前のページへ  木村会計 The Limit of The Sky No.101 Page 3  次のページへ

税  務

       
平成17年度税制改正の概要

            税経管理第2部 部長 宇野澤 雅男


1個人所得税 2住宅税制 3金融・証券税制 4中小企業税制

5人材投資促進税制 6債務免除益課税の緩和


1. 個人所得課税 〜定率減税の縮減・廃止等〜

 所得税・個人住民税に手当てされていた「定率減税」は、平成1

7年度改正で2分の1に縮減されます。平成18年度には経済社会

の動向を踏まえつつ、いわゆる三位一体改革の一環として、所得税

から個人住民税への本格的な税源移譲を実現し、あわせて国・地方

を通ずる個人所得課税のあり方の見直しを行うこととして、廃止を

明記しない「弾力的対応」となりました。

また、個人住民税では、合計所得金額125万円以下の高齢者に認

められていた非課税措置が廃止されると共に、いわゆるフリーター

などに対する課税も強化されます。


(1) 所得税・個人住民税の定率減税縮減

 平成17年度改正による縮減の具体的な内容は以下のとおりです。

・所得税

現行 改正案
所得税額の20%相当額
(20%相当額が25万円を超える
場合は、25万円)
所得税額の10%相当額
(10%相当額が12万5千円を超
える場合は、12万5千円)

 平成18年1月以後の源泉徴収分から実施されます。したがって、

平成18年1月1日以後に支払うべき給与等および公的年金等にか

かる源泉徴収すべき所得税の額から控除する定率減税の額について

の見直し(月額表など税額表の改正)が行われます。

・個人住民税

現行 改正案
個人住民税所得割額の15%相当

(15%相当額が4万円を超える場
合は、4万円)
個人住民税所得割額の7.5%相
当額
(7.5%相当額が2万円を超える
場合は、2万円)

 平成18年6月徴収分から実施されます。

[試算] 年収700万円の標準的サラリーマン(妻が専業主婦、

子供2人(うち1人は特定扶養親族))の場合、所得税と住民税の負

担増は8万2千円となります。


このページの先頭に戻る


2. 住宅税制 〜住宅ローン控除の適用要件の拡充等〜

 いわゆる住宅ローン控除や特定の居住用財産の買換え特例などに

おける既存住宅の築後年数要件が緩和され、一定の耐震基準に適合

した住宅であれば、築後年数に関係なくローン減税の対象に追加さ

れることになります。


(1) 住宅ローン控除

 平成17年4月1日以後に既存住宅を取得し、自己の居住の用に

供する場合には、住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除、

いわゆる「住宅ローン控除」の適用対象となる既存住宅のうち、地

震に対する安全上必要な構造方法に関する技術的基準またはこれに

準ずるものに適合する一定の既存住宅については、築後年数の要件

がなくなります。

 平成17年分の住宅ローン控除の要件等を一覧で示すと次のよう

になります。

平成17.1.1〜17.3.31居住 平成17.4.1〜17.12.31居住
特別税額控除額 ・控除期間・・・・・10年
・住宅借入金等の年末残高・・・4,000万円以下の
 部分
・適用年、控除率 1年目から8年目まで・・・1%
          9年目および10年目・・・0.5%
適用対象となる
家屋 
床面積50u以上
既存住宅は、築20年以

(耐火建築物は築25年以
内)
床面積50u以上
既存住宅は、築20年以

(耐火建築物は築25年以
内)
または、一定の耐震基準
を満たす住宅
増改築要件 工事費用が100万円を超える大規模修繕等
所得金額要件 その年の合計所得金額が3,000万円以下
借入金等の要件 賦払期間、償還期間が10年以上の一定の要件を満
たすもの

(2) 特定の居住用財産の買換えおよび交換の場合の長期譲渡所得

  の課税の特例


 適用対象となる買換資産のうち、地震に対する安全上必要な構造

方法に関する技術的基準またはこれに準ずるものに適合する一定の

耐火建築物については、築後年数の要件がなくなります。

 この改正は、平成17年1月1日以後に譲渡資産の譲渡をし、平

成17年4月1日以後に買換資産の取得をする場合に適用されます。


このページの先頭に戻る


3.金融・証券税制 

        〜タンス株等の特定口座への受入れ等〜


 平成16年12月31日で期限切れとなった、自己が保管している

上場株式等(いわゆるタンス株)の証券会社などの特定口座への受

入れが、改めて平成17年4月1日から平成21年5月31日までの

間は認められることとなります。また、金融先物取引による利益に

対する課税方式が、総合課税から申告分離課税に変更されることに

なります。

(1) 特定口座内保管上場株式等の譲渡所得に関する所得計算等の
 特例等


 平成17年4月1日から平成21年5月31日までの間に、一定の

要件の下で、特定口座に、自己が保管している上場株式等(タンス

株)を、実際の取得日および取得価額で受け入れることができるこ

とになります。

 これまでの制度では、特定口座への預入時の取得価額は、@実際

の取得価額、A取得日が確認された場合には取得日の市場終値、B

みなし取得価額(平成13年10月1日終値の80%)の3通りから選

択し、特定口座に預け入れることができましたが、平成17年4月1

日以後の新制度では、実際の取得日及び取得価額による受入に限定

され、取得価額の特例(みなし取得価額)を適用することはできま

せん。ただ、一般口座では、一定の要件を満たせば、みなし取得価

額を平成22年12月31日まで適用することができます。

 また、特定口座内保管上場株式等を特定口座の開設をしている証

券業者に平成17年4月1日以後貸し付けた場合において、当該貸

付期間後に返還される当該特定口座内保管上場株式等と同一銘柄の

上場株式等を一定の要件の下で、当該特定口座に貸付けをした際に

当該特定口座において管理されていた取得価額で受け入れることが

できることとされます。

 加えて、平成17年10月1日以後、特定口座の取扱者の範囲に日

本郵政公社が追加されます。

(2) 特定口座内保管上場株式等の発行会社の清算等による損失

 平成17年4月1日以後、特定口座で管理されていた上場株式等

が、発行会社の清算結了等によって無価値化した場合に、その清算

結了等の事実を当該株式の譲渡とみなし、かつ、当該損失の金額と

して一定の金額を譲渡損失の金額とみなして、株式等にかかる譲渡

所得等の課税の特例を適用できることとされます。


このページの先頭に戻る


4. 中小企業税制・NPO税制等 
           〜エンジェル税制の延長等〜


(1)中小企業・ベンチャー支援税制

@エンジェル税制

 特定中小会社が発行した株式にかかる譲渡所得等の特例(いわ

ゆるエンジェル税制)の適用期限が、平成17年4月1日から2

年間延長されます。なお、住民税の特例も同様に2年間延長され

ます。

A 中小企業支援新法の制定による特例の創設

 中小企業の事業活動を支援する趣旨で「中小企業の新たな事業

活動の促進に関する法律(仮称)」が制定されることになっており、

税制の面でも各種の支援措置が講じられます。

具体的には次のような内容です。

・ 同法の適用対象となる一定の中小企業が取得する機械等を中

 小企業等基盤強化税制の適用対象とする。

・ 同法の適用対象となる一定の中小企業について、同族会社の

 留保金課税を適用しない。

B 特例の期限延長等

 中小企業を対象とした制度のうち期限が到来するものについて

適用期限の延長等が行われます。

・ 中小企業等基盤強化税制の対象設備について一部見直しが行

 なわれ、適用期限が2年間延長されます。

・ 商業施設等の特別償却の対象設備が一部見直され、適用期限

 が2年間延長されます。

(2)NPO税制

 認定NPO法人に対して法人が寄付をした場合には、法人税の

面では一般寄付金と別枠で同額まで損金算入限度額の範囲内で損

金に算入できることとされ、所得税では特定寄付金として寄付金

控除の対象とされています。

 この対象となる認定の基準が以下のように改められます。

・ 総収入金額のうちに寄付金総額の占める割合が1/5以上か

 どうかの判定は、直前2事業年度の平均で行うこととされます。

・ 事業活動のうちに共益的な活動の占める割合が50%未満か

 どうかの判定について、直前2事業年度の平均で行うこととさ

 れるほか、会員等の範囲から単なる顧客を除外する等の改正が

 行われます。

・ 運営組織等の要件について、特定非営利活動事業費が80%以

 上かどうか等を直前2事業年度の平均で判定することとされるほ

 か、親族の範囲を配偶者と三親等内の親族に限定する等の改正が

 行われます。



(3)寄付金控除関係

 所得税の寄付金控除は、控除対象限定額が総所得金額等の25%

相当額とされていますが、これが30%相当額まで引き上げられ

ます。


このページの先頭に戻る


5. 人材投資促進税制の創設 
         〜教育訓練費の税額控除の創設等〜


 過去の教育訓練費の平均を上回った場合に税額控除が認められる

制度が創設されます。

(1)制度の内容

 青色申告書を提出する法人がその年度に損金の額に算入した教育

訓練費の額が、その直前2年間の損金算入教育訓練費の額の平均額

を超える場合に、超える額の25%相当額(その年度の法人税額の10

%が上限)の税額控除が認められます。平成17年4月1日から平

成20年3月31日までの間に開始する事業年度に適用される3年

間の時限措置とされます。

(2)中小企業者等の特例

 青色申告書を提出する中小企業者等については教育訓練費の増加

率に応じて、増加額ではなく、その期の教育訓練費に一定率を乗じ

た額が税額控除される特例が手当てされます(ただし、その年度の

法人税額の10%が上限となります。)。

・教育訓練費の増加率が40%以上の場合…20%

・教育訓練費の増加率が40%未満の場合…教育訓練費増加率×0.5

「設例」

平成16年3月期(前々期)の教育訓練費………190万円
平成17年3月期(前期)の教育訓練費…………210万円
当期の教育訓練費  ………………………………260万円
当期の法人税額   ………………………………300万円

  ―中小企業者の場合―
(教育訓練費増加率) (260万円−200万円)÷200万円=30%
(控除率)        30%×0.5=15%
(控除税額)      260万円×15%=39万円
            300万円×10%=30万円<39万円  
       控除税額 30万円


このページの先頭に戻る


6.債務免除益課税の緩和
       〜民事再生法等による債務免除の課税の穏和等〜


 一定の場合に、青色欠損金等以外の欠損金を優先控除できること

になります。

(1) 改正の概要

 法人が貸付金等について債務免除を受けた場合には、原則として

その債務免除益が益金に算入されることとなっています。ただし、

一定の事実が生じた場合には役員等から受けた債務免除益について

は繰越控除の対象になる青色欠損金にあたらない欠損金を控除する

ことで、結果的に益金が残らないような手当てが講じられています。

 今回の改正では、役員等から受けた債務免除益ではなくても、一

定の条件を満たせば同様の手当てがなされることになります。

(2) 対象となる債務免除

 民事再生法による再生計画の許可決定またはこれに準ずる再建計

画の合意があった場合が対象となりますが、その計画では適正な資

産評定に基づく貸借対照表を基礎として債務免除額が決められてい

ること等、一定の条件を満たすことが必要です。

(3) 具体的内容

 対象となる債務者には次のような手当てが講じられます。

 @資産の評価損益の計上

  その債務者の有する資産について、評価益および評価損の計上

  が行われます。評価益の額よりも評価損の額が大きい場合には、

  その分が損金となりますから、結果的に債務免除益から、その

  額が差し引かれることになるわけです。

 A青色欠損金等以外の欠損金の控除

  繰越控除の対象となる青色欠損金はその事業年度開始前7年

  以内のものであり、それ以前の欠損金は控除の対象になりませ

  んが、この制度の要件に適合している場合には、債務免除益等

  の額までを限度として7年より前の欠損金を優先して損金に

  算入することが認められます。

(注) 平成13年4月1日以後に開始した事業年度前の事業年度に

  生じた欠損金の繰越控除期間は、5年となっています。


 以上、平成17年度税制改正大綱より主なものを取り上げました。

 正式な決定は今後になります。詳細な取扱いについては、各担当

者にお尋ね下さい。


このページの先頭に戻る


3月16日(水)は、確定申告業務慰労のため、休みとさせていただきます。


前のページへ  木村会計 The Limit of The Sky No.101 Page 3  次のページへ