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税 務


         東日本大震災に関する税務


                     税経管理第8部 部長 大川


1 東日本大震災に関する税務上の取扱い


  平成23年3月11日午後2時45分頃、三陸沖を震源に国内観測史上

 最大のM9.0の地震が発生し、津波や火災などにより広範囲で甚大な被害

 が発生しています。当事務所のある旭市近郊においても例外ではなく、お

 客様各位におきましても苦痛の日々を過ごしておられると存じます。被害

 に遭われました方々に心よりお見舞い申し上げますとともに、国税庁から

 公表されました災害に関する税務上の取扱いを紹介いたします。なお、今

 回紹介できなかった取扱いもございますので、不明な点等がございました

 ら、各担当者にお尋ねください。


2 申告・納付

(1)青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県の方

  この地域に納税地を有する納税者につきましては、東北関東大震災がお

 きた平成23年3月11日以後に到来する申告等の期限が、すべての税目

 について、自動的に延長されることとなります。

  なお、申告等の期限をいつまで延長するかについては、今後、被災者の

 状況に十分配慮して検討されることとなります。

(2)上記(1)以外の方

  上記(1)以外の地域に納税地を有する納税者につきましても、今般の

 地震の影響により、以下のような事情が発生し、申告・納付等ができない

 方につきましては、「災害による申告、納付等の期限延長申請書」を提出す

 ることにより、申告・納付等の期限延長が認められます。

 @  今般発生した地震により納税者が家屋等に損害を受ける等の直接的

   な被害を受けたことにより申告等を行うことが困難

 A  行方不明者の捜索活動、傷病者の救助活動などの緊急性を有する活

   動への対応が必要なことから申告等を行うことが困難

 B  交通手段・通信手段の遮断や停電(計画停電を含む)などのライフ

   ラインの遮断により納税者又は関与税理士が申告等を行うことが困難

 C  地震の影響によるa)納税者から預った帳簿書類の滅失b)申告書作

   成に必要なデータの破損等の理由で、税理士が関与先納税者の申告等

   を行うことが困難

 D  税務署における業務制限(計画停電を含む)により相談等を受けら

   れないことから申告等を行うことが困難


3 寄附金・義援金を支払った場合

(1)取扱い

  法人が義援金等を寄附した場合には、その義援金等が「国又は地方公共

 団体に対する寄附金」、「指定寄附金」に該当するものであれば、支出額の

 全額が損金の額に算入されます。

  個人の方が義援金等を寄附した場合には、その義援金が「特定寄附金」

 に該当するものであれば寄附金控除の対象となります。

(2)手続き

  @ 法人税

    確定申告書に一定の事項を記載し、義援金等を寄附したことが確認

   できる書類を保存する必要があります。

  A 所得税

    確定申告書に一定の事項を記載するとともに、義援金等を寄附した

   ことが確認できる書類を確定申告書に添付するか、確定申告書を提出

   する際に提示する必要があります。

(3)寄附金の種類

  @ 国又は地方公共団体に対して直接寄附した義援金等

  A 日本赤十字社の「東北関東大震災義援金」口座へ直接寄附した義援

   金、新聞・放送等の報道機関に対して直接寄附した義援金等で最終的

   に国又は地方公共団体に拠出されるもの

  B 社会福祉法人中央共同募金会の「各県の被災者の生活再建のための

   義援金」として直接寄附した義援金等

  C 社会福祉法人中央共同募金会の「地震災害におけるボランティア・

   NPO活動支援のための募金」として直接寄附した義援金等

  D 募金団体を計有する国等に対する寄附金


4 災害に関する主な税務上の取扱い

(1) 法人税及び所得税共通

  @ 災害により滅失・損壊した資産等

    法人又は事業を営む個人の有する商品、店舗、事務所等の資産が

   災害により被害を受けた場合に、その被災に伴い次のような損失又

   は費用が生じたときは、その損失又は費用の額は損金の額に算入さ

   れます。

   a) 商品や原材料等の棚卸資産、店舗や事務所等の固定資産などの資

    産が災害により滅失又は損壊した場合の損失の額

   b) 損壊した資産の取壊し又は除去のための費用の額

   c) 土砂その他の障害物の除去のための費用の額

  A 復旧のために支出する費用

    法人又は事業を営む個人が災害により被害を受けた固定資産(以

   下「被災資産」という。)について支出する次のような費用に係る資

   本的支出と修繕費の区分については、次の通りとなります。

   a) 被災資産についてその原状を回復するための費用は、修繕費。

   b) 被災資産の被災前の効用を維持するために行う補強工事、排水又

    は土砂崩れの防止等のために支出する費用について、修繕費とす

    る経理をしているときは、この処理が認められます。

   c) 被災資産について支出する費用(a又はbに該当するものを除く。)

    の額のうち、資本的支出か修繕費か明らかでないものがある場合、

    その金額の30%相当額を修繕費とし、残額を資本的支出とする経

    理をしているときは、この処理が認められます。

  B 従業員等に支給する災害見舞金品

    法人又は事業を営む個人が、災害により被害を受けた従業員等又

   はその親族等に対して一定の基準に従って支給する災害見舞金品は、

   福利厚生費として損金の額に算入されます。

  C 災害見舞金に充てるために同業者団体等へ拠出する分担金等

    法人又は事業を営む個人が、所属する同業者団体等の構成員の有

   する事業用資産について災害により損失が生じた場合に、その損失

   の補てんを目的とする構成員相互の扶助等に係る規約等に基づき合

   理的な基準に従って、同業者団体から賦課され、拠出する分担金等

   は、その支出する事業年度の損金の額に算入されます。

(2) 法人税関係

  @ 取引先に対する災害見舞金等

    法人が、被災前の取引関係の維持・回復を目的として、取引先の

   復旧過程においてその取引先に対して行った災害見舞金の支出、事

   業用資産の供与等のために要した費用は、交際費等に該当しないも

   のとして損金の額に算入されます。

  A 取引先に対する売掛金等の免除等

    法人が、災害を受けた取引先の復旧過程において、復旧支援を目

   的として売掛金、貸付金等の債権を免除する場合には、その免除す

   ることによる損失は寄附金又は交際費等以外の費用として損金の額

   に算入されます。

  B 災害による損失金の繰越

    法人の各事業年度開始の日前7年以内に開始した事業年度におい

   て生じた欠損金額のうち、棚卸資産、固定資産等について災害によ

   り生じた損失に係るもの(災害損失欠損金額)がある場合には、そ

   の事業年度が青色申告書を提出しなかった事業年度であっても、そ

   の災害損失欠損金額に相当する金額は、その各事業年度において損

   金の額に算入されます。

(3) 所得税関係

  @ 個人が支払を受ける災害見舞金

    個人が支払を受ける災害見舞金で、その金額がその受贈者の社会

   的地位、贈与者との関係等に照らし社会通念上相当と認められるも

   のについては、課税しないものとされます。

  A 被災事業用資産の損失の繰越

    事業を営む個人のその年の前年以前3年内の各年において生じた

   純損失の金額のうち、棚卸資産、固定資産等について災害により生

   じた損失に係るもの(被災事業用資産の損失の金額)がある場合に

   は、その損失の生じた年分が青色申告書を提出しなかった年分であ

   っても、その被災事業用資産の損失の金額に相当する金額は、その

   年分の総所得金額等の計算上控除することとされています。




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