前のページへ  木村会計 The Limit of The Sky No.102 Page 2  次のページへ

会 計


   
『外貨建・海外取引の為替換算会計の概要』


               税経管理第8部 部長 松村 恭男


 近年、国際会計基準が必要とされる程、企業活動と金融市場が国際

化してきていることに伴い、外貨建取引も増加の傾向を示しています。


 外国との間で行われた取引が、日本円以外の通貨で行われた場合に、

最終的には日本円による金額に変換することが必要になります。外国

通貨を用いて測定・表示された金額を日本円によって表示し直す手続

き、すなわち、「換算」手続きが会計上必要となってくるのです。



 そこで、今回は、外貨建・海外取引の為替「換算」会計の概要につ

いて述べたいと思います。


<1>「換算」対象

(1)「外貨建等会計処理基準(以下、「外貨建基準」と略称します。)」

   によると「換算」対象を、次の三つの領域に区別しています。 

 @ 「外貨建取引」の換算

 A 在外支店の財務諸表項目の換算

 B 在外子会社または在外関連会社の財務諸表項目の換算


(2)「外貨建基準」によれば、「外貨建取引」とは「売買価額その他

   取引価額が外国通貨で示されている取引」をいい、次のようなもの

   があります。

 @ 取引価額が外貨で表示されている物品の売買又は役務の授受

 A 決済金額が外貨で表示されている資金の借入又は貸付

 B 券面額が外貨で表示されている社債の発行

 C 外貨による前渡金、仮払金の支払又は前受金、仮受金の受入

 D 決済金額が外貨で示されているデリバティブ取引 等


<2>「換算」方法

(1)換算方法としては、次の四つの方法があります。このうち、「外

   貨建基準」は「外貨建取引」の決算時の原則的換算方法としては

   Aの貨幣・非貨幣法を採用しています。(H12年4月1日〜)

 @ 流動・非流動法

   流動項目−決算時の為替相場(CR)を適用して換算

   非流動項目−発生時の為替相場(HR)を適用して換算

 A 貨幣・非貨幣法

   貨幣項目−決算時の為替相場(CR)を適用して換算

   非貨幣項目−発生時の為替相場(HR)を適用して換算

 B テンポラル法

   貨幣性項目−決算時の為替相場(CR)を適用して換算

   外貨による時価が付された非貨幣性項目−決算時の為替相場(C

   R)を適用して換算

 C 決算日レート法

   財務諸表の全項目を決算日レートという単一レートで換算


(2)四つの換算方法のうち、@ABは複数レート法、Cは単一レー

   ト法と分類できます。


<3>取引時の「換算」に用いる外国為替相場

(1)外貨建取引の換算を行う場合に適用される外国為替相場には、

   直物(ジキモノ)為替相場先物(サキモノ)為替相場があり

   ます。

(2)直物為替相場とは、外貨との交換が当日又は翌日中に行われる

   場合に適用される為替相場であり、直物レートともいわれます。

(3)先物為替相場とは将来の時点で外貨と交換することを契約す

   る取引に適用される為替相場をいいます。


<4>決算時の換算基準

(1)決算時における外貨建項目の換算方法を、「外貨建基準」に基づ

   いて示せば下記の図表のようになります。(H12年4月1日〜

(2)換算方法は、「金融商品に係わる会計基準」との整合性等を考慮

   して為替相場の変動を財務諸表に反映させることを重視する観点

   から採用されたものです。例えば、旧基準のように金銭債権債務

   の換算方法において短期・長期の区分を設けていません。




<5>為替差損益の処理

(1)「為替差損益」とは外貨建金銭債権債務の決済(外国通貨の円

   転換を含む)に伴って生じた損益のことをいいます。

(2)「外貨建基準」は、為替差損益の処理方法として「二取引基準」

   を採用しており、原則として、当期の為替差損益とします。

   「二取引基準」とは輸出入等外貨建取引と、それに伴って生じ

   る売掛金や買掛金等の代金決済取引とを別個の取引とみなして会

   計処理を行う方法をいいます。

   例外として、有価証券の強制評価減から生じた差額は、為替差損

   益ではなく、当期の有価証券評価損として処理します。


<6>為替予約の処理

(1)為替予約とは為替業務を行う銀行との間で、企業が将来に外

   貨と日本円を交換するときに適用される為替相場を現時点で前

   もって契約しておくことをいいます。外貨を取引対象としたデ

   リバティブの一種です。

(2)為替予約をしておけば、将来、為替相場がどのように変化して

   も、前もって契約しておいた先物為替相場を適用して取引の決

   済をすることができます。

   為替予約が付された外貨建取引の会計処理には「振当(フリア

   テ)処理」「独立処理」があります。どちらを採用してもよ

   いとされています。

(3)「振当処理」とは為替予約で確定した日本円の額で外貨建取

   引を記録する方法です。

   「独立処理」とは外貨建取引と為替予約を別個の取引とみな

   して会計記録を行う方法です。

(4)為替予約は外貨建取引の最初から付されることもあれば、当初

   は為替予約を付さないで、替相場の動向をみながら途中で為替

   予約を付すケースもあります。

   途中で為替予約を付した場合には次の二つの差額が生じること

   になります。

 @ 取引発生時と予約時の直物為替相場(直物レート)から生じる

   差額→「直直(ジキジキ)差額」

 A 予約時の直物為替相場(直物レート)による換算額と予約した

   先物為替相場(先物レート)による換算額との差額

   →「直先(ジキサキ)差額」

(5)この二つの差額の処理において、「直直差額」予約時の為替差

   損益として処理し、「直先差額」は一旦、資産又は負債として処

   理し、決済日までの期間に配分します。



前のページへ  木村会計 The Limit of The Sky No.102 Page 2  次のページへ