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11・12    −商法から会社法へ−


November・December  来年の4月1日より、会社法が施行されます。商法第2

編、有限会社法、商法特例法の各規定が、ひらがな口語体で「会社法」とい

う1つの法典に再編されました。


 中小会社にとって、今回の法改正で一番関係するのは、有限会社法の廃止

と最低資本金制度の撤廃です。


 来年の4月1日以降は、有限会社法が無くなるので、有限会社は設立でき

ません。有限会社と株式会社は1つの会社類型(株式会社)となります。現

存する有限会社は特例有限会社として、「有限会社」の商号のまま、株式会社

の一形態としてずっと存続できます。会社法整備法で、決算公告不要や取締

役任期無制限といった有限会社法に準じた特例法が設けられているので、今

まで通りに対応できます。

 会社法でも中小会社にとって便利な機関形態も用意されています。商法で

は、株式会社の機関は取締役3名と監査役1名が最低必要でした。会社法で

は、非公開会社(株式譲渡制限がある会社)に限られますが、取締役1名の

みの株式会社も認められました。役員の任期も定款で最長10年まで延ばせ

ます。そうはいっても、役員任期も無期限ではなく、決算公告は全ての株式

会社に義務付けられています。役員変更登記を忘れたときの罰金や、現在は

罰金が厳しく取り立てられていない決算公告義務違反に、きっちり対応され

たときは大変です。その対応のための手間や決算数値のディスクロージャー

のリスクを考えると、将来の上場を考えていない会社は、有限会社のままで

いた方が良いようです。

 有限会社から株式会社へ商号変更したい場合には、特例有限会社の解散の

登記と、株式会社の設立の登記で出来ます。資本金の縛りはなくなるので、

資本金300万円のままで商号変更可能です。


 最低資本金制度は、会社の債権者保護のために設けられた制度でしたが、

会社の経営内容が悪くなり、債務超過に陥れば、最低資本金も保持されませ

ん。そういった実態から、最低資本金制度が無くなった面もあります。これ

に替わる債権者保護として、資本金の額にかかわらず、純資産が300万円

未満の場合は、剰余金があってもこれを株主に分配できないことになりまし

た。

 最低資本金制度撤廃の一番の狙いは、日本のベンチャーを活性化し、それ

を通じた産業界の発展です。資本金1円から株式会社が作れるようになり、

気軽に新規事業を興し株式会社を設立できます。反面、資本金のハードルで、

今までは株式会社の方が有限会社よりも格が上に見えましたが、もうそうい

ったこともなくなり、株式会社も玉石混淆です。


 上記の他に、会社決算書の信頼性確保のために、「会計参与」制度が新た

に設けられました。

 剰余金の分配の回数制限も無くなり、利益処分案に替わり「株主持分変動

計算書」が新たに決算書に加わります。

 有限責任で組合的な内部自治の「合同会社(LLC)」や「有限責任事業

会社(LLP)」が、新たな会社組織として利用できるようになります。LL

Pは法人格を持たず、内部留保は出来ませんが、LLCでは認められなかっ

た構成員課税が取れ、LLPを通じた所得が他の個人所得と通算できます。

LLPは、一足早くこの8月1日より設立できるようになりました。

 株式譲渡制限付きの株式会社では、無議決権株式の発行が株式総数の2分

の1未満という制限が無くなりました。事業相続人の持株数が少ないときに、

被相続人の株式を事前に無議決権株式にするといった相続対策も可能となり

ました。

 所員一同、新会社法を研究し、制度の変更をお客様のビジネスの成功に役

立てるようサポートしていきたいと思っております。     2005.10.18


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