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税 務


        『業績悪化による役員報酬減額改定の留意点』


                         税経管理第6部 部長 松村


 業績が予想以上に悪化したため、期中に役員報酬を減額したいという相談を受ける機

会が多くなってきました。法人税法における役員報酬は定期同額を要件として損金算入

を認めているため、期中における減額は、減額改定前の定期給与の額のうち減額改定後

の定期給与の額を超える部分が損金不算入となる可能性があります。


 しかし、国税庁が定めた「業績悪化改定事由」により減額した場合は、定期同額給与

に該当し、損金算入が認められます。(国税庁「役員給与に関するQ&A」)



 「業績悪化改定事由」とは、第三者である利害関係者(株主、債権者、取引先等)と

の関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情が生じたために行ったもので、具体

的に次のような場合の減額改定は、通常「業績悪化改定事由」による改定に該当すると

考えられています。


@ 株主との関係上、業績や財務状況の悪化についての役員としての経営上の責任から

 役員給与の額を減額せざるを得ない場合。


A 取引銀行との間で行われる借入金返済のリスケジュールの協議において、役員給与

 の額を減額せざるを得ない場合。


B 業績や財務状況又は資金繰りが悪化したため、取引先等の利害関係者からの信用を

 維持・確保する必要性から、経営状況の改善を図るための計画が策定され、これに役

 員給与の額の減額が盛り込まれた場合。


 国税庁が定めた「役員給与に関するQ&A」では、さらに具体的な記述が記載されて

いますので、その内容をご紹介します。


 上記@については、株主が不特定多数の者からなる法人であれば、業績等の悪化が直

ちに役員の評価に影響を与えるのが一般的であると思われますので、通常はこのような

法人が業績等の悪化に対応して行う減額改定がこれに該当するものと考えられます。

 一方、同族会社のように株主が少数の者で占められ、かつ、役員の一部の者が株主で

ある場合や株主と役員が親族関係にあるような会社についても、上記@に該当するケー

スがないわけではありませんが、そのような場合には、役員給与の額を減額せざるを得

ない客観的かつ特別の事情を具体的に説明できるようにしておく必要があることに留意

してください。



 上記Aについては、取引銀行との協議状況等により、これに該当することが判断でき

るものと考えられます。

 また、上記Bに該当するかどうかについては、その策定された経営状況の改善を図る

ための計画によって判断できるものと考えられます。この場合、その計画は取引先等の

利害関係者からの信用を維持・確保することを目的として策定されるものであるので、

利害関係者から開示等の求めがあればこれに応じられるものということになります。


C 上記@〜Bに掲げた3事例以外の場合であっても、経営状況の悪化に伴い、第三者

である利害関係者との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事情があるときには、

減額改定をしたことにより支給する役員給与は定期同額給与に該当すると考えられます。

この場合にも、役員給与の額を減額せざるを得ない客観的な事情を具体的に説明できる

ようにしておく必要があります。


 このように、同族会社についても可能性を持たせる記述が国税庁Q&Aに記載されて

おり、役員給与を減額しなくてはならない会社が相当数出ることを考えて、柔軟な取り

扱いとなっております。


 「業績悪化改定事由」に該当させるために、業績の悪化により、第三者である利害関

係者(株主、債権者、取引先など)との関係上、役員給与の額を減額せざるを得ない事

情を具体的に説明できるように、次の事項に留意して下さい。


@ 経営状況等の悪化の具体的な状況を説明した資料や改善計画案を書面で残すこと。


A 臨時取締役会等での決議及び議事録を作成し、減額理由や減額後の各人の給与額及

 び支給開始時期(減額する期限は記載してはならない)を明記すること。


B リスケジュールする場合には銀行との協議記録を書面で残すこと。


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