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1 ・ 2    − 新年度税制改正大綱と近年の税制改正の潮流 −


January・February   12月14日に与党は平成19年度税制改正大綱を決め

ました。

 今回の税制改正の目玉は、40年ぶりの減価償却制度の見直しです。現状

では耐用年数終了時で投資額の90%、その後の保有で95%までの償却が

出来ます。残りの5%はその資産の除却時に損金となります。諸外国では耐

用年数終了時に100%償却が終わる方式が多いです。この点から、日本の

設備投資が税務上不利であり、国際競争力の点から、減価償却制度の改正が

要望されていました。

 今回の改正案では、2007年以降の投資については、法定耐用年数の期

間内に全額損金計上できます。既存設備については、5年かけて段階的に残

りの5%分を損金にできます。黒字企業にとっては、損金の前倒しが出来、

税務上有利です。赤字企業にとっては、税務上の効果はないです。もともと、

赤字企業は法定の減価償却費すら計上しない場合が多く、減価償却をしない

ことで、赤字幅を減らそうとする会社も多いです。中小企業で黒字企業は多

くないです。


 法人の実効税率は、現行では40%強、中小企業は所得800万円までは

30%強、それを越えると40%強となります。40%強は米国と並び、世

界一の高さです。英国やフランス、中国などは30%台前半、韓国は20%

台後半です。世界86カ国平均の法人実効税率は2006年で27.1%で

す。経団連からの強い要望がありますが、実効税率の引き下げは今回見送ら

れました。次回はこの引き下げも改正案に入ると思います。このとき、中小

企業の特例が維持され、所得800万円までの実効税率もスライドして落ち

るか注目しています。


 平成16年度には、消費税の改正で免税売上、簡易課税売上の基準売上が

引き下げられ、個人企業、小規模企業の税負担が増しました。この年から、

個人の長期保有土地譲渡に伴う100万円の控除も廃止され、分離譲渡所得

の損益通算も廃止されました。平成17年度には個人の定率減税が半分に減

額され、来年からは定率減税は廃止されます。平成18年度から、持分90%

以上のオーナー社長の報酬が課税強化されました。これらの改正は大企業に

は影響しません。


 中小企業の留保金課税は来年の改正案では撤廃されます。こういった中小

企業の優遇策もありますが、ここ数年の税制改正の流れを見ると、大企業の

国際競争力を高める事を第一に、中小零細企業や個人の優遇策は縮小する傾

向が見られます。

 中小企業の会社数は約150.8万社、全会社数に占める割合は99.2%です。日

本経済を支える中小企業が元気の出る税制を期待します。 2006.12.19


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