前のページへ  木村会計 The Sky's The Limit No.140 Page 3  次のページへ


税 務


        事業承継支援の為の税制措置概略


                    税経管理第7部 部長 小島


 スムーズな事業承継を税制面で支援するために、相続税や贈与税等に次の

ような特例措置が設けられています。


1 相続税の納税猶予制度


 後継者(=相続人。先代経営者の親族)が、相続により非上場の株式を

取得し、本制度の要件を満たす場合には、後継者が相続前からすでに保有

していた議決権株式を含めて、発行済完全議決権株式総数の三分の二に達

するまでの部分について、課税価格の80%に対応する相続税の納税が猶

予されます。


<手続きの流れ>

(1) 相続開始前=経済産業大臣の確認

   「経営承継円滑化法」(注)に基づき、後継者が特定されていることや

   計画的な事業承継に係る取組を行っていることについての「経済産

   業大臣の確認」を受けることが必要です。

    (注)法律の正式名称は「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」です。


(2)相続開始後=経済産業大臣の認定

   「経営承継円滑化法」に基づき、会社の要件、後継者(相続人等)

   の要件、先代経営者(被相続人)の要件を満たしていることについ

   ての「経済産業大臣の認定」を受けることが必要です。


(3) 認定取得後〜相続税の申告期限まで=申告書の作成・提出

   この特例を受ける旨を記載した相続税の申告書及び一定の書類を

   税務署へ提出するとともに、納税が猶予される相続税額及び利子税

   の額に見合う担保を提供する必要があります。


2 贈与税の納税猶予制度

  後継者(=受贈者。先代経営者の親族)が、先代経営者から一定以上の

 贈与を受け、本制度の要件を満たす場合には、贈与前から後継者が既に保

 有していた議決権株式を含め発行済完全議決権株式総数の三分の二に達す

 るまでの部分について、贈与税の納税が猶予されます。


<手続きの流れ>

(1) 贈与前=経済産業大臣の確認

   「経営承継円滑化法」に基づき、後継者が特定されていることや計画

   的な事業承継に係る取組を行っていることについての「経済産業大臣

   の確認」を受けることが必要です。


(2) 贈与後=経済産業大臣の認定

   この特例の適用を受けるためには、贈与により、先代経営者である贈

   与者から全部又は一定以上の非上場株式を取得する必要があります。

   贈与を受けた後、「経営承継円滑化法」に基づき会社の要件、後継者

   (受贈者)の要件、先代経営者(贈与者)の要件を満たしていること

   についての「経済産業大臣の認定」を受けることが必要です。


(3) 認定取得後〜贈与税の申告期限まで

   この特例の適用を受ける旨を記載した贈与税の申告書及び一定の書

   類を税務署へ提出するとともに、納税が猶予される贈与税額及び利

   子税の額に見合う担保を提供する必要があります。


3 見なし配当課税に関する特例

   個人株主が非上場株式を発行会社に売却した場合には、会社が自己株

 式を取得したことになります。この場合、個人株主に対しては、通常、売

 却価額の一部が配当所得とされ、総合課税の対象となります(所得税・住

 民税合わせて最高50%の税率により課税)。

  ただし、個人株主が相続等により取得した非上場株式を発行会社へ売却

 した場合で、次の要件を満たすときは配当所得とされず、譲渡所得として、

 申告分離課税の対象となります(所得税、住民税合わせて20%の税率に

 より課税)。


<適用要件>

(1)個人が相続等により非上場株式を取得して相続税を納付すること


(2)相続税の申告期限の翌日から3年経過日までに、対象となる非上場株

   式を発行会社に売却すること


4 小規模宅地等の課税の特例

  特定の小規模宅地等(被相続人又は被相続人と同一生計の親族が事業の

 用又は居住の用に供していた宅地等)を相続する場合には、相続税の課税

 価格を軽減するという「小規模宅地等の課税の特例」があります。


(1) 特定事業用宅地等の特例

   特定事業用宅地(申告期限まで事業を継続すること等の条件がありま

   す。)は、400uまでの評価額の80%が減額されます。また、一定

   の要件を満たす同族会社の事業を承継する場合も同様の減額があります。


(2) 特定居住用宅地等の特例

   特定居住用宅地等(申告期限まで居住を継続すること等の条件があり

   ます。)は、240uまで評価額の80%が減額されます。


 上記、各種制度の適用要件は詳細多岐にわたっておりますので、詳しくは

担当者にお尋ねください。


前のページへ  木村会計 The Sky's The Limit No.140 Page 3  次のページへ