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1 ・ 2  − 税制から見える明日 −


January・February   2005年度末で国と地方の債務残高が774兆円、国債発

行残高は538兆円程度で予測GDP511兆円を初めて上回ると予想されます。

こういった背景の中、12月15日、自民、公明両党は2005年度税制改正大

綱を決めました。個人所得税の定率減税の段階的縮小を始め、増税シフトが鮮明

になっています。

 実は、2004年度から、個人や中小企業への増税は始まっていました。個人

の土地売却損の損益通算不適用、簡易課税や免税の適用売上高の引き下げが、個

人や中小企業に打撃を与え始めています。厚生年金保険料の段階的引き上げが、

事業者にボディーブローを効かせます。


 現在簡易課税を取っているサービス事業者で、実際の課税仕入れ割合が20%

の場合、原則課税が適用されると消費税負担が対売上で2.5%から4%へ1.5

%税負担が増し、税前利益率が10%の事業者でしたら8.5%まで落ちます。

 消費税を1%上げると2兆円もの税収増が見込まれ、国の赤字対策の切り札で

す。2007年度には消費税の税率引き上げが必須といわれています。日本経団

連の奥田碩会長が言うように、16%までの段階的引き上げが実施された場合の

影響は深刻です。消費税のアップ分を全て価格に転嫁できれば問題ありませんが、

それは難しいでしょう。16%のうち、現在の消費税率5%の上乗せ分11%の

半分を価格に転嫁できたとして、先のサービス業者の場合には、消費税負担が対

売上で8.4%となり、税前利益率が4.1%まで落ち込んでしまいます。

 厚生年金保険料の保険料率は、改正前は13.58%ですが、平成16年10

月から毎年0.354%引き上げられ、平成29年9月以降保険料率は18.30%

(上限)になります。この影響は、増加分4.72%の半分の負担義務のある事

業者は、人件費比率が50%と仮定すると、1.18%利益が落ちます。先の消

費税負担増と合わせると、10%あった税前利益率が、2.92%まで落ち込み

ます。


 税前利益を10%以上あげている中小事業者は、多くはありません。消費税も、

社会保険の事業者負担も、事業者が赤字でも課税されます。利益率の低い事業者、

赤字の事業者には厳しい未来が見えます。

 増税の影で、連結納税制度により、子会社の赤字で本体の黒字を消せる減税方

式が一昨年より認められました。多くの事業会社を抱える大企業には有利です。


 成長する事業者、利益率の高い事業者は生き残り、新規事業にチャレンジする

事業者は優遇されますが、ただ小さいだけの事業者は今までのように税制によっ

て保護されず、淘汰されそうです。

 不要な公共事業は中止し、銀行への税金を使ったてこ入れもやめ、国の無駄遣

いを無くして、民間の厳しさを国も甘受する時です。


 良いお年をお迎え下さい。                  2004.12.22


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