3 年以内贈与での相続税額を超える贈与税の金額は、切り捨てられ取 り戻せません。相続時精算課税制度を選択した時は、贈与税合計額の 相続税を超える金額も全額還付されます。 相続税が課せられるほどの資産ではないと見込める場合、または贈 与税を下回ると予想される時は、暦年贈与ではなく相続時精算課税( 5 章ワイド版「知っ得話」 参照)を選択しましょう。 亡くなった人から生前に贈与された財産であっても、以下の財産に ついては相続財産に加算する必要はありません。 子育てや新居支援での贈与はセーフ Bさんは、結婚して孫が生まれた娘のマイホーム取得の支援で 1200万円を贈与しました。 子の住宅取得資金に対する親からの贈与 の非課税枠(2016年1月から省エネ住宅等で1200万円まで)に収ま る額でした。 残念なことにBさんは、そのわずか 2 カ月後に事故死しました。 さんは「贈与の非課税の分が反故にされるのではないか」と気懸りで した。 結局、この場合の非課税分は相続財産に加算されない特例に あたっていました。 Bさんの娘思いの気持ちがフルに実った不幸中 の幸いといえるかもしれません。 税務のプロが語る 「知っ得話」 〈 3 年以内贈与での相続税の扱い 2〉贈与税が戻らない場合 〈相続財産に加わらない特別な例〉 1.贈与税の配偶者控除の特例( 第5章ー1 参照)を受けている財 産で、配偶者控除額に相当する金額 2.実父母や祖父母から贈与を受けた住宅取得等資金のうち、非 課税の適用( 第1章 ー 4 参照)を受けた金額 3.実父母や祖父母から一括贈与を受けた教育資金のうち、非課 税の適用( 第5章ー3 参照)を受けた金額 4.実父母や祖父母から一括贈与を受けた結婚・子育て資金のう ち、非課税の適用( 第5章ー6 参照)を受けた金額 〈相続開始の前3年以内の贈与〉相続税がかかる 〈 3年以内贈与での相続税の扱い 1〉贈与税は相続税から差し引ける 毎年、子にお金を渡す暦年贈与に対する110万円までの非課税枠の 利用など、相続人へ上手に生前贈与していく手法で結果的に相続にか かる税額を減らせます。 しかし、相続が発生すると、相続などにより財産を得た人に対する 亡くなる前3年以内の贈与は相続税の対象になります。言い換えれ ば、余命幾ばくもない時点での駆け込み的な子への贈与は、節税効果 が見込めないわけです。上記のケースでは、万が一、本人が亡くなっ た際は、せっかくの生前贈与も3年以内の分は贈与税がかかっていた かどうかに関係なく相続財産に戻されます。贈与をもらった側の子ら はその分、相続税を課せられます。贈る側の人は体を大事にして長生 きしましょう。 たとえば過去5年間、毎年100万円ずつ子計3人に贈与(暦年贈与の 非課税範囲内)をし、残念ながらそこで亡くなったとします。その際 は、100万円×3年分×3人=900万円が贈与から相続へと持ち戻され ます。子らがすでに使い切っていても、相続財産に加算されて課税対 象になります。 一方、たとえば亡くなる2年前にゴルフをやめ、所有していたコー スの会員権を子に贈与していたとします。名義書換料や取得費用など を差し引いて1400万円分の贈与となり、贈与税を326万円納税してい たと仮定します。この場合は、1400万円が相続財産に加算されます。 すでに納税した贈与税326万円は、相続税が326万円以上でしたら全額 相続税から差し引かれます。二重課税を防ぐ「贈与税控除」を適用でき るからです。 第6章 〈ケース〉 胃がんを手術で切除したAさんは健康を取り戻し、最近 ゴルフも再開しました。しかし、再発や転移の不安もあるので、相 続対策を検討しています。そこでAさんは、税務のプロに「元気な今 のうちに子に贈与しておくのはどうだろうか」と相談しました。 亡くなる前3年以内の贈与への課税 相続開始前3年以内の贈与 9 6