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リスクマネージメント
生命保険会社の破綻
税経管理第4部 部長 木樽康昌
現在の状況 |
生命保険会社の破綻は現在7社です。1997年の日産生命から始まり、199
9年には東邦生命が、2000年には第百生命、大正生命、千代田生命、協栄生命
と4社が相次ぎ、2001年には東京生命が破綻しました。
生命保険会社が破綻した場合の契約者保護の仕組み |
生命保険会社の経営が破綻した場合には「生命保険契約者保護機構」により一定
の契約者保護が計られます。保護機構には国内で営業をおこなうすべての生命保険
会社が会員として加入しています。保護機構が保険契約の継続を図る仕組みは次の
2つです。
1.救済保険会社が現れた場合
破綻保険会社の保険契約は、「救済保険会社」による保険契約の全部または
一部の移転、合併、株式取得により破綻後も継続する事ができます。
2.救済保険会社が現れなかった場合
破綻保険会社の保険契約は、「承継保険会社(保護機構が設立する子会社)」
に承継されるか、もしくは「保護機構」自らが引き受ける事により破綻後も
継続する事ができます。
※保護機構では、「救済保険会社」あるいは「承継保険会社」に対して、必要に
応じ資金援助を行います。
破綻処理の方法 |
破綻処理には、「会社更正手続き」と「行政手続き」があり、いずれかの方法で
処理される事となります。日産生命、東邦生命、第百生命、大正生命は、金融庁等
からの業務の一部停止命令(行政手続き)を受けての破綻、千代田生命、協栄生命、
東京生命の3社が更正特例法の適用申請による破綻でした。
1.会社更正手続き
破綻保険会社が金融庁に事業の継続が困難である旨の申し出を行い、裁判所
に対して更正特例法適用を申し立て、処理を進める方法です。会社更正法
の金融機関版として2000年6月より施行されました。まず裁判所は新規
契約や解約などの業務停止を含む資産の保全処分を行います。手続き開始決
定後は、更正管財人を中心に更正計画が作られ、裁判所の許可後、保険契約
の移転先探しや予定利率の引下げなどの具体的な再建作業を開始します。
手続きを簡素化し資産劣化を最小限に食い止める狙いがあります。
2.行政手続き
金融庁長官の命令により進められる破綻処理です。ソルベンシーマージン比
率(注)が200%を下回った場合には、生命保険を監督する金融庁から経営
改善計画の提出等を命ずる早期是正措置がとられます。
※ソルベンシーマージン比率とは?
「支払余力」の意味。将来の保険金などの支払に充てる準備金などの合計額
を、保険金が増大するリスクなどを数値化したもので割り、パーセントで表
します。生命保険会社を比較する際、もっとも広く使われている指標のひと
つで、数字が大きいほど健全性が高く支払余力があると判断します。199
8年3月期決算より公表が義務付けられました。
破綻後の保険契約 |
@破綻処理が決まるまでの数ヶ月間は業務が停止される為、解約、減額、契約者
貸付、年金の一括受取、契約内容の変更などの手続きができなくなります。破
綻後も保険契約を継続することを希望する場合は、保険料を継続して払い込む
必要があります。
A破綻処理の内容が決まり保険契約の引受会社への移転の後は、解約が可能とな
りますが、数年間は早期解約控除が適用され、早期に保険を解約すると解約返
戻金が最大で15%〜20%減額されます。
B保険会社が将来の保険金支払のために積みたてる責任準備金の削減が行われる
事があります。保険業法等により責任準備金の90%までは保護機構により補
償されます。また積立金の運用利率である予定利率が引き下げられることがあ
ります。上記の影響として、受け取り保険金の減額がなされます。定期保険な
どの保障型保険では影響はほとんどありませんが、養老保険や個人年金などの
貯蓄性の高い保険ほど、受け取り保険金額が大幅に減額されます。(減額割合な
どの実際の数値は、破綻保険会社の発表や関連ホームページに詳しく掲載され
ています。)
生命保険の世帯加入率が9割を超える日本。世界人口2%強の日本人が払う保険
料は全世界の約26%とも言われています。安全性の高い生命保険会社の選定にお
いて、自己責任による判断が益々重要になってきています。
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