法人への遺贈は節税効果が期待できる半面、取得する側の法人に欠 損金がない場合などは注意が必要です。以下に主な注意点を挙げます。 1. 欠損金のない法人に財産を遺贈した場合には、法人に対して法人 税が課税されてしまいます。遺産が巨額になる場合を除くと、相 続税率よりも法人税率の方が高くなりがちです。 2. 法人への遺贈は財産の譲渡とみなされるため、財産に含み益があ る場合には遺贈した方に譲渡所得税が課税されます(実際には相 続人が納めることとなります。住民税は課税されません)。 3. 遺贈により同族会社の株価が上がった際には、遺贈した側の人か ら株主(主に一族)への遺贈があったとされ、相続税が課税されます。 4.法定相続人(兄弟姉妹を除く)から遺留分請求のリスクがあります。 相続した後では「遺贈」は使えない 左ページに挙げたのと同様なケースでも、もし相続人が一度1億円を相続 した上で、相続後に法人へ贈与する形をとると、相続時に相続税が課税され てしまいます。 また、法人の持っている欠損金以上の額の財産を遺贈すると、 はみ出た遺贈分には法人税が課税されますので注意が必要です。 法人を使った相続対策は複雑になりがちで、その分リスクも高くなります。 専門家に相談するなど慎重な対応が肝要です。 税務のプロが語る 「知っ得話」 〈法人への遺贈での注意点〉儲かっている会社は課税されることも 3. この対策の結果 1. このケースの相続税上のメリット ー 相続税がかからない 2. このケースでの法人税上のメリット ー 欠損金との「相殺」ができる 遺産 - 法人への遺贈分 = 相続税の課税対象 益金(受贈による益)- 欠損金との相殺 = 遺贈における法人税の課税対象 上記のように、遺産1億円の移転に関して相続税、法人税ともに課税 されません。また遺産の全額が一族の経営する法人に遺贈されている ので、財産の外部への流出もありません。事業承継の対策の一つとい えます。 遺産の全額を法人へ遺贈するため、相続税の課税対象となる人はな く、相続税が課税されません。 法人が遺贈で取得した財産1億円と、それを上回る欠損金のうち1億 円分が相殺され、遺贈分に対しては法人税が課税されません。 〈ケース〉 一族で経営する会社に累積赤字(欠損金)が 1 億 5000 万円 あるとします。このため株式の純資産評価額もゼロとの設定です。 そこでオーナー社長のAさんは「自分の貯めた全財産 1 億円の現預金 をすべて自分の会社に遺贈する」と遺言に書き残しました。 第4章 相続税は個人に課せられるため、遺言により会社(法人)へ贈与し た場合には相続税は課税されません。その際、遺贈により財産を取 得した法人は、取得した財産の時価に相当する金額を益金として計 上する義務があります。個人資産は十分あるものの、自社の赤字累 積に悩むオーナー社長にとって、再建を託す後継者への助けになる と期待できます。 16 赤字会社への遺贈は無税で可能 法人への遺贈による事業承継 4