当金の制
× 貸倒引当金制度の適用は、
原則として中小法人等だけ
に限定する(経過措置あり)
H24.4.1以後開始
する事業年度
6 環境関連投資促
進税制
一定の省エネ設備を取得し
た場合、特別償却又は法人
税の特別控除が可能になる
H23.6.30〜26.3.31
の取得

≪法人税率の引き下げ≫
 以下の通り法人税率が引き下げられますが、復興税として今後3年間は、
通常の法人税額に※10%が上乗せされます。


※25.5%+(25.5%×10%)=28.05%, 15%+(15%×10%)=16.5%

2 平成24年度税制改正:改正見込みのもの

【所得税】

  項目   概要 適用期日等
1 給与所得控除
の見直し
× 給与収入が1,500万円を超える
場合の給与所得控除額の上限を
245万円に設定する
H25年分以後
の所得税
2 特定支出控除の
見直し
給与所得から控除できる特定支
出の範囲を拡大し、資格取得費や
勤務必要経費(交際費など)が追
加される
H25年分以後
の所得税
3 退職所得課税の
見直し
× 勤続年数5年以内の法人役員や
議員・公務員の退職所得控除額を
削減する(1/2課税廃止)
H25年分以後
の所得税
4 源泉徴収の納期
の特例の見直し
源泉税の納期特例(年2回納付)
の7月〜12月分の納期限を一律
翌年1月20日とする
H24.7.1以後

【法人税】

  項目   概要 適用期日等
1 中小企業税制の
拡充と延長
@中小企業投資促進税制につい
 て、適用対象に試験機器等を
 追加する
A交際費の特例(中小企業者は
 定額控除限度額600万円)を
 2年延長する
B中小企業者等の少額減価償
 却資産(30万円未満)の損金算
 入特例を2年延長する
2年延長
H25.3.31まで
2 研究開発税制の
延長
試験研究費の税額控除(増加
型・高水準型)を2年延長する
2年延長
H25.3.31まで
3 特定資産の買換
え特例の縮減・
延長
特定資産の買換え特例(譲渡利
益等の80%相当分を課税繰り延
べ)の対象を一定のものに限定
し、期間を3年延長する
3年延長
H26.12.31まで


3 社会保障と税の一体改革
 国家財政の健全化と社会保障の機能強化を目的とした「社会保障と税の一
体改革」として検討されている税制改正案の中から、影響の大きなものを抜
粋します。

【消費税】

  項目   概要 適用期日等
1 消費税率8% × 国税・地方税あわせて8%に引き
上げる
H26.4月か
ら?
2 消費税率10% × 国税・地方税あわせて10%に引き
上げる
H27.10月
から?

※税率の引上げに伴って、「事業者免税点制度」や「簡易課税制度」の一部変
更が見込まれます。
 また、消費税率の引上げ実施前には、経済状況などを総合的に勘案した上
で、引上げの停止を含めて措置を講ずるとしています。

【相続税・贈与税】

  項目   概要 適用期日等
1 相続税の基礎控
除の引き下げ
× 相続税の基礎控除を4割減少する
「3,000万円+600万円×法定相
続人」

(現行:5,000万円+1,000万円×
法定相続人)
H27.1月か
ら?
2 相続税・贈与税の
税率構造の見直
× 相続税・贈与税の税率を最大55%
(現行50%)とする
H27.1月か
ら?
3 相続税の死亡保
険金の非課税枠
の制限
× 現行「500万円×法定相続人」の
死亡保険金の非課税について、一
定の者に限定する
H27.1月か
ら?

 以上、概要を紹介させていただきました。
 実際の適用については個々に適用要件等が詳細にあります。御関心または
疑問等がございましたら、お気軽に担当者までご連絡くださいますようお願
いいたします。


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