役員の会社への貸付金を相続財産から回避する方法はほかにもあります。 後日決算報告会にて提言すると、会長は「累積赤字は私の責任だったし、 貸付金を返してもらおうとの甘い考えはないよ。これからも会社を頼む ぞ」と息子の社長に語り、債権放棄通知書へ直筆でサインをしました。 この結果、会社の法人税課税もなく、5000 万円の貸付金の相続税課税 も避けられました(数ヵ月後会長のBさんは亡くなりました)。 休業会社への貸付金の相続の扱い 役員借入金については、借りた側の会社から「その回収が不可能、ま たは著しく困難と見込まれるとき」は、相続財産に算入しないでよいとの 規定があります。 ただし、会社の経営状況が、破産宣告があった場合な どの形式的な倒産状態であるとの条件が付いています。 その他に、「業績不振のため又はその営む営業について重大な損失 を受けたため、その事業を廃止または6カ月以上休業しているとき」とあ ります。 一見すると、会社を休業状態にすれば、貸付金に対する相続税 を回避できると誤解するかもしれません。 しかし、回収不能の判断は、営 業状況、資産状況が破綻していることが明白であって、債権の回収見込 みのないことが客観的に確実な状況でなければならないとされていま す。 単なる休業だけで、これらの条件を満たすのは難しいといえます。 税務のプロが語る 「知っ得話」 〈役員報酬を減額し、差額を借入金返済とする〉左頁とは別の対策 役員報酬の減額分を原資に借入金を返済すれば、会社の資金繰 りには影響なく返済が可能です。ただし、役員報酬は会社の損金 ですので、その減少により法人税等が増加する場合があります。 〈このケースの対応策〉 借入金債務を免除してもらう → 本人に会社に貸したお金の放棄 を求める 社長Aさんから相談を受けた税務のプロは「この役員借入金は、そ のままでは課税される」ことを指摘しました。 え?5000万円の返済なんて、会社にはできないよ。 まず戻らない貸付金なのに、相続では課税されてし まうのか。どうしたらいいのかな? 会社側からみての「借入金債務の免除」という方法が あります。 どうすればいいのかね。 父の会長様に貸付金の返済を免除してもらうのです。 相続税を軽減するという理由で話すのか。でも、余 命半年のことを本人は知らないし、私からはとても 言い出せないよ…。 そうですよね。ならば、私から会長様に銀行対策との 理屈で会社への貸付金を免除してもらえるよう提言し てみましょう。税務上の欠損金が8000万円あるし、 会社の法人税課税も避けられます。 よろしく頼むよ! 社長A 税務のプロ 社長A 税務のプロ 社長A 税務のプロ 社長A 第4章 〈ケース〉 社長のAさんは、創業者である父の会長Bさんについて 医者から「余命半年」との診察結果を、父には内緒で宣告されました。 実は会社は運転資金に追われて父から 5000万円を融通してもらい、 役員借入金(父から見ると貸付金)に計上しています。今すぐには返 済できません。この借入金は先行き相続財産となって課税されます。 しかし、有効な対策があります。 15 父が貸し付けた会社運転資金の相続 役員からの借入金の事業承継での扱い 4