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税 務


     取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度


                      税経管理第5部 部長 伊藤 敬一


 日本の中小企業の多くは、大株主が代表者としてその経営に従事しています。ま

た、個人の資産を会社のために提供していることも多く見られます。

 このような中で、経営者に相続が発生した場合は、会社の事業の継続、発展に大

きな影響を与えることになります。

 経営者の相続財産の多くは、自社株式等の事業用資産です。換金性の乏しい非上

場株式等に係る重い相続税負担は、会社を引き継いだ後継者にとって障害となって

いました。

 この問題を解決するため、「取引相場のない株式等に係る相続税の納税猶予制度」

が創設されることになりました。


1 概要

 会社の後継者が相続等により取得した自社株式(発行済株式総数の3分の2まで)

の80%に相当する相続税の納税を猶予する制度です。


2 適用要件

(1) 会社

 以下に規定する中小企業基本法における中小企業であること

卸売業 資本金1億円以下  または 従業員数100人以下
小売業  〃 5千万円以下 または  〃   50人以下
サービス業  〃 5千万円以下 または  〃  100人以下
製造業その他  〃 3億円以下  または  〃  300人以下

 ※原則として、資産管理会社は適用対象から除外されます。

(2) 相続人(後継者)

 @ 会社の代表者であること

 A 相続人と同族関係者で発行済株式総数の50%超の株式を保有していること

 B 同族内で筆頭株主であること

(3) 被相続人

 @ 会社の代表者であったこと

 A 被相続人と同族関係者で発行済株式総数の50%超の株式を保有していたこ

  と

 B 同族内で筆頭株主であったこと


3 事業継続要件(5年間の事業継続)

 @ 代表者であること

 A 相続時の雇用を8割以上維持すること

 B 相続した対象の株式を継続保有していること

 上記の要件を満たさなくなり、事業を継続していないと認められる場合には、そ

の時点で猶予税額の全額を納付しなければなりません。


4 その他

(1) 後継者が相続した対象の株式を死亡の時まで保有し続けた場合等、一定の場合

 には猶予された税額は免除されます。

(2) 上記3の期間経過後、対象の株式を譲渡等した場合は、その時点で譲渡等した

 株式の割合に応じた猶予税額を納付しなければなりません。

(3) 上記3または(2)により、猶予税額を納付する場合には、その税額について相続

 税の法定申告期限からの利子税も発生します。

(4) 原則として、対象となる株式の全てを担保に供しなければなりません。



 この制度は、平成21年度税制改正によって創設され、中小企業の経営の承継の

円滑化に関する法律(仮称)の制定に基づき、同法の施行日(平成20年10月予

定)以後の相続等に遡って適用される予定です。


 ここに記載した内容は未定のものです。今後、内容や適用時期が変更される可能

性がありますので、その状況については担当者に確認してください。

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